ゴーシィ、エルフと仲良くなる〜異世界生活八十三日目〜
今月から
【超エリート貴族の長男は苦悩する〜転生したら主人公では無く、貴族の息子でした〜】
の投稿を再開しました。
もしよろしければそちらもよろしくお願いします。
ふと目を覚ますと、覚えの無い場所で寝ていました。
これはあの名台詞を言うチャンスではありませんか。
「知らない天―――」
「ゴーシィ様、起きられたんですね!」
隣にいたフィズさんに声を掛けられた事で人知れず挑戦していた僕の知らない天井チャレンジは見事に失敗しました。
いや、自分で言っておきながら知らない天井チャレンジってなんだよ。
「え?何で恨めしい目で私を見るんですか?もしかしてまだ眠かったですか?」
あれ?自分で思ってるより悔しかったんでしょうか?
表情に出ていたみたいですね。
「いえ、丁度良かったですよ。それよりもここは……?」
そう、馬鹿な事をやってる場合ではありませんでした。
昨日、村についてあのエルフから話しを聞きながらお茶を飲んでいた際、睡眠薬か何かを盛られたのでしょう。
突然の眠気に襲われ、そのまま気を失う様に眠ってしまいました。
朝日が差している事から一晩ぐっすりだったみたいです。
「あの方の家の隣の空き家ですよ。ゴーシィ様と私が寝ちゃったみたいで運んでくださった様です」
「何もされませんでしたか?」
フィズさんを見る限り大丈夫みたいですが、念の為確認を取ります。
「はい。丁度起きた頃に水を持ってきていただいたのでそれを飲もうとしたらゴーシィ様が起きられました。飲まれます?」
「…………一杯いただきます」
また何か入っているかもしれないと警戒しましたが、匂いも味も違和感は無く何の変哲も無い水でした。
僕が飲んだ後に飲んだフィズさんにも異常は無さそうです。
とりあえず一安心した僕はフィズさんを促す形であのエルフの家を訪ねる事にしました。
寝ていたベッドの隣に立て掛けてあった剣をいつでも抜ける様にしつつ、ドアをノックすると中から声が聞こえました。
「入って良いわよ」
何の悪意も感じない声が聞こえてきました。
「失礼します」
「えぇ、どうぞ」
ドアを開けると昨日と同じ席で優雅にハーブティーを飲むエルフの姿。
やっぱりエルフっているだけ絵になるなぁ。
……って違いますって。
警戒もせずこちらを見て微笑みながら着席を促し、手際良く……と言うよりは端から来る事を見越して用意されていたハーブティーを勧めてくる彼女からは、やはり何の悪意も感じません。
「そう警戒しなくて良いわよ。今日は何も入って無いわ」
「今日は。って事ならやはり昨日のには……」
「えぇ。よく眠れる様にハーブを調合して入れておいたわ」
「…………何の為に?」
警戒を強めながら威圧しつつそう訪ねた僕に対して、彼女は小首を傾げて不思議そうにこう言いました。
「だって疲れてそうだったもの。右も左も分からない場所ではゆっくり眠れないかと思って入れたのだけど…………駄目だった?」
…………ん?
睡眠薬代わりのハーブを入れた事、これは彼女自身が認めています。
けど、ゆっくり寝る為?
つまり、僕達を気遣ってって事?
何か裏がある訳じゃなくて?
「えっと……僕達を眠らせて何かするつもりじゃ…………」
「そんな訳無いじゃない!失礼ね!手を出す時は起きてる時に同意の上でだけよ!」
違う、そうじゃない。
そうなんだけど、そういう意味じゃない。
だが、少なくともこちらに対して害意がある訳じゃ無さそうです。
ヒト族嫌いが多いこの村にいるのにフィズさんに害が無い時点である程度信用は置けるのは間違い無いんですが。
「お気遣いしていただいたのに、勘違いして申し訳ありません」
ここは素直に謝る事にしました。
頭を下げているので表情は分かりませんが、彼女はまた不思議そうにしているのが伝わってきます。
「何で謝るの?さっきも言ったけど右も左も分からない村……貴方にとってはこの世界自体がそうでしょう?そんな中で警戒するなって方が無理よ。寧ろそれが正しいわ」
「そう言って頂けると有り難いです」
「あと出来ればその固い口調何とかならない?異世界人の貴方にそんな言葉遣いされると何と言うか、こそばゆいのよね」
「ある程度崩しますが、元々がこの口調なので慣れて下さい」
「…………しょうがないわね。いつか絶対気軽に話させてみせるわ」
胸の前で拳を握っているエルフ。
いや、一体何の決意ですか。
「そう言えば名乗って無かったわね。私はエルクリア。気軽にエルって呼んでくれて構わないわ。見ての通りエルフ…………と言うと少し違うのだけど、概ねその認識で間違い無いわよ」
「ん?エルフじゃないんですか?」
「それはもっと砕けて話してくれるなら教えてあげる」
「別に大丈夫です」
「連れないわねぇ……」
最終的には仲良くなりたいとは思いますが、今はまだ時期尚早。
少なくとも敵……では無いと思いたいですが、味方とは断定出来ない現状では完全心許す訳にはいきません。
「まぁ、時間はたっぷりあるし良いわ。百年か二百年一緒にいればいずれは仲良くなれるでしょ」
「僕ヒト族なんでその頃には死んでますよ…………」
「あら?そうだったわね。うっかりしてたわ」
流石長命種として名高いエルフ。
かなりの年齢なのにも関わらず、テヘペロが似合うのは何か腑に落ちないですが。
「兎も角、村を案内するわね。どれくらいかの期間か分からないけど、少しの間はこの村にいるんでしょう?」
「この村の方々に受け入れてもらえれば。ですけどね」
「問題無いと思うけどね。さぁ、行きましょう」
そうして、エルクリアさんの案内で僕とフィズさんは村を見て回る事になりました。
久々にお願いでも記載しようかなと思います。
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今後とも作者共々お付き合いよろしくお願いいたします。




