ゴーシィ、空に一人?呟く〜異世界生活八十一日目③〜
一人と一匹?に冷めた視線を向けられている事に気が付いた僕達は、慌てて離れて起き上がりました。
「ゴルゾフさん、ご心配をお掛けしました」
「あぁ゙!?直ぐに嬢ちゃんとイチャつく位には元気だったんだろ?だったら何も問題無ぇよ」
「ははは……。そうですね」
ぶっきらぼうにそう言い放つゴルゾフさん。
相変わらずの物言いに苦笑いが溢れてしまいます。
「ゴーシィ様。ゴルゾフ様はあんな事言いながら、ずっと心配されていたんですよ?それこそ私に負けず劣らずには」
「え?そうなんですか?」
「はい、そうなんです」
彼に聞こえない様にそっと耳打ちをしてくるれるフィズさん。
やっぱりゴルゾフさんは優しい人なんですね。
「再会出来て早々ですが、二人共怪我はありませんか?」
「あぁ゙!?見ての通りだ。儂も嬢ちゃんも怪我一つしてねぇよ」
「あれ?でもゴルゾフさんは荷車が脱輪した時に…………」
「あれか?あれならもう治っちまったよ」
「治っ……え?」
何か今日、目を覚ましてから驚いてばかりな気がします。
それよりもゴルゾフさんの怪我、良くて捻挫で最悪骨折してると思っていましたが、思ったより軽症だったんでしょうか?
「おめぇの横にいるだろ?その御方のお陰だ」
「フィズさん?何かしたんですか?」
「私じゃないですよ」
「え?」
「逆だ、逆」
「逆って…………」
スライムがプルプルしているだけですよ?
「…………もしかしてスライムさんが?」
[肯定]
「マジか…………」
驚き過ぎてもう反応が薄くなってしまいます。
何か何でも有りですね。
「ってかゴルゾフさん。スライムさんの事知っているんですか?しかもその御方って…………」
「あぁ゙!?知っているも何も…………ってそんな話は今する事じゃねぇ」
いや、めっちゃ気になるんですけど!?
とは言え、話が進みそうに無いので気持ちを切り替えていきましょう。
「とりあえず今日はここで野営だ。もうすぐ日も暮れちまうしな。食料は荷車が戻ってきたから問題無ぇ、後は水を汲むだけだ。寝る場所はそこの掘っ立て小屋を使え」
「たった二日で何故小屋があるんでしょう……?」
「だってゴルゾフ様ですから」
「そうですよね。ゴルゾフさんですもんね」
「何か納得いかねぇがブツブツ言わずさっさと汲みに行け」
そんな訳でせっせと水汲みに向かいました。
直ぐ近くに小川があり、そこで桶に水を入れて小屋の近くに。
それにしてもここに来る迄も来てからも一切危険な生物の気配が無いですね。
「寝る時の見張りはどうします?僕が見張っときましょうか?」
「あぁ゙!?そんなもん要らねぇよ」
「要らないって……。流石にそれは不用心なのでは……?」
ゴルゾフさん的には慣れてるとは言え、ここは未開の森。
しかもローゼンでは死の森とか魔の森って呼ばれる程危険な場所な筈です。
それなのにも関わらず見張りが要らないって…………。
「大丈夫ですよ、ゴーシィ様。そのスライム様の片割れが周りを常に警戒して、必要に応じて駆除してくれていますから」
「あぁ、成る程……」
だから二人の他にもう一つ気配があったんですね。
誰かゴルゾフさんの知り合いかと思っていましたが、正体はスライムでしたか。
横を見ると何となく胸を張ってドヤってる感じが―――
「いや、実際触手を腰?に当ててドヤってますね、これ」
何とまぁ器用なスライム。
実は超生物とか?
そんな訳無いですね。
無いですよね…………?
完全に太陽が沈む前に食事を取り、体を拭いて後は寝るだけの状態に。
陽の光が無い地上は洞窟よりもずっと暗いのは何か不思議な感じがします。
ただ、地上の光が無いせいか星が凄い。
まるでプラネタリウムみたいです。
「そう言えば、こっちに来てから夜にゆっくり空を見上げる事も無かったですね…………」
ローゼンの屋敷にいた時よりこんな危険な森の中の方が落ち着くし安全なのは何とも皮肉な事でしょう。
それもこれも全部スライムのお陰なのは不思議ですが。
一人夜空を眺めていると誰かが近付いて来る気配。
振り向くとそこにはフィズさん…………では無くスライム。
「貴方は……何者なんですか?」
そう訪ねてもプルプルと震えているだけでした。
「ヒト……いえ人間の言葉を理解していますよね?それに、僕の事を……あっちの世界の……地球人を知っているんですか?」
イエス・ノーで答えられる質問なのにそれでも反応は変わりません。
この場では答えられないのか、答えるつもりが無いのかは分かりませんが少なくとも望んだ回答は得られそうにありません。
「この世界に突然来てしまった事に文句がある訳ではありません。まぁ、観たいアニメの続きとか一応仲の良い職場の同僚がいたので心残りは無くも無いですが……。両親は…………特に母の方は多分任務の失敗で行方不明の後に死亡……とでも思われているでしょうし。最近は連絡も取っていませんでしたからね、大丈夫でしょう」
聞かれた訳でも無いのに口から溢れてしまいます。
「せめて……せめて、僕がこの世界に来た意味を…………知りたいんですけどねぇ…………」
そんな僕の呟きは返事を返される事がある訳も無く、満点の星空に吸い込まれていったのでした…………。
相談……って程の事では無いのですが、タイトルが長いので何かもっとスッキリさせたい今日この頃。
と、言っても中々良い感じのタイトルが思い付かないので、思い付いたら何処かの章の区切りにでも変えたいと考えております。
まだ未定ですが、その場合は後書きにて告知いたします。




