ゴーシィ、まさかの再会を果たす〜異世界生活八十一日目〜
これから新章開幕!
登場人物が増えて、色々設定が増えるので、設定説明が増えたり物語が進みます。
つまり、それを上手く説明する為に作者が苦しみます。
日付が飛んでいますが、ミスでは有りません。
理由は本編にて。
「うっ…………ん?えっ〜と…………どういう状況ですか、これは?」
状況を整理しましょう。
足止めの為にブラッドスライムと交戦中、力尽きてしまい、敵に囲まれた状況てました。
そこに新たなスライムが迫ってきていたところで意識が途切れてしまい、死を覚悟して意識を手放しました。
…………が、結局なにこれ?
まだ地上に続く洞窟の中、これは見える範囲で判断するに間違いありません。
まだ身体を動かす事は……出来なくもありませんが、軋む様に痛いです。
天井を見上げて仰向けに寝転んでいる状態、うつ伏せに倒れた覚えがありましたが、記憶違いの可能性もあります。
ただ……それ以上に―――
「何か仰向けのまま水の中に入ってる様な視界で高速移動してるんですけどぉぉぉぉぉぉ!?…………ってえ?声……出せますね?」
水の中と思っていましたが、声が普通に出せるし聞こえました。
そもそも息苦しいとかそんな事もありませんし…………。
益々混乱していると流れていた周りの景色が段々ゆっくりになり始めました。
「あれ?止まったんですかね?…………おぉう!?」
壁際で完全に停止したと思ったらゆっくりと上体が起こされ、そのまま優しく水の外へ押し出されました。
「一体…………っ!?」
痛む身体に鞭打って、剣を杖代わりに立ち上がると目の前にいたのはスライムでした。
即座に警戒態勢に入りましたが、満足に動けない体では何処まで抗えるか分かりません。
しかし、スライムの行動は僕の予想に反するものでした。
「離れて……いく?」
僕から少し距離を取って洞窟の奥、下り坂の下へと向かっていきました。
ある地点でピタリと止まると触手の様なものを伸ばして左右に振り始めます。
「攻撃では……ありませんね。わざわざ離れる必要はありませんし。下から見上げられて手?触手?を振られるなんてまるで―――」
そこ迄言ってふと思い出しました。
スライム・高低差・触手を振る―――
「も、もしかして!あの時の……ダンジョンで助けてくれたスライムですか!?」
思い出して思わず叫んだ僕の声に反応したのか、体をプルプルと震わせ、凄まじい勢いでこちらに突っ込んで来るスライム。
思わず「しまった、やらかしたか?」と身構えましたが、あんなに勢いがあったにも関わらず、僕の体は再び優しく包みこまれてしまいました。
「とりあえず……正解みたいですね。再会のハグですかね?何か柔らかいしひんやりしているし、気持ち良いですね…………じゃない!一体どういう状況ですか、これは?」
と、スライムに語りかけてみても言葉を話せる筈も無く、どうしようかと思いましたがよくよく考えてみると僕の言葉を理解している節があります。
そこである実験をしてみました。
「えっと、スライム……さん。もし僕の言葉が分かるなら触手……で合ってます?それでこうやってマルを作って下さい」
もし言葉が通じるならイエス・ノーで答えられる質問をして、それをジェスチャーで返してもらえるかもしれません。
そして僕の想像通り、スライムは大きくマルを作りました。
「やっぱり分かるんですね。では、ここから僕が質問をするので肯定・はいの場合はマルを、否定・いいえの場合はこうやってバツを、どちらでも無い場合はこう地面を軽く叩いて下さい」
マル、つまり肯定をしてくれました。
「では……。貴方は僕を助けてくれたのですか?」
[肯定(マルを作ったを作った)]
「ブラッドスライム達は逃げたんですか?」
[否定(バツを作っ(以下省略))]
「え?じゃあブラッドスライムを倒したんですか?」
[どちらとも言えないの後に肯定(地面を叩いてマルを(以下省略))]
「どういう事……?もしかして……食べました?」
[肯定]
「マジですか……。とりあえず助けてくれてありがとうございます」
[肯定]
「次ですが、僕の所に到着する迄に他のヒト……じゃ無くて人間とすれ違いました?」
[肯定]
「それは二人ですか?」
[肯定]
「……因みにその二人に攻撃したり、されたりとかは…………?」
[否定]
「はぁ……良かった……。あと、現状の確認をしたいんですがよろしいですか?」
[肯定]
とりあえず、フィズさんとゴルゾフさんに危害を加えておらず、ブラッドスライムの脅威を排除してくれた上に安全な場所迄運んでくれたみたいですね。
そこからは今の状況を確認していきましょう。
「スライムさんと再会した僕が倒れて場所とこの洞窟の出入り口はここからだとどちらが近いですか?」
あ、イエス・ノーの質問じゃ無かったですね…………って上り坂の方を触手で指してくれましたから出入り口ですかね?
てか、頭良過ぎじゃありません?このスライム。
いや、頭あるんですかね?
群体だから数億個あるのかな?
兎も角、ここからだと地上が近いのが判明しました。
「地上迄はここから歩いて一日で着きますか?」
[否定]
「二日ですか?」
[否定]
「あれ?そんなに掛かります?」
[否定]
「ん?どういう事ですか?」
歩いて一日掛からない距離なんでしょうか?
体がまだ上手く動かせないので、長めに見積もったつもりですが、思ったより近い?
そう考えていると触手が数本伸びてきて僕のに纏わり付き、そのまま持ち上げられてスライムの上に乗せられました。
あ、もしかして―――
「スライムさんが僕を運んでくれたら一日掛からないって事ですか?」
[肯定]
「良いんですか?そんな事迄してもらって……」
[肯定]
「ありがとうございます。じゃあ直ぐに出発しましょう」
[否定]
「え?駄目なんですか?」
今直ぐ地上には向かってくれないみたいです。
僕はまた持ち上げられ、一部分裂したスライムの上に…………え?自分で分裂出来るんですか?
その上に寝かされました。
「寝ていろって事ですか?」
[肯定]
「……何だが母親みたいですね。じゃあ一眠りしたら出発って事ですか?」
[肯定]
「分かりました。正直まだ体がかなり辛いので助かります。では、お言葉に甘えてもう一眠りさせていただきます」
[肯定]
そんな母親?みたいなスライムの優しさに甘え、辺りの警戒を一切する事無く、僕は眠りに落ちたのでした。
寝ぼけながら先程より更に分裂したりする姿が見えた気がしましたが、多分気の所為でしょう…………。
久し振りの登場、スライムさんでした。
ダンジョン以来だからそこそこな話数振りですね。
振りですねしたら行動出来ないと言うスライムの前提を色々ぶっ壊してくれるスライムさんですが、その謎はこの章でちゃんと判明します。




