ゴーシィ、嵐の前の静けさを痛感する〜異世界生活七十七・七十八日目〜
この話の中盤以降に、女性特有のアレの話があります。
不快に思われる方もいらっしゃるかもしれませんので、読み飛ばして下さい。
少しでネタバレになりますが状況を簡潔に説明すると、「結局寝る間も無く、全力ダッシュで地上へ!」です。
これも少しネタバレですが、脱出が完了したらこの章が終わりになります。
僕が採掘を頑張り過ぎた日から三日経ち、全ての準備が整ったところで僕達はいよいよ地上に向けて拠点を立つ事になりました。
拠点に関しては、崩したりはせず、最低限の物を残したままに。
今後も定期的に採掘に来る予定があるらしく、その時に使用するみたいです。
「よし、じゃあ出発するぞ」
「「はい」」
五台の荷車を三人で……正確には二人で引いて地上を目指します。
全く持って数が合いませんが、荷車をゴルゾフさんは二台、僕は三台連結させて引いていく予定です。
僕が三台なのは…………自業自得ですね。
先日言われた通り、荷車丁度のサイズで製錬されたミスリルの塊は隙間無く乗せられているにも関わらず見た目よりも遥かに軽いものでした。
勿論、それ相応の重さは感じますが、鉄の塊だと1tはありそうな体積なのに質量はそれ以下、ファンタジーを感じますね。
…………まぁ、食料と水が入った荷車もあるので普通に重いですが。
拠点の洞穴を出て、最初に僕とフィズさんが落ちてきた方向へと川沿いを進んでいきます。
「今更ですが、ゴルゾフ様と出会えて幸運でしたね」
「確かにそうですね。僕達出口とは真逆に向かって歩いてた事になりますから。そのままだと地下渓谷内で遭難していたでしょう」
「遭難以前に数日で死んでいたかもしれません」
「それは間違い無い」
「おいこら、おめぇら!無駄話してないでさっさと歩け!道程は長ぇんだからな!」
先頭を進むゴルゾフさんに小言を大声で言われるなんて矛盾した事をされながら、進んでいきます。
進んでいる道は舗装されている訳ではありませんが、ゴルゾフさんが何度も通っているお陰か、はたまたこの荷車の性能なのか、思いの外スムーズでした。
今のところは魔物や魔獣は見当たりませんが、油断は禁物。
話をしながらも周囲の警戒を怠ったりはしません。
さぁ、油断せずにいこう。ってやつです。
伝わりますかね?
ちょくちょく休憩を挟んで、本当に何事も無く今日予定していた分を進み、今晩過ごす地点に到着しました。
ここで天幕を張り一番過ごして、夜が明ければまたひたすらに歩き続ける。
それを地上に出る迄繰り返す簡単……うん、簡単なお仕事です。
「それにしても道中、怖いくらい静かでしたね」
「こないだおめぇらが蜘蛛の大群を殲滅したお陰だろうな。いつもならあいつ等が寄ってきやがる」
「ひぃっ!?何処!?何処にいるんですか!?」
「いや、嬢ちゃん。今の話じゃねぇよ、落ち着け」
「…………取り乱してしまい、申し訳ございません」
「フィズさん、取り繕っても遅いですよ?」
焚き火を囲みつつ、談笑しながら夕食を取る。
とても穏やかな時間です。
「でも、案外このまま地上に出る迄何も無い可能性もありますよね?」
「そうだな。嬢ちゃんの言う通り、ゴーシィが魔物達を間引いてるからな、無事に地上に出られるかもしれねぇ」
「この調子で夜もぐっすり眠れますね」
そんな話を聞きながら緑茶もどきを啜っていますが、どうにも二人の会話がフラグにしか聞こえません。
これは…………多分今夜は駄目でしょうね。
今夜だけなら良いですが…………。
ん?僕も今、フラグ立てた気がする……。
僕の勘って悪い事はほぼ的中するんですよね…………。
その夜、それはやはり当たりました。
「タケシ様、申し訳ありません…………」
夜中、フィズさんがゴソゴソと動いていたのは気付いていましたが、謝られる理由がありません。
「どうしたんですか?」
「あの…………月のものが…………その、予定ではもう少し先立ったんですが…………」
「あぁ、成る程…………」
恐れていた事態が発生しました。
急いでゴルゾフさんを叩き起こして事情を説明、彼の指示でとりあえず処置をした後、急いで荷物を片付けて強行軍を開始する事になりました。
「どうせこの中は昼も夜も関係ねぇ!こうなったら体力が持つ限り進むぞ!」
「すみません……。私のせいでご迷惑を…………」
「あぁ゙!?嬢ちゃんのせいじゃねぇだろ?自分でどうしようもねぇことだ、気にするな!」
「そうですよ。それよりも大丈夫ですか?」
「はい、痛みには強い方なんで」
ゴルゾフさんは嫌な顔一つせず、先頭を歩いてくれています。
僕はまたも殿です。
「嬢ちゃん、言い難いかもしれねぇが事が事だ、遠慮せず言うぞ。もし、巻いて布に染みてきたら直ぐに言え。その場で捨てて新しい布を巻いてもらう」
「分かりました」
出発前にゴルゾフさんが少しでも距離を稼ぐ為にフィズさんに指示したのは、清潔な布を中に入れ、その上で下腹部〜太腿にかけてに布を巻き、出血を抑える事でした。
それでも完全には難しいですが少しでもブラッドスライムから発見されるのを遅らせ、滲んできてしまったら即座にそれを破棄し、囮代わりにするとの事。
女性にとっては不愉快極まり無いかもしれませんが、フィズさんは快く受け入れてくれました。
こんな時だけはあちらの世界の人権云々を言う方々がいなくて良かっ…………この話題は辞めておきましょう、刺されてしまうかもしれません。
さて、無風から少しずつ風が強くなってきています。
この風は更に強くなる様な気がして、僕はそれを考えない様に走り続けました。
まず謝罪を。
生々しい話をして申し訳ございません。
ただ、サバイバル状態において血は中々に厄介なもので、現代でも切り傷擦り傷による出血で動物が寄ってくる事もあります。
それが異世界ではどうなるか。を書きたくて書きました。
それが女性の……ってのはどうかと思われるかもしれませんが、数話前にゴルゾフが言っていた事が起こった。という展開に繋げたかったんです。
後、力仕事になる関係上一部を除いて筋力は「男性>女性」の事が殆どなので、男性メインの職場になります。
特に発掘等の長期間、娯楽の無い閉鎖空間で作業する男性の中に女性がいると、色々な問題が起こりやすいので女性を雇用しない事がある。と、色々調べている時に記載してあるものもありました。
だから、職業女性の方々を近くの拠点等に招き、そちらで解消するとも。
何が言いたいか分からなくなってしまいましたが、結論的には最初の二文が全てです。
改めて、今話をお読みになって不快に思った方々へ。
誠に申し訳ございませんでした。




