ゴーシィ、採掘を頑張り過ぎる〜異世界生活七十四日目②〜
今回は作業パートになるので、若干ダイジェスト気味になります。
ゴルゾフさんの魔法を目の当たりにして、フィズさんから脇腹への肘鉄プレゼントをいただいたところで僕達は一度解散し、それぞれのしごとに移りました。
僕は採掘担当。
ゴルゾフさんから借りたツルハシでミスリル鉱石をひたすらに掘っています。
彼曰く、「ミスリルのツルハシを使う時は基本的に力は要らねぇ。振り上げて重さに任せて振り下ろす。これを繰り返せ」と聞かされていたので半信半疑でやってみると、まぁ掘れる掘れる。
よくよく考えれば当たり前でした。
彼に貰った剣は、力も入れずとも一切の抵抗無く岩を一刀両断出来ていました。
それならば、ツルハシでも同じ事。
力を入れずに振り下ろせば周りの岩や鉄の鉱石は削られ、ミスリル同士がぶつかった時だけ反発が来る。
そうする事によって見落とし無くミスリルの採掘が出来るし、疲労が全く無い訳ではありませんが、普通に掘るより圧倒的に楽。
「何か人間重機になった気分ですね。いや、重機と言うよりししおどしかな?」
それよりも昔の見たあれですかね?
水をつつく……そうだ、水飲み鳥とかドリンキングバードとか呼ばれている玩具、あれですあれ。
…………自分がそうなったって何か虚しいですね。
あまり考えない様にして、昼食に呼ばれる迄の間、延々とツルハシを振るっていました。
昼食後、ゴルゾフさんに調子を聞かれ、途中経過を見せる事になりました。
それなのに何故か僕は今床に正座をさせられています。
「おめぇ、儂が言いたい事が分かるな?」
「えっと……あまりに作業が遅い…………とか?」
「馬っ鹿野郎!やり過ぎに決まってんだろぉがっ!!」
「ですよね〜」
はい、何となくそんな気がしていました。
あまりに気持ち良く掘れるので手当たり次第(洞窟が崩れたりはしないよう気を付けながら)掘っていた結果、ゴルゾフさんが掘っていた所から奥へ数十m幅が二倍に迄広がっていました、何故だろう、不思議ですよね?
「確かに儂はなるべく掘れと言った。ただ、採掘した事が無い、異世界人とは言えヒト族のおめぇの力と体力を考えた上でだ。何処にドワーフが数日掛けて掘る量を半日で掘る馬鹿がいるってんだ!」
「ここに―――」
「あ゛ぁ゙!!??」
「はい、すみません」
いつものでは無く、明らかに怒気の籠もった返しに素直に謝罪をしました。
「…………ったく。まぁやったもんはしょうがねぇ。置いていくのも勿体無ぇしな。採掘は終わりだ、残りの時間は儂を手伝え。先ずは今日掘ったミスリル鉱石を小屋の近くまで運んでもらう。キリが良いところまで済んだら持ってきた木材で荷車を組むぞ」
「はい」
「それと明日からはインゴットには形成しねぇ。その代わり荷車に丁度収まる大きさに形成して、上に戻ってから改めてインゴットにし直す」
「それ、二度手間になりませんか?」
「誰のせいだ、誰の!」
こうして、僕の初の採掘作業は半日で幕を閉じました。
結構楽しかったのになぁ…………。
ゴルゾフさんに言われた通り鉱石を運び入れ、荷車三台を組み垂れる作業に没頭して夕食を迎えました。
「お疲れ様でした、御二人共。ゆっくり召し上がって下さいね」
「全くだ。誰かさんのせいで無駄な作業が増えちまった」
「返す言葉もありません……」
「まぁ多い分には困る事は…………あるな。運ぶのがちと面倒くせぇ」
「まぁまぁ、ゴルゾフ様。ゴーシィ様も悪気があった訳ではありませんので」
「悪気があったら張っ倒すところだったな。ところで嬢ちゃん、食料と水はどうだ?」
「はい、とりあえず水は一日分ずつ小分けして先ずは三日分用意が出来ました。食料はまだ途中ですが順調です」
「そりゃあ何よりだ。持って帰る量が量だけに到底三日じゃ戻れね。倍の六日……いや、八日分は用意してくれ。荷車一台丸々使って良いからよ」
「畏まりました。明日も引き続き作っておきます」
「よろしくな。ゴーシィ、おめぇは残りの荷車を組み立てた後、食料と水・製錬済みインゴットを積み込んでくれ。何とか全部乗る筈だ」
「分かりました。でもそんな限界迄積んで重さは大丈夫なのでしょうか?途中荷車が壊れたりとか……」
「あぁ゙!?そん時はおめぇが責任持って上まで運べ」
「あぁ〜……頑張ります」
「ってのは冗談だ。重さは大丈夫だ。軽くなる様に製錬するからよ」
「軽くなる様に…………?」
同じ物を同じ量製錬して重いも軽いも無い筈ですが……。
もしかして精錬迄するんですかね?
「それでしたら問題ありませんね」
「え?フィズさんは意味が分かったんですか?」
「はい。ミスリルは特殊でして、製錬時に魔力を込めると軽くなるんですよ。だから私が魔力を込めながら製錬が出来る特殊な炉が無いかお聞きしたんです」
「正確に言やぁ少し違ぇぞ。ミスリルは魔力を一定量迄含ませて製錬すると軽くなる。だが、その量を超えた途端今度は溢れた魔力に応じて重さが増すんだ。それを見極められるかどうかが鍛冶師の腕の見せ所だ」
「ほぉ、流石は不思議金属ですねぇ」
「不思議金属?なんだ、そりゃ」
やっぱりただ頑丈なだけじゃ無くてそんな不思議な特徴もあるですね。
もしかしたら今後もオリハルコンとかヒヒイロカネとかアダマンタイトとかのファンタジー要素にも出会えるかもしれませんね。
そんな、昨日と違い純粋なドキドキに胸を躍らせながら、その日は眠りに就きました。
やっぱり、こんな時にはフィズさんは何も言わないので、やはり女性の勘は侮れませんね。
掘っていた時の主人公の感覚は某サンドボックスゲームでダイヤモンドツールを使った整地をしている時の気分と同じ感覚です。
女性の勘っえすげぇ。




