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剛士、飛び道具を造る〜異世界生活四日目〜

 もう少し代わり映えしないストーリが続きます。

 朝目覚めたらまず水を汲み、火を熾して飲水にしていく。

 それが終わるまでの間、昨日のオルトロスの素材の一部を使って一つ作ってみたい物があるので、そちらの準備を進めていく事にしました。


「まずはなるべく丈夫そうな木を……っと。うん、これは中々良いでしょう」


 自分の手で握り込れる太さ(テニスラケットのグリップより少し太い程度)の太めの枝を探して、そこから更に二股に分かれている部分以外の余分な所を切り落とす。

 時折、煮沸がしっかりと出来ているかを確認しつつ、ナイフでなるべく綺麗に削っていき、手にフィットする太さになったらそこら辺で拾った石をヤスリ代わりにして、なるべく表面を滑らかにしていく。

 これでベースは完成、耐久性は使ってみないと分からないが、とりあえずは大丈夫そうですね。


 次に取り出したのは昨日食べたオルトロスの頭と首(正確には手と腕の部分)から食道を傷付けない様に切り離していく。

 切り離した食道はしっかりと小川で濯ぎ、余分な肉片や脂の部分も取り除く。

 全体がツルツルになってきたところで一度伸縮性を確認。


「うん、少し硬めのゴムの様に伸び縮みしますね。これならいける筈です」


 食道を半分に切り分け、枝のY字部分の片方へ解けない様、しっかりと結び付けます。

 軽く引っ張って取れないのを確認したらまだ結んでいないもう片方から食道の一部を通し、そちらも固定。

 後は通した部分を蔦を割いて作った細い紐で結び付け、丁度真ん中になる様にする。


「色々と改善点しかありませんが、とりあえず簡易スリングショットの完成です」


 スリングショット、所謂パチンコだ。

 あっちの世界では玩具として認識されがちだが、本来は狩猟等で使われる一種の投石機。

 弓矢や銃火器と比べると殺傷能力は著しく落ちますが、その一番の特徴は弾代わりになる石の補充のし易さ。

 細かい事を言えば、形や大きさを厳選しなければいけないが、それでも大体は地面に落ちている物を使用可能。


「さて。もう少しで飲水が確保出来ますが、折角だから何発か試射してみますか」


 その辺に落ちている手頃な石を拾い上げ、玉受けの部分に乗せて引き絞る。


「よし、弾性は問題無さそうですね」


 ゴム代わりの食道部分が元に戻らんとする力が手に伝わってくる。

 持ち手部分の木材も問題無さそうですね。

 勿論、耐久性がどれ程かは経過観察が必要ですが。


 近場の木に狙いを定めて、引き絞っていた手を離す。


「…………思ったよりも速い。それに威力もそこそこありますね。小動物程度なら当り所によっては致命傷、中型以上や人間でも目や急所を狙えば一時的にでも動きを止められそうですね」


 発射された石の礫は予想以上の速さで木の幹に直撃し、樹皮が砕けて、少し中身が露出する程の威力を持っていた。


「弓よりも簡単ですね。あとは何発か撃って慣らしたら出発しましょうか」


 思い付きで造ったのにも関わらず、期待値を遥かに超える有用度に内心ウキウキしながら、試射を繰り返し、命中精度がある程度確保されたところで切り上げて、飲水を移し、探索に出る事にしました。






 なるべく昨日と同じペースを維持しつつ、また3時間の移動後、小休止を挟む。


「う〜ん…………。昨日と合わせて9時間、計18kmは移動しましたが、まだまだ当分森を抜けられる気配はありませんか……」


 見上げても相変わらず、葉が生い茂り、空はまともに見えない。

 周りを観察しながらだったが、野営の後等も見られないので、そうそう人間が立ち入る場所じゃないんでしょうか?


「ともあれ、川の流れが続いているのであれば、いつかは何処かに辿り着くでしょう。残り半分、張り切っていきましょうか」


 休憩を終え、自分を鼓舞する様に両頬を叩いて気合を入れた後、また道無き道を進み続ける事にしました。






 結局、何の成果も得られないまま、本日の探索は終了しました。

 折角造ったパチンコも特に活躍する事も無かったので少し残念。


 いや、何事も無いのが一番ですけどね。


「駄目ですね。感覚的にはアニメで観ていたVRMMOをやっている気分になってしまいます。気を引き締めないと……」


 明らかにあっちにはいないような生物が実際に存在するにも関わらず、空腹や眠気・催す感覚もあるのでここは現実で間違い無いでしょう。

 ただ、特に女神の祝福とか内から湧き上がる力とかも無いので、ファンタジー要素がオルトロスとかウェアウルフとか牙兎以外皆無なんですよねぇ。


「魔法とかそんなのは無い世界なのかなぁ……」


 そんな事を考えていると、以前読んだラノベの内容をふと思い出した。


 それは現実世界からいきなり異世界に転移した所謂異世界転移もの。

 しかし他作品と違い、主人公にはチート能力も無く、言語も一切通じない。

 それどころか、現地人に話しかけたら、明らかに敵意剥き出しで、殺されかける始末。

 結果的にはあるきっかけから小さな農村に受け入れられて、恩返しの為にと必死に努力を重ね、国の英雄まで登り詰めてハッピーエンドでしたが。


「もし、自分も同じ状態だとして、あんな風に人に受け入れられるでしょうか?あれはフィクションですから主人公も高身長・イケメン優男でしたし……。あれ?僕、詰んでません?」


 いやいや、そんな筈は無い。






 嫌な考えを必死に振り払い、今日も今日とて木の上でゆっくり?眠るのでした。

 因みに今日の晩御飯は途中で見付けた果実でした。

 桃みたいで惜しかったです。

 パチンコって、遊びで使う分には楽しいですし、実際世界最強と呼ばれるものでも殺傷能力はほぼありません。

 尚、世界最強の物は時速979km/hで飛ぶらしいです。

 思った以上に早いですね。

 ただ、ゴムも長いので、誰でも簡単お手軽に、とはいかないようです。

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