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ずんぐりむっくり転移者は異世界で図太く生きる〜イケメンじゃなくても異世界で生き残れますよね?〜  作者: まっしゅ@
第三章 異世界転移したけどまたまたサバイバル生活!?

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ゴーシィ、改めて異世界を痛感する〜異世界生活七十一日目〜

 オークとの大立ち回りから一晩明け、今日も相変わらずの分業…………とはいきませんでした。


 昨日の事を説明したら「肉が勿体無ぇ!」とゴルゾフそんに言われ、折角塞いだ洞窟を再び解放し、中を散策する事になりました。


「でも血抜きも何もしてないですよ?もう全身に血が回って食べられないんじゃないんですか?」

「あぁ゙!?…………そうか、おめぇは知らねぇのか。だったら面白いもんが見られるぞ」

「面白いもの?」

「それは見てからのお楽しみだ」


 頭に「??」しか浮かびませんが、自信満々の彼を見るに何かしらの根拠があるんでしょう。

 言われた通りオークの死体が転がっている大部屋に到着しましたが―――


「血が……乾いている?いや、違いますね。血が無い…………。血溜まりも……オークの中にも…………」


 それはあまりにも不可解な光景でした。

 そんな独り言が聞こえたらしいフィズさんから「この数のオークを一人で殲滅するた……ゴーシィ様も大概ですけどね?」とお小言をいただきましたがそれどころではありません。


「ゴルゾフさん?一体どういう事ですか?」

「おぅ。それだ、それ。その驚いた顔が見たかったんだ!…………て、そんな怖い顔すんな。ちゃんと教えてやるからよ」


 僕、そこまでは怒ってませんよ?

 確かに勿体振るゴルゾフさんに多少苛立ちましたが、そこまで顔には出て…………あ、出てました?すみません。


 僕の表情は置いておいて、この光景の説明を求めました。


「この地下渓谷にはな、敵に回しちゃいけねぇ生物がわんさかいる。その中でもこいつぁ特に厄介だ。特に手傷を負っている、つまり怪我している場合は……な」


 ゴルゾフさんはそう説明しながら壁面の岩をコンコント叩いて回る。

 その内の一箇所を二度三度確認するかの様に叩いてからこちらを振り返る。


「……おい、嬢ちゃん」

「はい?」


 声を掛けられると思っていなかったフィズさんは突然の声掛けに小首を傾げて返事を返しています。


「そのー……なんだ…………。聞きにくい事なんだけどよ…………」

「はい、何でしょう?」

「…………月のものは……今じゃねぇよな?」

「…………はい?」


 フィズさん、「はい」しか言ってないですね。

 一度目と三度目は疑問、二度目は肯定だけど。


「先に言っとくぞ?儂に疚しい気はねぇ。ただ、こいつに対してこの質問は大切なんだ。答えにくいかもしれねぇが…………」

「いえ、必要であれば問題ありません。私は今ではございませんよ」


 言い淀むゴルゾフさんに対してハッキリと伝えるフィズさん。

 デリケートな質問をわざわざする辺り、かなり重要なんだろうと考えたみたいです。

 まぁ、オーク達の異変から察するに、何となく理由は分かった気もしますが。


 あとフィズさん、小声で「今日は大丈夫な日ですよ?」とか言わないで下さい、童貞には刺激が強過ぎます。


「それは何よりだ。んじゃ、行くぞ!」


 先程まで叩いていた付近の壁面目掛けてゴルゾフさんはツルハシを振り下ろす。

 その怪力で岩が割れるとそこから赤い液体()()()()()が溢れてきた。


「血…………じゃないですね。これは……赤いスライムですか?」

「あぁ、そうだ。この渓谷のありとあらゆる所にこいつらはいる。見ての通り、近くに寄ってもこうやって隠れ家を壊しても襲ってこない程温厚なやつだが…………」

「だが…………」

「血の匂いを嗅がせると駄目だ。至る所からうじゃうじゃと出てきて、その血を吸う為に一斉に襲いかかってきやがる」

「この赤いスライ厶の餌は血……って事ですか?」

「そうだ。だから嬢ちゃんに月のものの事を聞いたんだ。こいつら、ほんの少しの血の匂いでも感知して追い掛け回してくるからな」


 やっぱりそうでしたか。

 オークの血が一切残っていない事とフィズさんにあちらの世界ではセクハラ一直線の質問をした事の共通点はそれしかありませんでしたから。


「まぁ食べるにしろ、多いに越したこたぁねぇのはこいつらも同じだ。少し傷を負った餌より死んで血を垂れ流している餌の方が腹一杯になる。もし怪我をしてこいつらが寄ってきた時は近くにいる生き物を殺して囮にしろ。そして、極力早めに血を止めれば逃げ切れる…………可能性がある」

「そこは言い切らないんですね」

「言ったろ?血の匂いに敏感なんだ、少しでも流れれば何処からともなく現れるからな。傷口を焼いて無理矢理塞いでも良いが、それで死んだら元も子もねぇし、痛ぇからな。手っ取り早いのはここから抜ける事だ」

「あの……ゴーシィ様なら倒せるのではありませんか?」


 律儀に手を挙げて質問をしてくるフィズさん。

 確かに、傍から見ればオークの大群よりスライムの大群の方が圧倒的に弱そうに見えますしね。


「「それは(そいつぁ)無理ですね(だな)」」

「へ?そうなんですか?」


 僕とゴルゾフさんが揃って否定をするとフィズさんは目をまん丸にして不思議そうにしていました。


「こちらの世界で何処まで認識されているかは分かりませんが、スライムって群体……つまり、小さい生物が何万、何十万とかそれ以上の途方も無い数が集まって一つの形を成しているんですよ」

「それは一体に見えて実は凄い数を倒さないといけないって事ですか?」

「もし戦うならそうなりますね。しかもスライムの元となる生物?微生物?はとても小さいです。僕の指先くらいですね。それを全てとなれば余程大質量で押し潰すか、散らばる前に一瞬で焼き尽くすくらいしか方法が思い付きません」

「…………ゴーシィさんって火を吹けたりしないんですか?」

「フィズさん、今度ゆっくり僕をどう思っているのか聞きましょうか?」





 …………フィズさんって、こんなにアホの子でしたっけ?

 フィズがアホの子みたいになっているのは、読者が思った質問をさせる為…………とメタ発言させていただきます。

 実際はアホの子担当は別にいますので、フィズに関しては良くも悪くも常識人枠です。

 ただ、主人公の異常な戦闘能力や広過ぎる心を目の当たりにして「この人ならもしかして……」とか「多少冗談を言っても許してくれる」と尊敬と信頼を寄せているだけです。

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