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剛士、森を探索する〜異世界生活三日目〜

 人の物ではありませんが、一部グロテスクな表現がございます。

 苦手な方は、剛士が木から飛び降りる辺りからは読み飛ばして下さい。

 その後は好奇心に負けた行動を行います。

 木の上で、座りながら、落ちたら肉食中の餌と、何ともデンジャラスな状態で十分な睡眠が取れる訳も無く、時間は取れたけど質が最悪でした。


 あぁ〜……フカフカのベッドで寝たい……。


 と、有りもしない物を求めたところで現状は好転しませんから、今日はこの森を探索する事にしました。


 飲水だけを昨日造っておいた木の水筒に入れて、いざ出発!


「太陽があっちだから、西はあっち……いや、こっちでも太陽は東から昇って西に沈むのか?固定概念は良くない気がします」


 方角を知る意味でもとりあえず太陽の昇る方角と沈む方角だけでも確認しつつ、予定通り、小川の下流を目指して森を進んでいきましょう。




 太陽がまだ真上に登らない内に、一度小休止を挟む事にしました。


「……っぷは。朝起きたのが多分あっちでの6時だと思うから、大体3時間歩きっ放しで今が9時頃ですかね?」


 僕の身体は家庭の事情により、体内時計がかなり正確になっています。

 眠気・腹の減り具合・喉の渇き具合等様々な要素から大体の時間が割り出せるので、あっちで暮らしていた時も目覚まし無しで同じ時間に誤差無く起きれたし、社会人として時計をしていましたが、確認せずとも時間はほぼ把握していました。


「まぁ、ここまでの極限状態だと多少の誤差が出るかもしれないので、一応少し余裕を持って行動しましょうか」


 成人男性の平均歩行速度が大体時速4kmとて、3時間だと約12km。

 山道で足場が悪く、辺りを警戒しながらなので、()()()()()()とは言え、もう少し遅いでしょうから、大体半分の2km、6km程進んだとしておきましょう。


 それだけ歩いても全く出口が見えないので、後同じ時間進んだら今日はその辺りで野営の準備をしましょうか。

 今のところ、特に危険な生物と遭遇はしてな―――


「あ」


 少し遠くに小川で水を飲んでいる狼……いや、犬を発見しました。

 ただ、あのドーベルマン風の動物、僕の見間違いじゃなければ首が2本あるんですよね…………。


 こちらに気付き、イヌ科特有の遠吠え上げてこちらへ向かってきます。

 急いで近くにあった木の上に登り、何とか回避します。


「双頭の犬って……オルトロスですか?でもあれは神話上の生き物ですよね?いや、初日にウェアウルフが居たんですからそれ位いてもおかしくないですよね」


 それにしても不思議です。

 遠吠えを上げた時に、頭が二つあるにも関わらず、声が一匹分だったんですね。

 僕は好奇心に負け、オルトロス(仮称)を安全圏から観察する事にしました。


「頭は二つだし、別々に動いていますね。でも何か違和感が…………あ、そうだ。目がどちらもこっちをまともに見ていないんだ。視力が極端に弱くて、その分嗅覚や聴覚が鋭い?だったら僕より先に気が付く筈だからそこまででも無い?まぁ、煙の匂いが染み付いた服だから気付くのに遅れた可能性もありますね……」


 諦める気配の無いオルトロスをここぞとばかりにじっくり観察していると、ある事に気付いた。


「さっきから目はこっちを見ないのに、首の根元の胴体部分はずっとこちらを正面に捉えているんですよねぇ。もしかして、あの二つの頭は頭じゃない?」


 二股の首中央の根本部分、そこが常にこちらに向けられている。

 そうするとある仮定が成り立つ。


「もしかして、あの根元部分が本来の頭?だとすれば、あの双頭は頭じゃなくて腕?だとすれば目が合わないのも合点がいきますね。掌が謎の進化を遂げて頭の様になり、食道が繋がっている。だから、水を飲む時はそこから飲んでいましたし、多分何かを食べるのもあそこから食べる。そして、それ以外の視覚・聴覚・嗅覚は胴体に埋まっていて、見た目程良くないとすれば……」


 言っていて無理がある気もしますが、ここはファンタジーな世界。

 魔法もチートも有りませんが、確実にファンタジー。

 だとすれば説明がつきますね。


「それだと現代知識に無理矢理合致させなくても「ファンタジーだから」の一言で話が済んじゃいますけどね」


 自分で考えたくせに自分でそれを無下にするのはどうかと思いつつ、結局はそれで全て片付いちゃうんですよね。

 ファンタジーって言葉、便利すぎませんか?


「ともあれ、何時までもこうしていても埒が開かないので、いい加減対処しますか」


 避難していた枝を揺らした反動でオルトロスがいる地点から少し離れた地点へ跳び、地面に着地。

 それを待っていたかの様に襲ってくるオルトロスの二股部分のつけ根を目掛けて手斧を叩き付け、肉と骨を叩き斬る鈍い感触と音に顔を顰めながらも、その勢いのまま力任せに近くの木に叩き付けました。


「ふぅ……。なんとか一発で仕留められましたね……」


 僕の予想通りだったみたいで、力任せに叩き割られた胴体から脳の一部と眼球の片方が見えていました。


「あまり褒められた行動ではありませんが、あまりに気になるので……失礼します」


 腕と仮定した頭を石の斧で切り落とし内部を観察すると、やはりそれは食道が通っている腕なのは間違いなかった。


「……って感心している場合ではありません。早く移動しなくては!最初の遠吠えで仲間を呼んでいたら大変ですし」


 幸い、それ以降は襲われる事も無く、予定より進めはしなかったものの、野営に適した場所を発見し、無事夜を越す事が出来ました。

 …………一応不安なので木の上でしたが。



 興味本位で持ってきたオルトロスの肉、少し硬かったですが、臭みも無く、ジャーキーみたいでとても美味しかったです。

 ※この作品はフィクションです

 モンスターをなるべく本当に有り得そうな設定にしたいと思っていますが、無理な場合「ファンタジーだから!」で押し通そうと思っています。


 剛士の家の秘密は人と合流した後に判明いたしますので、お楽しみに。

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