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ずんぐりむっくり転移者は異世界で図太く生きる〜イケメンじゃなくても異世界で生き残れますよね?〜  作者: まっしゅ@
第二章 異世界転移したけど国賓生活!?

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【番外編】剛士、死んだ事にされる

「駄目です!一本道が崩れ、完全に奥への道が途切れています」


「そこまでの道中に二人の姿は!?」


「現在捜索中ですが……」


「くそっ!」


 悔しさに顔を歪めているのは第五騎士隊の騎士長チャルド=メイ。


 彼女は発見された魔獣の巣を駆除する為に、部下を率いてこの地まで馳せ参じた。


 入口を見付け、いざ任を果たさん。と突入するも、幾度となく訪れる蟻達により、隊は半壊。


 ようやく到達した最奥には絶望と呼ぶ他無い光景が広がっていた。


 自分達だけでは対処の仕様が無いと、撤退を余儀無くされる。


 しかし、撤退の最中もこちらの事情等お構い無しに蟻達が襲ってくるので、途中途中で休息を取りながら引き返していた。


 休憩をとっている最中、また蟻達の音がした我々は急いで迎撃に向かうと、信じられない光景を目の当たりにする。


 蟻の大群をたった二人で全て対処していたのだ。


 二人に怪我らしきものは見当たらず、思わず警戒したが、副騎士長であり、幼馴染でもあるマウンティン=オーガストが声を掛け、それが噂の異世界人だと分かった。


 彼等は二人と合流し脱出を試みるも、大量の蟻達の襲来によって洞窟が崩落、殿を務めていたタケシとフィズは底の見えない床に空いた穴に転落してしまった。


 その後、何とか脱出を完了させ、負傷者の手当をしつつ比較的軽症な者達が引き返していた確認しているものの、発見出来なかった。


「…………仕方無い。二人の安否も心配だが我々も余力は無い。大至急王都に戻り、事の顛末を報告する」


「チャル……じゃなかった、騎士長!まだ二人は見付かって無い!」


「副騎士長も見ただろう?あの数の蟻に加えて、あの規模の崩落……。もうあの二人は…………」


「…………ちくしょうっ!」


 マウンティンは悔しさに顔を歪ませながら、行き場の無い怒りを滲ませている。


「我々はあの二人のお陰で命拾いした。であればやるべき事は生きて、あの二人の勇敢な姿を伝えよう。それが弔いになる……とは言えないが」


「…………分かった。よし、行くぞお前達!」




 タケシとフィズの功績により、第五騎士隊は人員の半数を失いながらも何とか王都へ帰還した。


 一息つく間も無く、此度の件を上へと報告。


 その反応は様々だった。


 ブルゴーニュは二人が派遣された事を知らず、驚愕の表情。


 クラリスはその場に泣き崩れ、顔を上げる事は無かった。


 だが、ボルドーだけは違った。


 無表情を取り繕っているが、その口が時折醜く歪んでいる。


 それを横目に見たフィズとマウンティンは察する。




「全てこいつ(殿下)の仕組んだ罠だったのか」と。




 思えば違和感だらけだった。



 何故、魔獣討伐を主とする第五騎士隊があそこまで巨大に膨れ上がった魔獣の巣を発見出来なかったのか。


 その上、王都の平穏を脅かす魔獣の巣の駆除は、規模にもよるが功績としてかなり大きいにも関わらず、我々に命じられたのか。


 それを発見したと言われているのが、殿下の派閥であり自己顕示欲の高い第二騎士隊だったのにも関わらず。



 謁見の間を後にしたフィズとマウンティンは第五騎士隊の詰所で顔を突き合わせて話していた。


「今回の件、全て殿下が仕組んだ事だよな?」


「えぇ、間違い無くね……。私達第五騎士隊はクラリス姫殿下の派閥でもある。それを排除する為に仕組まれたのでしょう」


「ついでに陛下からも覚えの良いタケシも纏めて始末出来れば…………」


「正に一石二鳥って訳ね」


「あの腹黒王子…………。人の命を何だと思ってやがる」


「どうせ陛下と自分以外は下賤の民。とでも思っているのでしょうね。勿論クラリス姫殿下の事も」


 部屋には二人しかおらず、その口調も砕けたものだった。


 誰も聞いていないと、思う事を口々に言葉にしている。


「フィズ、お前はどうするつもりだ?」


「どうしようも無いわ。私も貴方も皆も、怪我が無い者は誰一人いないのよ?」


「だからってやられっぱなしじゃ……!」


「兎も角、先ずは傷を癒すのを第一に優先。その後は他の騎士隊が調査に出向く筈だからその報告待ちよ」


「無力だな、俺達…………。騎士隊の騎士長と副騎士長が揃っているのにさ」


「私まで巻き込まないで。と言いたいところだけど…………そうね」


「あいつの教えをしっかり皆に伝えて……俺自身も含めてもっと強くなろう」


「…………私にも教えなさいよ?」


 二人は強く決意する。


 理不尽に対抗出来る強い自分になろうと。


 意見を通せる地位を築こうと。


 亡き友の教えを皆に伝えようと。






 生きているのを知らないとは言え、死んだ事にされている二人には少々気の毒だが、騎士隊の士気はとても高かった。






 一方、その頃のタケシは―――





「ふぇっくしょっん!」


「タケシ様?お風邪ですか?」


「いや、これは多分噂されてる感じですね」


「えぇ……。くしゃみでそんな事分かるんですか?」


「冗談ですよ、冗談。それよりも早く獲物を見つけないと、今日はご飯抜きになりますよ」


「やだー!私頑張ります!」


「はい、二人で頑張りましょう」





 何とも締まらない雰囲気で食料探しをしているのだった。

 これで第二章の王国での生活は一旦終わりになります。

 

 次からの第三章はまたまた限界サバイバルの始まりです!

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