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ずんぐりむっくり転移者は異世界で図太く生きる〜イケメンじゃなくても異世界で生き残れますよね?〜  作者: まっしゅ@
第二章 異世界転移したけど国賓生活!?

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剛士、剣を貰う〜異世界生活五十四日目②〜

 斬った人形と鋼の鎧、そして手に持った剣を奪われてうんうん唸ってにらめっこしたり剣を鎧に当てたりしている店主と一言「そこで待っとけ」と言われて、只ひたすらそこに立っている僕。

 端から見なくてもどういう状況ですか、これは?



 待つこと数分、未だに納得して無さそうな店主が僕の下へ歩いてきた。


「おめぇよ、「剣を()()()()」と言ってたよな?」

「はい、そうですね」

「異世界では物事を極める事を嗜んでると呼ぶのか?」

「いえ、そういう意味では殆ど使いませんね」

「じゃあおめぇはオイラに嘘を吐いたのか?」

「いいえ、僕は本当に()()を嗜んだ程度です」

「剣術は。か…………。おめぇ、本当の獲物は何だ?」


 この人、頭が良いですね。

 いや、頭の回転が早いと言う方が正しいでしょうか?

 先程の僕の動きと今の発言で、僕が剣の使い手では無い事に勘付いていますね。


「一応、一般的になものはある程度使えますが、その中でも得意なのは刀と短刀ですね」

「カタナっ!?カタナって言うのはあのカタナか!?」

「どの刀かは分かりかねますが、僕が知る刀はこの剣と似てはいますね」

「どれも何もカタナと言えば、伝承によると異世界人が持ち込んだ斬る事に特化した剣の事だ!」

「だったら多分それですね。極限迄刃を薄くして、力で斬るのでは無く、刃と技術で斬りますから」

「本当にカタナを知っているんだな!頼む!オイラはカタナを造りたいんだ!何でも良い、知っている事があるなら全て教えてくれ!」

「え、えぇ〜っと…………」


 確かに、こちらの世界の人よりは刀について詳しいとは思います。

 しかし僕は専門では無く、あくまで『扱う武器はその全てを知って初めて扱える』って教えを守る為に勉強しただけなので、実際に刀を打った事はありません。


 それを伝えて断ろうとしましたが、それでも「だが少なくともオイラよりは詳しい筈だ!頼む!」と、土下座迄される始末。

 結局は僕が折れる事になり、知っている事だけで良ければ教える約束をしました。


 僕が手に取ったエストックは改めて見れば刀に近い。 

 勿論色々と違うところがありますが、それでも伝承で伝わっている『斬る事に特化した』の部分だけでここまで近付けています。

 如何にこの店主が研究し、努力を積み重ねてきたのかがよく分かりました。


 僕は口頭で説明しつつ、時折絵を描いて説明し、都度聞かれた事に答えながら自分の知りうる全てを店主に伝えました。 




 あまりに熱中(店主が)し過ぎたせいで、辺りは既に真っ暗でした。

 教えてくれた礼に。と、刀風エストックと剣帯・ダガーを一振り頂いた上、手持ちの武器含めていつでも見てやると言われたので、得したのではないでしょうか。


 僕はルンルン気分で帰路に着きました。






 今朝の出来事をすっかり忘れていたので、玄関を潜ると般若牙五人立っていましたが、些細な事です。

 いや、本当は些細じゃないですが…………。







 〜剛士が鎧を斬った頃のメイド達〜






「駄目です!城下町を探していますが、見付かりません!」

「街の外に出た可能性は!?」

「門兵達に聞きましたが、今のところそれらしき人物が外に出た形跡は無いとの事です」

「あの男……本当に面倒くさい!」

「カルミアさん、言葉、言葉」


 剛士の住む屋敷にいるメイド達は屋敷の兵も総動員して剛士の行方を探していた。


 今朝、少し強引に誘ってみたら逃げ出してしまい、素早い動きと本人の気配の薄さも相俟って完全に見失ってしまったのだ。


(ってか、根性無しにも程があるでしょう!こっちは仕事で誘ってて、それを分かっているのに受け入れる気配すら無い!娼館に行く手間が省けたとでも思いなさいよ!)


 カルミア含む彼女達は所謂プロである。


 個人差はあれど、全員がメイドとしての役割をしっかりと把握し、いくら嫌悪していても表に一切出す事は無い。


 ただ剛士の察知能力が異常に高過ぎるだけ。


 彼女達からしてみれば、こんなにも露骨に誘っているにも関わらず、何故彼が頑なに拒否しているのか分からない。


 剛士からしてみれば、そもそも経験が無い故自分に自信が無いのに加えて、いくら仕事とは言え嫌々相手してくれている彼女達をわざわざ抱く気にはなれない。


 双方の考えは絶望的に噛み合っていない。


(最終手段を取る……?いえ、あの男の事だから部屋に入っただけで気付く。どれだけ臆病なのよ…………)


 夜這いを仕掛けるにしても、部屋に入るどころか部屋の前に人がいるだけでその気配に気付く。


 結果、メイド達の取れる手段は真正面から誘うのみになってしまっていた。




 そんな中、一人の兵士がカルミアの下へバタバタと走ってきた。


「失礼します。タケシ様がお戻りになられました!」


「え……?」


 カルミアは最悪の展開を予想していた。


 だが、彼女の不安は良い意味で裏切られる。


 帰ってきたタケシは怒っている訳でも、彼女達を恐れている訳でも無い。


 ただ、買い物をして用が済んで帰ってきただけ。






「あぁーーー!!あの男はあぁぁぁぁ!…………ふぅ。分かりました。タケシ様をお出迎えに上がります」






 カルミアは小声で不満を叫ぶと言う器用な事をしつつ、気持ちを切り替え、タケシの下へと向かっていった。







 夕食時のタケシの居心地がすこぶる悪かったのは言うまでも無い。

 メイド達の極秘任務として、国王から「異世界人の子どもを産め」と命じられている。

 もし達成した場合は、母子共に生涯の生活とある程度の地位がが保障された上、報酬が与えられる。

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