剛士、自ら提案する〜異世界生活五十日目②〜
今話は途中から視点が変わります。
相手に従うだけなのもアレなので、こちらから提案する事を決めた僕は、宰相殿と公爵閣下に言葉を告げました。
「公爵閣下、宰相殿。私自身が戦場に立つのは断固拒否させていただきますが、私としても一宿一飯以上の恩がこの国にはあります。ですのでこう言うのは如何でしょうか?」
僕からの提案、それは簡単な事でした。
自らが戦場に立つ代わりに、戦場に出る騎士や兵士達に技術や知識を教える事。
まず、僕の戦い方とこの国の戦い方がどう違うかを見せてもらい、その中で即座に取り入れられるものは取り入りてもらい、時間が掛かりそうなものはそちら側で必要と感じたものだけを取り入れてもらう。
必要であれば実戦形式で模擬戦をする事も視野に入れるのも伝える。
手始めに公爵閣下の部下達に教え、それがどう活かせるかを判断してもらう。
「―――と、そんな感じでどうでしょうか?これであれば、こちらは直接戦わずに済むし、そちらとしても戦力増強に繋がるかと」
「それは良い。そう思うであろう、宰相」
「う〜む……。確かにこれ以上無い提案ですが……」
「何か問題があるのか?」
「公爵閣下の騎士団だけでは無く、王国直属の騎士団にも指南を頼みたいところですな。勿論、オオタ殿の負担が増えるので無理は言えませんが…………」
「それは構いませんよ。ただ、流石に百人単位で増えると手が足りませんので、まずは両騎士団から十名ずつ、計二十名からで宜しいですか?」
「それは有り難い。因みに選定基準は?」
「そうですね…………。まずはその者が信用出来るかどうか……ですね。一部とは言え、教えるのは秘伝な部分もあります。下手に齧っただけで周りに間違った事を吹聴されて私の評価が落ちてしまうのは勘弁してほしいので」
「畏まりました」
いるんですよね、一部だけを知っただけで「俺、完璧にマスターしたから教えてやるよ」って調子に乗るやつ。
……ねぇメイドさん達、「貴方の評価なんて既に地の底でしょう?」みたいな目をしないでもらえます?
貴方達からの評価は最悪みたいですが、他の方はそうでも無いっぽいので!…………多分。
「騎士になっている時点で既に一定以上の信用を得ている者達だ、それだけでは選定基準が曖昧過ぎる。もっと他には無いか?」
「それでしたら、騎士団の中でも実力が上位・中位・下位の方々を織り交ぜて下さいませんか?」
「何故だ?実力がある者から優先すべきでは無いか?」
「それもそうなんですが、実際に戦場に立つのは実力がある者だけではでしょう?それに私の訓練方法で実力下位の者が急激に力を伸ばす事に成功したら、騎士団全体の実力の底上げにもなりますし」
「それもそうか」
「それに、実力上位の方々は役職持ちも多いかと。その様な方々だけに教えてしまえば、下の者にそれが伝わるまで時間が掛かってしまいます。結果的には変わりませんが、今は早いに越した事は無いでしょう?それを踏まえた上での選定基準です」
「成る程…………。それは考えた事無かったな」
「…………それは新兵も加えて宜しいのですか?」
「むしろ新兵がいた方が良いと思います。実際に他の新兵と成長速度の比較が出来ますから、今後の訓練に取り入れるかの基準になるでしょう。あとは―――」
こうして話をどんどん煮詰めていき、二人が帰る頃には既に日が暮れてしまっていました。
二人を見送った後、自室に戻りソファに腰掛けると思っている以上に疲労していたのか、そのまま眠りに落ちてしまいました。
〜剛士がソファでうたた寝をしている一方、メイド達は〜
「タケシ様は今お休みになられています。公爵閣下と宰相閣下との話し合いでお疲れになったんでしょうね」
「だらし無い……」
「本当に根性ねぇなぁ。少し話しただけじゃねぇか」
「まぁまぁ。国の上位陣と話して疲れない人はいないでしょうからしょうがないよ」
「難しい話すると疲れるよねぇ〜」
剛士が寝ている今、特に抱えている業務が無いメイド達は食堂に集まり、食事を取っていた。
普通なら「主人より先に食事するなど何事か!」と怒られいるところだが、剛士がそんな事をする筈も無く、むしろ「僕は気にせず、好きな時に休んで下さい」と言われる始末。
そんな彼の性格も相俟って、こうして5人揃って食事する事も多かった。
「それにしてもあいつ、相変わらず手を出して来ねぇな」
「その割に胸をジロジロ見てくる……気持ち悪い…………」
「ミュールって見る程無いじゃん〜」
「カンパ……許すまじ……」
そんな話をしているのはソルティ、ミュール、カンパ。
「タケシ様なりに気を遣ってくれているんだよ。私は露骨に見られるよりは良いかなぁ……」
「そもそもさっさと手を出してくればそれで済む話なのよ。手を出しても良いと伝えているし、ちょこちょこ誘惑しているのに拒否するんだから、あの臆病者は…………」
「カルミアさん、口調口調…………」
「……失礼しました。つい本音が…………」
そんなやり取りをしているのはカルミアとフィズ。
五人揃った際の話題は殆ど剛士の事だった。
彼女達の役目は多岐に渡る。
身の回りの世話や屋敷の管理は勿論、求められれば身体を捧げるのも辞さない。
更に、異世界人である剛士の子どもを妊娠したのであれば特別報奨を受け取る事も出来るので、一部は積極的に誘っているものの、振るわずにいた。
「彼の性格的に愛する女性以外とは行為に及びたくないんでしょうね」
「はっ。ガキじゃあるまいし。サクッと抱いてサクッと種付けすれば金も貰えてこの仕事とおさらば出来るのによぉ」
「でも、楽だよね〜。何してても怒られないし〜。この前もお昼寝してるの見つかったのに何も言われなかったもん〜」
「カンパ?職務中に昼寝をしていたんですか?」
「だって気持ち良かったんだも〜ん」
話のオチ?そんなものは無い。
ただただこうやって、何も無い時には五人揃ってひたすらワイワイと喋り続けているのであった。
今更ですが、メイドさんの紹介。
メイドさん達の名前の由来はカクテル。
カルミア(28)
剛士の屋敷にいるメイド達の実質的なリーダー。
(剛士からすれば)年上のお姉さん特有の色気とそれを更に押し上げる様な肉感増々のグラマラスボディを持つ。
心の中では剛士を見下しており、中々に、口が悪い。
なお、極度の酒好き。
フィズ(22)
メイド達の中で一番フレンドリーに接してくれる、おっとり年下幼馴染系メイド。
剛士の事を讃える訳でも無いが、下にも見ていない。
引っ込んでいる所は引っ込んでいて、出る所は出ている、一般的にはかなりスタイルが良い方だが、比較対象がカルミアなので分が悪い。
ミュール(15)
メイド達の中で最年少のロリっ子。
ロリ巨乳は邪道と言わんばかりのぺったんこで、今後の成長は見込めない。
剛士の事を「この人は生理的に無理」と思う程に嫌悪しており、なるべく話し掛けられない様にする為に、最低限の受け答えしかしていない。
カルミアをお母さんの様に慕っている(カルミア的には複雑らしい)。
ソルティ(24)
唯一剛士と同い年で、剛士に対する評価は「いつもおどおどしているムッツリスケベ」。
剛士のなよなよしている部分が嫌いで、元々の口調も強いせいかそれが余計に悪化している。
胸よりもお尻に自信アリ。
カンパ(20)
アホの子。
剛士に対して好感度が低いのは
ミュール>超えられない壁>カルミア>ソルティ>>>フィズ>超えられない壁>カンパ(特に考えいない)
です。
各所で「好感度が下がっている」と剛士が感じるのは上位三人が主。




