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剛士、異世界に転移する〜異世界転移一日目〜

 主人公が全くイケメンとか言われない物語、始まります。

 僕の名前は【太田 剛士】。

 “ふとった”では無く“おおた”で、“ごうし”では無く、“たけし”です。


 現在24歳、独身、研究職に就いています。


 顔は下の上…………だと信じたい。

 少なくともイケメンなど程遠く、ブサイクだと思います。

 実際言われてましたし。

 どんなに頑張っても細くならない下膨れ気味の丸顔に腫れぼったい一重、そして顔の中央に位置する団子の様な鼻。

 髪は天パでチリチリなので伸ばすと正にホームレス、基本は坊主に近いくらい短く切っています。


 それに加えて身長は162cmの日本の成人男性の平均より10cmは低く、体重95kg弱あります。

 数字で見ると太って見えますが、体脂肪率は7%程なので、太っている訳では無く、ただの筋肉ダルマです。

 子どもの頃、一人か二人はいましたよね?

 小学生にしてはめちゃくちゃ身長が高くて、身長順で並んだ時に後ろから数えた方が早かったけど、中学・高校では周りの皆がどんどん大きくなって、いつの間にか前の方に並んでる。

 僕は正にそんな子どもでした。


 それに加えて、特殊……と言うよりも異質と呼べる家庭環境により、僕の身体は普通の人と比べて異常に筋肉がつきやすくて、服を着ていると着膨れして太って見えます。

 水泳の授業なんかでは服は脱ぐ事も有りますが、それはそれで特に女子達からは『顔と合ってないから気持ちが悪い』と言われました。


 自信を持てない内気な性格も相まって、暗黒の中学・高校時代過ごしたせいか、大学生になっても女子からは一切相手にされませんでした。

 大学ではオタク仲間やバイト先の先輩後輩達と楽しく過ごせたのが唯一の救いでしょうか。

 学内でもトップの成績を収めていたので無事、希望していた国内トップクラスの総合研究所に就職出来ました。


 労働環境はブラックを超えた漆黒でしたが、好きな分野だったので楽しかったです。





 ―――と、何故走馬灯の様に過去を振り返っているかなんですが、それは現在の状況にあります。


 いつも通り、0時を余裕で過ぎて帰路に着き、部屋に入った気がするのに…………。




「どう見てもここは森の中……ですよね…………」




 まだ太陽は高い筈なのに、薄暗い森。

 そんな所に立っていました。


「日頃の生活に疲れ果てて、気付かない内に富士の樹海に来た……なんて事は無さそうだし…………」


 周りの植物を観察しても、どうやら日本には生息していないものしかありません。

 それどころか―――


「どう見ても今まで見た事無い新種にしか思えない……」


 仕事柄とお家柄、世界に存在する植物関係も一通り頭に入っている筈なので、知らないとなると世紀の大発見。

 だが、現状を考えると、そんな喜んでいられる状況では無さそうです。


「とりあえず、現状把握からですね。可能性としてはまず『夢』は無さそうです」


 頬を叩いたり、植物を触れば触覚がちゃんと機能している。

 森の匂いもしっかりと感じ取れるし、音も聞こえる。

 まず夢は可能性として限りなく0に近い。


「研究者としてはおまり非現実的な事は考えるべきでは無いのでしょうけど、オタクとしてはどうしても捨てられない一つの可能性がありますね……」


 その可能性―――それは異世界転生。

 いや、正確には異世界転移ですね。


 転生は何らかの要因で死亡した場合、異世界の別の人物として生まれ変わる事。

 対して異世界転移は現実世界からそのままその人物として文字通り転移してくる事。


 どちらも大抵『神(女神)様に喚ばれて〜』とか『勇者召喚の儀式で〜』とか何だけど、少数派である突然転移して、説明・チート0でスタートの転移ものがある。


「いや〜……。まさか一番嫌だと思っていたソレが自分の身に降り注ぐとは…………」


 そう嘆いていても仕方が無い。


 それに―――


「未知の植物があるのであれば、未知の動物、モンスター?クリーチャー?魔獣?魔物?そんな非現実的な生き物に獣人やエルフ・ドワーフとかの亜人も存在する可能性もある…………」


 恐怖もある。

 だが、それ以上に好奇心を抑えきれないでいます。

 端から見れば、独り森の中でニヤニヤと笑っている変人ですが、幸いこの周りに()()()()は感じられませんから問題ありません。


「さてと…………。とりあえず先程からこちらの様子を伺っている貴方達は敵ですか?味方ですか?」


 冷静さを取り戻し(正確には気の所為だと目を逸らしていた)現実と向き合い、誰もいない方向を見て一声掛ける。

 声を掛けた事で身を隠す意味が無いと判断したのか、ガサガサと音を立てて、ソレは茂みから姿を表した。


「え〜っと…………。予定ではゴブリンとか角が生えた兎とか狼辺りを予想していたんですが…………」


 予想が外れました。

 いや、ほんの少し当たっていたとも言えるかも?


 現れたのは立派な毛並みと鋭い爪や牙を持った狼…………が体長2m近く大きくなって二足歩行をしている生き物。


 あれは……獣人?はたまたウェアウルフ?ん?違いがあるんですかね?

 まぁ、どちらでも構いません。


「日本語は通じますか?そもそも、僕の言葉ってこちらの方々に通じるんですかね?」


 そんな自分の世界に入っていると二足歩行の狼達が唸り声を上げて襲い掛かってきた。


「意思疎通は叶いませんか……。では、申し訳無いですが…………殺します」


 喉元に喰らいつこうと大きな口を開けて飛び掛かってきたソレをいなし、その勢いを利用してそのまま地面に叩き付ける。

 相手は為す術無く、開いた口から地面に頭を叩き付けられ、そこから鈍い音が鳴る。

 本来はほぼ必殺だろうが、油断はしません。

 その太い首目掛けて、全体重を掛けた全力のストンプ。

 先程より更に大きい音が辺りに響き、その音と共にソレは糸の切れた人形の様に動かなくなった。

 確実に仕留めましたしたが、それでも残心をとる。


 息絶えたソレからの反撃も、周り複数あった気配も感じられなくなったところで張り詰めていた緊張の糸を少し緩めました。


「ふぅ…………。確かに貴方は物語序盤で現れる事が多いでしょうけど、せめてもう少し後でしょう…………」




 異世界に転移して、まだ一時間も経たない内に異世界の洗礼に合いましたが、どうにか潜り抜けた事で、ほっと胸を撫で下ろす僕でした。






 この後に起こる事から必死に顔を背けながら。

 序盤はかなりゆっくりストーリーが進んでいきます。

 剛士以外の登場人物が登場するのももう少し先の予定なので、独り言多め。

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