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ずんぐりむっくり転移者は異世界で図太く生きる〜イケメンじゃなくても異世界で生き残れますよね?〜  作者: まっしゅ@
第二章 異世界転移したけど国賓生活!?

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剛士、初の魔法を目にする〜異世界生活九日目③〜

 今話で初の魔法が登場します!

 僕達は今、大量の狼達に囲まれています。


 それはここに来るまでも遭遇した草原狼と呼ばれる草色と土色の斑模様が特徴的な狼。

 大きさは普通の狼と同じ程度。

 しかし侮る無かれ。

 イメージ的にはシベリアンハスキーと同程度だが、実在には体高も体長も遥かに大きい。


 そんなのに群れで襲われたらひとたまりも無い。

 逃げるだけでも命懸けだ。


(どれくらいいるんですか、これ。正直逃げ出したいですね……)


 とボヤいてはみるものの、ここまで一緒に来たからには自分一人逃げ出す訳にはいきません。


 狼達は一定の距離からは身を屈め、少しずつ、静かに近寄ってきています。

 ハンターが獲物に察せられない様にする動きそのもの。

 まぁ、僕は気付いていますが他の人達は多分気付いていないでしょうね。


 報せようにも一声上げればバレているのに気付き、一斉に襲い掛かってくる可能性大。

 かと言って、この位置から皆さんを守り切るのは不可能。


(報せるべきか、報せずに戦うべきか…………)


 迷ってる時間はあまり無さそうです。


 こうなったら…………。


「意識をこちらに引き寄せますか…………」


 初歩から最速に至る。

 それにより0→100の加速が可能となり、不意の一撃や初撃において圧倒的有利をとる歩法。


 その実、全身の力を一気に抜いて重力に任せて倒れ、その勢いを利用したまま距離を一気に詰める、名前は違えど色んな武術の流派に存在する秘儀の一つ。


 速度を殺さず、一体を槍で一突き。

 何が起きたか分からずに一瞬ではありますが動きが止まった周りの狼達を力任せに横に薙いだ槍で切り倒す。


 異変に気付いた狼達は仲間に伝える為の遠吠えを上げる。


「何だ!どうしたというのだ!」

「周りから狼の遠吠えです!声の数的に複数の群れがいると思われます!」

「何だと!?おい、火の番をしていた二人は何処に行った!?」


 二人の騎士は突然の出来事にパニックを起こしている。

 メイドさん二人も飛び起きて天幕の中にいるであろう姫様の安否を確認していた。


「おい!旅人!貴様が何かしたのか!?」

「僕じゃありませんよ!」

「うぉおっ!?貴様、何処から現れた!?」

「さっきからあちらにいましたよ。暗がりで見えなかっただけです」


 僕は手短に何があったか説明する。

 起きてきた姫様含め、仲間がそんな事をした事実を受け止めきれていなさそうでした。


「ともかく、今はこの場を切り抜けるしか有りません」

「…………分かりました。皆、私を少しの間守っていて下さい。タケシ様も。よろしくお願いします」

「「「「はっ!」」」」

「何をするんですか?」

「今から姫殿下が魔法を使うっす。少し時間が掛かるから、その間守ってほしいっす」


 そう説明してくれるはロビン君だった。


 時間が掛かるって事は詠唱をするんですかね?

 初の魔法に少し胸が躍ります…………っていけませんね、そんな事を言っている場合じゃありません。


「分かりました。では、僕が先陣を切って数を減らしますので、皆さんは姫様を守っていて下さい」

「おい、貴様!勝手な事を―――」 

「了解っす!タケシさん、お願いするっす!」


 チンピラ騎士を遮ってロビン君が返事をしてくれた。

 任されたからには失敗出来ませんね。


 今回は終りが見えない持久戦、《傀儡遊戯(クグツユウギ)》は制限時間が短くて使えないので今回は別のやり方でいきましょうか。


 こめかみをトンと指で叩き、引き金となる言霊を唱える。


「《童ノ戯レ(ワラベノタワムレ)》」




 《童ノ戯レ(ワラベノタワムレ)》。

 寝るのも食べるのも忘れて、常に全力で遊び回る子どもから着想を得て開発された《傀儡遊戯クグツユウギ》の派生の一つ。


 《傀儡遊戯(クグツユウギ)》とは異なり、脳の活動全体では無くほんの一部、子供の様に睡眠欲・食欲やそれに関する働きを遮断する。

 その代わりに、人間が可能な全力運動の8秒弱、無酸素運動の40秒前後(大体400m走より少し短い程度)の限界を超え、それを遥かに上回る時間維持する事を可能となります。


 勿論デメリットもあります。

 体の可動限界は超えないものの、全力で動き続けるのは負荷が掛かるので、解除した直後に極度の疲労や筋肉痛・空腹や眠気に襲われたり、時間が伸びると言っても限界があるので、タイムリミット付きなのは変わりません。


 それでも《傀儡遊戯(クグツユウギ)》に比べたら可愛いもんですが……。




 そんな僕の身体能力を全開にした動きによって、一定範囲内に入った狼達を時に斬り伏せ、時に突き刺し、時に叩き潰す。


 それを繰り返している内に、身体の限界が近付いてきました。

 姫様は最初と変わらず手を組み、祈る様な体勢のまま動いていません。

 周りを固めている騎士とメイドさん達も徐々に抑え込まれ始めており、傷が増えていく一方。


(何かを唱えている素振りはありませんね。詠唱は無い、俗に言う無詠唱ではありますが、発動までにどれくらい掛かるんですか、あれは!)


 既に十分近く経っているのに未だに魔法は発動する気配が有りません。


(ラノベとかだとあんなに長い溜め時間が必要な魔法なんて、この辺り一帯を吹き飛ばしてしまう、戦略級魔法ですよ!?そんな物騒なものを準備してるんですか!?)


 新たに狼の死体を増やしながらそんな事を考える。

 その数は既に百を超えそうです。


「準備完了しました!タケシ様!私達の近くに!」

「っ!!分かりましたっ!」


 姫様に言われた通り、皆さんの近くまで駆け寄ります。


「発動!」


 姫様のその言葉と同時に展開された魔法は、僕が懸念した戦略級魔法―――では無く、ガラスの様なドーム状の壁でした。


「こ……れは…………?」

「驚いたか?これは姫殿下が得意とする結界魔法だ。これ程のものはローゼン広しと言えど、殿下だけだ!」


 いや、コメントし辛い。

 十五分弱の祈り?の末、発動したのが、半径3mの半球状のドーム。

 確かに狼達は破れそうに無いから安心ですが。


 そりゃ確かに、期待し過ぎた部分がありましたよ。

 現実(異世界的にいる方の意味)はそんなもんですよね。

 誰も彼もがポンポン魔法出してたら世界滅びますもんね!







 だからってこんな、こんな事実……知りたくなかったぁぁぁぁぁ!!

 はい、登場したのは俗に言う《障壁》や《結界》でした。

 主人公が言っていた通り、祈りを捧げて発動しています。

 何故詠唱が無いのか、時間が掛かってしまうのかはまたの機会に。

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