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ずんぐりむっくり転移者は異世界で図太く生きる〜イケメンじゃなくても異世界で生き残れますよね?〜  作者: まっしゅ@
第二章 異世界転移したけど国賓生活!?

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剛士、面倒事に巻き込まれる〜異世界生活九日目②〜

 完全に日が沈み、辺り一面が闇に包まれました。

 あっちの世界の夜とは違い、辺りに明かりが一切無い本当の暗闇。

 街灯が無い、山間部で車のヘッドライトを消した状態が一番想像しやすいでしょうか?

 残念な事に月は出ておらず、上を見上げれば星は見た事が無い程に空を埋め尽くしてはいますが、その光が地上を照らす事はありません。

 騎士達と僕が手に持っている松明だけが唯一の頼りです。


「この平原に生息する、危険な生き物はいるんでしょうか?」


 夜は肉食の獣達が活発に動き出す時間。

 それに加えて、人間と比べても夜目や鼻が効くので、俄然僕達は不利。

 こちらは灯りを灯していますしね。

 目が頼りにならない今、音と匂いを頼りに索敵をしますが、後手に回るのは必然でしょう。

 実際、僕以外の騎士達は、時折襲い掛かってくる狼型の魔獣の接近を許しており、何とか対応していますが、体力を徐々に削られています。


 僕ですか?音を頼りに近付いてくる方向が何となく分かるので、予め準備しているので比較的容易に対処出来ています。

 多分ですが、皆より夜目は効きますし。


 それでも疲労は溜まる一方。

 流石にこれ以上は負担が大きいと判断し、進言をする事にしました。


「皆さん、やはりここは無理をせず、この辺りで一夜を明かして、改めてその農村に向かいませんか?」

「貴様、姫様が決めた事に反論する気か!?不敬だぞ!」

「不敬も何も、この状況で移動する方が遥かに危険です。先程から何度も敵の接近を許しているではありませんか。次はどうなるか分かりませんよ?」

「貴様……言わせておけば…………」


 チンピラ騎士、貴方は言葉の最初に「貴様」って言わないと話せない病気か何かなんですか?

 それに薄々そう思っていたのか、反論が出来ていませんよ?


「タケシ様の言う通りですね。ここは無理して進む方が危険でしょう。私が間違っておりました」

「姫殿下!この様な者の言う事など聞き必要はございません!」

「そうは言いますが、実際タケシ様以外は襲ってくる魔獣の対処に手間取っているのも事実です。先程も側方から襲ってきた草原狼がメイド達に迫るまで気付いていなかったではないですか」

「それはそうですが……」

「でしょう?皆、直ちに街道の逸れてた脇に野営の準備をしましょう。焚き火を絶やさない様にし、二人ずつで火の番をし、残りの者は睡眠を取りなさい」

「お、お待ち下さい!二人ずつですと、姫様もその一人に入る計算になります」

「そう言っているのです。姫とは言え、今は一緒に居る仲間。守られてばかりではいられません」

「し、しかし……」

「口答えは許しません。これは命令です。直ちに準備して下さい」

「は、はっ!」


 メイドさんを含む全員が片膝を着いて頭を垂れる。

 念の為僕もそれを真似て同じ様にしておきました。

 後から何か言われるのもなんですしね。





 姫様の命もあってか、すぐに野営の準備が整い、火の番兼辺りの監視の順番を決める事になりましたが、これもまた一悶着ありました。


 姫様が提案したのはチンピラ騎士とイルミさん・空気な騎士と空気なメイドさん・ロビン君と一番偉いっぽいメイドさん・僕と姫様の振り分けでしたが、ロビン君とイルミさん以外から猛反対。

 しかし、姫様の「では、タケシ様よりも魔獣の気配を敏感に察知出来る者が私と同じ時間としましょう。いかがですか?」と言われてしまい、ぐうの音も出ず、結局姫様の案が採用される事になりました。


 最初の二人が火の番をしている間、他は睡眠を取る事になりました。

 辺りに丁度良い木が無いので、本日は少し離れ他所で座りながら休息を取る事にしました。


「まぁ、どちらにしろ今日は眠るつもりはありませんがね」


 昨夜感じた違和感と嫌な予感は相変わらず残ったまま。

 その後も何も起こりはしなかったが、現状、警戒するに越した事は無いでしょうし。


 さて、どうなりますかね…………。






 最初の時間は何事も無く終わり、次の二人に交代しました。

 僕の事を露骨に嫌悪はしていないが、少なくとも邪魔者・厄介者と共通して感じていると思われる二人の番。


 騎士はキョロキョロと絶えず周りを見回しているが、どうも索敵している感じでは無い。


(僕を探しているんですかね?しきりにメイドと話しているけど、小声なのか内容は聞こえないし、この暗さだと火の近くとは言え流石に唇も読めませんね)


 同じ様な行動を何度か繰り返した後、騎士とメイドさんはその場から離れ、暗闇に溶けていく。


(普通に考えたら用を足しに行った……。でも、警戒中に二人でその場を離れるなんて、そんな事をしますかね?いや、有り得ないでしょう。だったら仕掛けてきますかね?)


 そう思案している僕の耳にモスキート音に近い甲高い音が聞こえた。


(これは…………拙いですよ!あの音の周波数…………あれは!)


 その音が絶え間無く響いた後、この辺り一帯に沢山の音が近付いてきました。


(やっぱり、あの音。犬笛ですね!)


 犬笛とは、ある特定の周波数の犬にだけ聞こえる音を出し、それによって指示を出す道具。

 多分、それに似た道具を使い、辺りの狼達をここに呼び寄せているんだろう。


(それにしてもあの二人、命が惜しく無いんですかね?姫様諸共食い殺されますよ?…………ん?この匂い…………あぁ、成る程)


 風下に陣取ったのは正解でした。

 あちら側から狼より大型の(多分熊か何か)生き物の匂いが流れてきました。


(忌避剤として二人の周りに振りまいたんでしょうね。それによって二人は安全圏から高みの見物ですか…………)


 こちらに迫ってくる大量の狼。

 一人で逃げる分は簡単ですが、生憎今はそうはいきません。






 はぁ…………。

 どうも僕が女性に関わると碌な事になりませんね、今も昔も……。

 普通の人では犬笛の音は殆ど聞こえません。って言うのは嘘で、実際には人間の可聴領域です。

 聞こえないタイプもあるみたいですが。


 今回は便利な言葉「ファンタジーなので」を免罪符に、人間には聞こえないが、特殊な環境にいた主人公には聞こえている犬笛って設定でゴリ押します。

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