ゴーシィ、竜の巣穴を探検する〜異世界生活百五十一日目〜
皆さん、おはようございます。
昨日は結局巣穴の周りで木材を集めて火熾し、新たに火竜さんが狩ってきた鹿の様な生き物を食す事が出来ました。
皮を鞣してなんちゃって水筒も出来ましたし一石二鳥。
「さて……今日はこの巣穴を探検しますか!」
探検って言うよりも巣穴なら家捜しかな?
勿論本人……じゃなくて本竜の許可を得ています。
先ずは手始めに、昨日作った石のツルハシでこの壁の一部を採取してみましょう。
「oh……一発で木の柄が折れた……」
幸先不安。
結局、火竜さんが巣穴全体が崩れそうな威力の尻尾の叩き付けを繰り出し、壁の一部がひび割れたのでそこから何とか欠片を入手。
あの強度の鉱石に亀裂を入れる竜も竜だけど、逆に言えばそれでも完全に倒壊しないあの鉱石も鉱石ですよね……。
尚、火竜さん曰く鉱竜なら一撃で粉砕出来るそうです。
竜ってやっぱすげぇや。
さてさて、お次は巣の奥へ。
火竜さんはここから先には進んだ事が無い……てか、進む必要性を感じなかったらしく、初見だそうです。
偶にブラッドスライムが数匹出てくるみたいですが、その度に吐息で煮沸していたみたいです。
あんなに手こずった相手なのに…………。
兎も角、火竜さんがいれば安全に進む事が出来そうです。
ん?竜任せだって?
「そんなの、頼れるものには頼るべきでしょう!」
はい、ごめんなさい。
いきなり大声を出したもんだから火竜さんに苦情が籠もった視線を向けられました。
なんか思った以上に人間臭いな、この竜。
「ん〜?ここは普通の石みたいですね。あそこだけが特殊なんでしょうか?」
奥には洞窟が続いており、時折石のツルハシ(2代目)で壁を叩いてみても硬いが掘れないことは無さそうです。
あの場所が特殊説……あるかもしれません。
ただ、折角ここまで来たのだからもう少し奥まで進んでみたいと思います。
稀に遭遇するブラッドスライムや馬鹿みたいに大きい蝙蝠は逐一排除。
飛行生物対策の手作り弓矢が思ったより万能です。
「ん?風の流れが変わりましたね……。広い場所に出そうです」
長い一本道を抜けるとそこは―――
「あれ?ここってもしかしてあの地下渓谷?」
以前蟻の巣穴から落下して辿り着いた地下渓谷。
そこに瓜二つの場所へと辿り着いてしまいました。
ゴルゾフさん、心配してるんでしょうね〜。
あ、はい、大丈夫ですよ
後ろにいた火竜さんが頭を擦り付けてきました。
多分僕の感情の機微を読み取られてしまったのでしょう。
「方角的には……そっちが日が昇る方ですか。それならこっちに進めば以前地上に出た道に繋がりそうですね。そうなると今回は奥に向かってみましょう」
絶妙なタインミングで方角を教えてくれた火竜さんにお礼を言いつつ、更に奥へと進みます。
やはり同じ洞窟だからかオークもいますね。
探検の食料ゲットだぜ!……ごめんなさい、調子に乗りました。
ついでにオークが持ってた弓矢を拝借してどんどん奥へと進みましょう。
「雰囲気が変わりましたね」
まだ薄暗くて見えない洞窟の先。
明るさ的には街灯の無い夜道くらい?
まぁ、僕は見えますけど見辛い事には変わりありません。
「ただ少し警戒しながら進まなければ……いや、あなたがいれば大丈夫でしょうけど、僕はビビリなんですよ?……痛っちょっと押さないでくださいよ!分かりました、進みますから!」
こんなので怖気付くなと言わんばかりにグイグイ押されて強制的に前進させられました。
貴方は竜ですけど、此方はちっぽけな人間なんですからね!?
とは言えず、黙って従う小心者はここですよ。
「…………あれ?あそこ、明るくないですか?」
確かゴルゾフさんが異世界パワーよろしくな鉱石がぼんやり光ってるとは言ってましたが、あそこだけは明らかに光が強い。
その鉱石が集中してるのか、別の要因かあるのか……うん、後者ですね。
明らかに嫌な雰囲気が強くなっています。
「ふぅ〜……。行きましょう」
意を決して(僕だけ)そこへ近付くとそこには―――
「これは……魔法陣…………?」
竜何匹入るのか分からない広さの空間が広がり、その空間に所狭しと描かれた模様と見た事も無い文字列。
身体中の細胞と脳が警鐘を鳴らし始めました。
絶対に此処に入ってはいけない。
あの空間に踏み入ったが最後、何かが起こる。
流石の火竜も先程みたいに押したりもせず、寧ろ僕以上に警戒をしている雰囲気。
寧ろ殺気が漏れ出していて、人によっては見るだけで死を連想するレベルです。
「どう思います……?」
そんな火竜に問い掛けるも、「分からない」と目だけで返されました。
触らぬ神に祟りなしって正にこの事ですね。
ここは引き返すのが吉。
ですが―――
「虎穴に入らずんば虎子を得ずって言いますもんね!」
僕はその魔法陣が描かれた空間に足を踏み入れました。
少しと遅れて火竜さんも入ってきます。
すると魔法陣が強い光り始めます。
「あぁ……やっぱり僕は好奇心に殺されるんですかね……」
こちらの世界に来て直ぐにも思った事をまた思いながら、僕はその光に包まれながら昨日に引き続き、意識を失いました。




