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ずんぐりむっくり転移者は異世界で図太く生きる〜イケメンじゃなくても異世界で生き残れますよね?〜  作者: まっしゅ@
第五章 転生したけどまたまたまたサバイバル生活!?

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ゴーシィ、叩きのめされる〜異世界生活百五日目④〜

 少しグロテスクな表現があります。


 四方八方から縦横無尽に襲い掛かるロックアープの群れ。


 彼等の事をゴリラと呼びましたが、大きさもゴリラの倍近い3m程、体重も岩の鎧含めると500kgはあるでしょう。

 ちょっと重力とか色んな法則を無視して動き過ぎですけど、事実目の前で飛び跳ねたり横っ飛びしたりしているので現実として受け止めるしかありません。


 そんな重戦車が集団で襲い掛かってくる様はブラッドスライムとはまた違う圧(主に物理)が凄まじく、一手でも間違えれば致命傷は避けられないでしょう。


 そんな敵の攻撃を掻い潜り続ける為にも、最初の一匹みたいに力任せの斬撃を繰り出す訳にはいきません。

 波折を漣に持ち替えて《童ノ戯レ(ワラベノタワムレ)》を使い、なるべくスタミナ切れを起こさない様にしつつ、鎧と鎧の隙間を目掛けて突きを繰り返す。

 出来るだけ致命傷を、それが無理でも動きを止める為に下半身を重点的に狙う事で確実に処理する事を優先していますが、それでも多勢に無勢。

 無理矢理に動かしている脚からは少なくない量の出血がありますし、互いに動き回る中で的確に鎧通しを決め続けるのは至難の業です。

 出血か疲れか、はたまた別の要因で此方が先にミスをするのは明白ですが、それでもやり続けなければいけません。


 最初はこのまま無視して走り抜けようとも思いましたが、彼等が何処まで追いかけてくるかによっては村に迄被害を出す可能性も有りました。

 村に到着すれば加勢してくれる味方が増える事も頭を過りましたが、どれくらい掛かるか分からないし、加勢してくれた方々の無事を保証出来ないので即座に却下。


 結局、村に向かう為に今の選択以外は出来なかったのでしょう。


「それにしてもどれだけいるんですか…………」


 川沿いから山の方迄並んでいるのは分かっていましたが、それにしても数が多過ぎます。

 ある程度間隔を開けており、これ程居なかった記憶があるのですが……。


「他から呼んでいるんですかね?やっぱり他種族に聞き取れない超音波か合図かなんか使っているんでしょうね……」


 ゴールの見えないマラソンって辛いですよね。

 慣れているとは言っても辛いもの辛いし、苦しいものは苦しいし、痛いものは痛い。

 あとどれ位こうしていれば良いのか、寧ろ終わらないのでは無いか。

 そんな考えに脳内を支配されつつあったそのせいか、とうとう致命的なミスを犯してしまいました。


「くっ……!しまっ―――」


 一瞬の意識の緩み。

 ほんの数mmの切っ先のズレ。

 誤差レベルの刃先の角度の歪み。


 気付いた時には時すでに遅し遅し。

 漣は堅牢な鎧に弾かれました。


 相手はそんな些細な隙でも見逃す筈も無く、薙ぎ払われた剛腕が防御する間も無く僕の腹部を的確に捉えました。

 殴られた衝撃は凄まじく、数メートル先の地面へ叩き付けられた後も勢いは衰える事無くまるでピンポン玉の様に跳ねながら、やっと止まった時には最初の地点から10m以上離れた場所でした。


 身体を起こそうにも満足に動かす事が出来ず、全身が痛みます。

 更に力を込めようとすると今度は食道から吐瀉物と血が混じったものが逆流してくる始末。


「がっ……げほっげほ…………。骨は何とか大丈夫……そうですね。ただ内臓のどっかが傷付いてるかも…………」


 もしかしたら背骨とか肩とかに罅程度は入っているかもしれませんが、そもそも全身痛くて何処がどう痛むかが分かりません。

 幸い動く事から完全骨折はしていないと判断しました。


 それ以上にせり上がってくる鉄の味が気持ち悪い。

 無理矢理飲み込もうにも量が量なだけに意思に反して口から溢れ出してきます。


 衝撃のせいか出血のせいなのか判断出来ない目眩を堪えて何とか立ち上がりましたが満身創痍、戦える状態には程遠い死に体です。

 こめかみを一度叩いて《童ノ戯レ(ワラベノタワムレ)》を解除、もう一度叩いて聖母ノ慈愛(セイボノジアイ)を使って自然回復を促しますが焼け石に水でしょう。

 少なくともこの戦闘内で回復する見込みはありません。


 何とか身体を動かし、頭を回転させ始めたところでふと疑問が浮かびました。


「そう言えば…………ロックアープ達が此方に来ませんね……?」


 自分の事ばかりで失念していましたが、僕を死に体にした張本人達がやってきません。

 遠目に見える彼等は間違い無く此方を見ていました。


 もう脅威では無いだろうと油断?

 あの攻撃で生きている事への驚愕?

 弱った獲物を見て悦に浸る嗜虐心?


 気配を探ろうにも集中力が散漫になっており、上手くいきません。

 ただ、時間を与えてもらえるのでえれば利があるは此方。

 呼吸を整え、何とか回復に勤しめばどうにか逃げ切れるかもし―――






「ゴーーーーーシィーーーーー!!」





 不意に呼ばれた名で思わず振り返ると、さっき引き摺られていった筈のゴクウさんが巨体を揺らして走って此方に向かっていました。

「何故?」と問い掛ける暇も無く僕の所に駆け寄ってきたゴクウさんは僕の状態を見て瞳に怒りを宿しました。


「アイツラガ、ヤッタ、ノカ?」


 声は冷静そのものでしたが、その短い言葉に秘められた怒りは気配が分からない今の僕にも伝わってきました。


「それはそうなんですけど……。元はと言えば僕が彼等の縄張りに近付いたせいですから…………」


 今にも飛び出しそうなゴクウさんをなるべく刺激しないように言葉を選びながら伝えました。


「デモ、トモ、キズ、ツケタ。オデ、ユルサナイ。ソレニ、モリ、ダレノ、モノデモ、ナイ」

「ゴクウさん……」


 拙い言葉ながらも、自分の思いを伝えられ何も言えなくなりました。


 僕自身は自業自得として、森は誰の物でも何のは確か。

 だからこそこれ程迄に彼が怒っているのでしょう。

 しかも普段森に居ない彼等が縄張りを主張するのはおかしいのも納得出来ました。

 事実、彼等のいた周りは木がなぎ倒され、草花は生えていませんでした。

 数日の付き合いですが、普段森を大切にする彼の言葉だからこそ余計に腑に落ちたのだと思います。




「オデ、トモノ、タメ、モリノ、タメ、タタカウ。ゴーシィ、ヤスメ」




 そして、その一言を残し、ゴクウさんはロックアープの元へと駆け出していきました。


 僕が止める間も無く…………。

 オデ、サンジョウ!

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