ゴーシィ、三度目のサバイバル突入〜異世界生活百日目⑤〜
明けましておめでとうございます。
今年も一年宜しくお願いします。
新年早々サバイバル突入に加えて戦闘描写もあるので少しグロ表現有り。
あと絶叫多め。
「ギョッ?」
「えぇ〜…………?」
そこにいたのは某魚に意識を乗っ取られたヒト族の博士…………では無く、文字通り魚の頭部を持った二足歩行の生物でした。
マーフォーク族の男性……は女性と同じく上半身人間で下半身が魚の様な見た目だから違う筈。
って事はこの生き物は…………サハギン?
じゃあヒト族じゃ無い?
二足歩行だからもしかしたら動物寄りのヒト族の可能性も?
もしヒト族なら意思疎通が出来るかもしれません。
「あの〜……言葉分かります?僕に害意は無いのですが…………」
物は試しにと声を掛けてみます。
「ギョ?」
「ギョギョ!」
「ギョギョギョっ!?」
いや、絶対さ◯なク◯さんいらっしゃるじゃないですか。
それよりも何か相談していますね。
これはもしかしたら―――
「ギョーー!」
一匹が一際大きな声で叫びましまた。
すると川からゾロゾロとサハギン達が現れます。
その数三十。
最初にいた者も含めてその手には柄の長い銛、その切っ先は僕に向けられていました。
「銛って魚が突く側じゃなくて突かれる側ですよね?」
ジリジリとにじり寄ってくるサハギンの群れから逃げる様に少しずつ後退していきますが、もし火竜が追ってきていたらと考えると森の中にまた入る訳にもいきません。
「水中生物だから鰓呼吸のみで肺呼吸が苦手で足が遅いとか…………」
サハギンは一斉に此方に向かって駆け出してきました。
「そう都合が良い事有りませんよねぇぇぇぇ!…………ってかお前等に都合良過ぎるだろうがぁぁぁ!」
あぁやりますよ、よってやりますよ、こうなったら!
腰に携えた漣を抜き放ち、身を低くして真正面からサハギンの群れへ突っ込みます。
普通であればリーチの短い打刀では振りですが、一度懐に入れば此方のもの。
更に相手は味方を攻撃出来ない為、付かず離れず動けば行動を制限出来ます。
とは言え槍衾……銛衾に突っ込むのは勇気がいるので、習いたての身体強化を施します。
今迄よりも強く踏み込んだ一歩で地面を滑る様に一体の懐に飛び込み、その勢いを殺さぬ様に胴薙一閃、隣にいたサハギンの持つ此方に向けた銛諸共斬り飛ばしました。
更に返す刀で反対にいたサハギンの首を落とし、残った胴体を奥にいる相手に向けて蹴り飛ばして距離を取りました。
背中側から銛を斬られたサハギンが穂先が無くなっているのも厭わず突っ込んできましたが、それを紙一重で避けて心臓を一刺しし、この程度だとまだ暴れる可能性があるので、そのまま力任せに上半身を斬り上げました。
今の一瞬で三体を斬り伏せたのを見たサハギン達は僕から距離を取っていました。
足元にはサハギンの死体と血液、魚類独特の生臭さが漂っています。
これ……臭い取れますかね?
臭いはさておき、僕はこの後どう動くべきか思案していました。
このまま全滅させるのも手ですが、いかんせん数が多い。
時間を掛け、更にこの臭いとなれば他の魔物や魔獣が寄ってくる可能性もあります。
火竜が追ってきたら最悪ですし。
かと言って逃げるにも前方にはそこそこに幅がある川、後方は火竜がいるかもしれない森。
村の方角が何となくしか分からない現状、変に動いて村を通り過ぎてしまったら村へ帰るのは絶望的。
しかも火竜に見付かって連れて村になんて行けば全滅が必須になってしまいます。
このまま村に戻る選択肢はありませんね……。
と、すれば現状取れる手段はただ一つ。
「うおぉぉぉぉぉ!!」
突然上げた大声で周りのサハギン達が怯んでいる隙に僕は川目掛けて走り出しました。
いきなりの事で一歩遅れた彼等ではもう追いつけない距離。
「どっっおりゃぁぁぁぁぁ!」
川辺りギリギリで踏み込んで思いっ切りジャンプ。
目測で十三メートル程度であれば身体強化した僕なら飛び越えられる筈。
あれ?確か走り幅跳びの世界記録九メートルとかだったから世界記録なのでは?
僕の跳躍が頂点に達し、川の半分に差し掛かりました。
後ろのサハギン達は急いで川に飛び込んでいますが、もう追い付かれる事は無いでしょう。
そう思った矢先の事でした。
左脚に焼ける様な鋭い痛み。
それと同時に川へと引っ張られる感覚がありました。
そしてそのまま水面に叩き付けられ、川に沈められてしまいます。
水中で咄嗟に足元を見ると、脹脛に銛が刺さっていました。
油断した、まだ川の中にまだ潜んでいましたか…………。
その銛の持ち主は僕を仕留める為に仲間が来るのを待っていますが、そうは問屋が卸しませんよ。
「ギョ!?」
水中で踏ん張りが聞かず動き辛いですが刀を仕舞い、脹脛刺さった銛を掴んで全力を込めて―――
「ゴポバァァァ!!(おらぁぁぁ!!)」
力任せにへし折りました。
よし、これで脱出成―――
「ッペ、バァァァァァァッ!(って、うわぁぁぁぁぁっ!)」
が、しかしそれと同時に水面へ上がろうとしましたが、思ったより水流が速く、僕はそのまま下流へと流されてる事となりました…………。
「ゲホッ!へほっ!あぁ…………水飲み過ぎて気持ち悪い……。お腹壊したらどうしましょう…………」
流されながら必死に泳いで何とか岸に辿り着きました。
多分元々渡ろうとしていた対岸だと思いますが、流れで上下左右が分からなくなってしまったので定かでは有りません。
「…………とりあえず、脚の止血をして服を乾かしましょう……」
悲しいかな、流石にこの世界に来て森・洞窟・森と、三度目の遭難なので、思ったより素直に現実を受け入れる事が出来ました。
「いや、決してしたくてしてる訳じゃないんですけどねっ!?」
こうして、僕の三度目のサバイバル生活が幕を開ける事になりました。
試しに魔物の声を始めて言葉として表現してみました。
今迄鳴き声とか文字として起こすのが苦手だったのですが、今回はどうしてもこのネタがやりたくて。
何気に絶叫も多め。
反省はしているが後悔はしていない!
え?新年早々やるネタじゃないって?
細けぇ事は良いんだよ!




