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三月九日 3

 葬儀場から帰る足で、ふとした思い付きであのマンションに寄ってみようと思った。未練がましくマンションの下の通りを調べてみたが…もちろん銃の影なんてどこにもない。あの夜と同じように…息を少し切らせながら階段を上った。踊り場から見える景色は、階を増すごとに俺から離れていく。…人の世から、俺は一歩ごとに遠ざかっている。


 鉄製の重いドアを開いた。冷たい風が隙間から溢れるように流れ込んでくる。ドアが向こう側から押される…あの時は気づかなかったけど、この押さえる力は、自殺しようとする俺を押しとどめようとしていたのかもしれない…そう思えなくもない。


「ここで…全てが始まったんだよな」


 高くない太陽の日を存分に受け止めている屋上は、静かだった。普段の俺達の生活と同じ空間にいながら、高度によって隔離されている場所。人の気配は、俺のほかに誰も。…どこか、寂しげだった。それを象徴するものは何もないけど、圧倒的に広がりを見せる空間にポツリといる俺を、孤独以外になんと表現すればいいだろう。


 何もかもが始まった。連続殺人も、俺の幽への疑惑も。…あの夜、何が起こったのか…未だにわかっていない。この屋上へ入るためのドアは重く、閉める時には大きな音を伴う。なのに、閉めた気配もなく消えたあの少女。俺は彼女のせいで自殺を断念し、死から逃げるために銃を捨てた。そしてその銃が、何の因果か連続殺人の発端となった。

 

 まるで俺が死から逃れた事への当てつけのように、俺が頭に受け止めるはずだった銃弾は、すでに三人の命を奪っている。できすぎてる。偶然にしては、あまりにも劇的だ。



 仕組まれていた?

 バカな。

ありえない…でもあの幽ならわからない。



 …あいつの言動は明らかに死が起こる事を知っていた。予言なら、ありえない事だ。でも、当事者なら話は別だ。今もどこかで俺を見張っているのか。そうだろう、あいつならやりかねない。


 俺は、死から逃げてはいけなかったのか。生きようと、思ってはいけなかったのか。

 わからない…わからないわからないわからない。疑念を雲のほとんどない空に投げかけても、答えは落ちてこない。…俺はどうすればいい。俺は、何ができる?


 たくさんの人を悲しませてしまった。…俺のせいで。俺が死のうとなんか最初から思わなければ、こんな事にはならなかった。俺の弱さのせいで、たくさんの人の命が狙われ、失う事で悲しませてしまった。もう、三人も。その人達が生きてきた人生、またその人生に関わってきた人達の人生をぶち壊しにしたんだ。…どう落とし前をつければいい? できるわけない。…俺の一生をかけたところで、どうにかできる問題じゃない。


 屋上の手すりに手をかけ、そこから下界を眺めた。ここから落ちれば、楽になれる。ここは地(この世)から遠い場所で、空(あの世)に最も近い場所だ。俺の手は、伸ばせばもう、死にべっとりと浸かり、沈んでいってしまう事もできる。…苦しみを、受けなくて済む。たった一瞬でだ。ちょっと落下する恐怖はあるが、でもほんの数秒。簡単に死ねる。それだけで楽になれるのに。


 怖いのとは別の感情が、心を占めていた。


 何で、こんなに未練を感じるんだろう。それは気づいてしまったからだ。そこまで絶望する世界か、と。…思い出が、捨て切れない。可能性が捨て切れない。諦め切れない。まだ、心のどこかでどうにかなるんじゃないかと、自分勝手な希望的観測を信じている。


 …ここに答えはない。俺がいなければならないのは、下界だ。人がひしめき、往来し、殺人犯が潜む、コンクリートの森だ。何も変わらないのなら、長居は無用だ。


 信じてやる。誰よりも。…本当に自分の事を信じられるのは、自分しかいないんだから。







 マンションから出た時、聞き慣れた声が隣からかけられた。


「あ、隆史君、偶然ねぇ」


 白々しい演技…山本刑事のおかげでもう慣れたが、探偵であるこの疋田さんも同様。それともたんに俺が疑り深くなっているだけだろうか。…正体は俺にバラしているわけだから疑う必要は全くないのだけれど。それでも少し身構えてしまう。


「…何ですか」


「このマンションで何してたの? 知り合いでもいるのかしら?」


 マンションを見上げながら聞いてくる。ぎっくり腰になるぞ。


「…まぁ別に、特に何も」


 唐突の質問にはぐらかすしかなかった。…答えにくい質問だ。景色を見に行っていた…でも説得力ないよな。でも本当の事だけど、答える必要があるのかどうか。ここから拳銃を捨てたので―――なんて言えるわけがない。


「隆史君、今暇? …暇ね? ならちょっとついて来てくれないかねぇ」


「何をしにですか?」


 まぁまぁ、と疋田さんもはぐらかしながら俺の手を引っ張る。話、か。事件に関係する事なんだろうな。


 疋田さんと話をしながら目的地に向かった。葬儀の様子はどうだったか…久上さんの調子はどうだったか、とか。目的地に着いてどうするのかという質問には、どうにも近くのファミリーレストランである人と待ち合わせをしているとの事。…なのに、ずいぶん大回りをした。最短距離でいけばマンションから降りて数分のはずなのに、疋田さんは信号をぎりぎりで渡って反対側の道へ行ったり、デパートの中に入ってまたすぐに出たり。忙しく複雑な道を選んで進んでいく疋田さんには何か考えがあるらしいように思えた。


「おや…連れて来れたんですか、疋田の婆さん」


 ファミレスの禁煙席の一番端に座って俺たちを待っていたのは山本刑事だった。テーブルにはコーヒーカップが一つ。疋田の婆さん…この人も疋田さんの知り合いなのか。俺と疋田さんは山本刑事と向かい合うようにして座る。


「貴方ね、十ちょっとしか違わないくせに婆さんはないでしょ」


「現役は引退したくせに何言ってるんですか…でも、また貴方と組めて幸せですよ」


 師匠に礼をするように(うやうや)しく頭を下げる山本刑事。毒づきながらも顔はうれしそうで十歳ほど若返ったように見えた。


「冬見君を連れて来てくれたという事は…ちゃんと撒いてきてくれたんでしょうね?」


「貴方誰に言ってるの…まだ一年くらいの新人でしょう? あの二人…ちょっと信号で引っかかったくらいでうろたえて。教育がなってないねぇ」


「すみませんね。…後で言って聞かせておきます」


 …そういえば、昨日リンドウで疋田さんが、常時二名の刑事が俺を見張っていると言っていたな。という事は、俺を変に連れまわしたのは刑事達の監視から俺を引き離すため…?


「何か頼みますか? 奢りますよ」


 山本刑事の好意に甘えて、俺はウインナーコーヒー、疋田さんはチョコレートパフェを注文した。ウェイトレスがテーブルから離れていくと、山本刑事はテーブルに少し身を乗り出すようにして俺に言った。


「…で、冬見君。察しのいい君なら分かるんじゃないかな…と思ってるんですけど」


「は? 何をですか。よく意味がわからないですけど」


「山本刑事、昨日私の事バラしたばかりだから…ちょっとそれは無理があるんじゃない?」


「そうなんですか…仕方ないですね、最初から説明しますか」


 ちょっと期待はずれ、といった具合に肩をすくめて見せる山本刑事。この人に悪意があるのかどうかは知らないが、俺をバカにしているように見えるのは気のせいだろうか。


「では冬見君。…最初の「久上由利」さん殺害事件の日の前日…その日の午後十一時頃、どこにいましたかね?」


「…何でそんな事を聞くんですか? 事件とは関係ないはずですよ」


 …嫌な予感がする。何でそこまでピンポイントに…?


「おやぁ…冬見君らしくないなぁ。何を慌ててるんですか? 僕はただ冬見君のスケジュールを聞いてみてるだけなんですよ? で、どうなんです?」


 …答えられるわけがない。自殺しにマンションの屋上に行ってました…などと。それに問題の拳銃の出所が俺だとわかれば、変に疑われるに違いない。


「…あのマンションとか?」


 言ったのは疋田さんだった。俺ははっとして彼女の方を向いた。…彼女の表情から、感情が消えている。山本刑事の方に視線を戻した…今気づいたが、山本刑事も無表情だった。


 俺は俯いて、視線でテーブルの傷をなぞっていた。いい嘘が思いつかない…! 焦って、何を口走ってしまうかもわからない今、うかつに口を開けばどんなボロを出してしまうか。


「…う~ん、わかってないみたいですねぇ。冬見君、もうバレバレなんですよぅ? 疋田さんが貴方に会った時、どこにいましたか?」


 得意そうに言う。鳥肌が一気に全身を駆けた。…俺が疋田さんと会った時、どこにいたかだって? …まさか。


「あんまり堅くならないでいいわよ? …昨日も言った通り、私達は協力関係。でもね、仲間内で秘密事はよくないと思わない? …お互いを信じるには、秘密をしっかり話してもらわないと」


 言いながら、疋田さんはパフェにさくりとスプーンを突き刺す。


「…ふふふ。まぁまず友好の証に情報交換からいくとしますか。じゃあ僕から…冬見君は、伊勢光彦という男を知ってますかね?」


 心臓が、跳ねる。俺の表情変化を一つも逃すまいと顔を見つめてくる山元刑事。


「伊勢は十年前から私達が目をつけてきた銃の仲買人(ブローカー)で、元殺し(・・・)です。証拠を全然残さない奴なんですけども、この町に潜伏しているという情報をもとにずっと探していたんですよ。そいつの居場所を昨日やっと突きとめました」


「へぇ…やるじゃない。どこにいたの?」


「VAINってバーのママをやってます…あのオカマ、堂々と店を構えているなんてね」


 …オカマ。間違いない。あの男だ。


「あそこの通りで事件の前日の夜に見たと言う証言を十件ほど手に入れました。冬見君、貴方の服装とまるで一緒の青年をね」


 俺は、覗き込んでくる目から視線を逸らす。山本刑事に続いて疋田さんが、


「ふふふ、じゃあ次は私ね。聞き込みをしてたらねぇ、興味深い証言があったの。事件の前日、マンションの屋上から何かが落ちてきた…道路を挟んで向こう側の歩道でおでんの屋台をしていた老人の話よ。金属らしき物が地面に当たった音だそうよ。一度、マンションの一階の花屋さんの雨よけにバウンドしてからの、ね。今日、冬見君が出てきた、あのマンションよ。まぁすごい偶然。…このパフェおいしいわ、糖尿に気をつけないと」


「そうですね」


「そろそろ本当の事を話してもらえませんかねぇ…久上さんのためにも」


「…待ってください。なぜ久上さんの名前が出てくるんですか」


「疋田さんから聞きました…何やら、彼女を助けたがってるとか」


 意味ありげにニヤニヤとする。…そういう勝手な判断は止めてほしい。


「どこまで知ってるんですか?」


「さぁ? 冬見君が話してくれるなら、教えましょう」


 話すべきか話さないべきか、俺はまだ迷っていた。二人は俺が銃の最初の所持者であることを確信しているだろう。おそらく問いただされれば、あっという間にけりがついてしまう。


 でも、話してはいけないような気がした…それは幽の事だ。あいつが俺の前に現れたわけが、わからない。おそらくだが、この二人はあいつに会った事がないだろう。なぜならあんな発言をする奴なら真っ先に疑われて当然だからだ。…つまり、あいつは俺の前にしか現れていないことは明白だ。


 なら、疑問が残る。なぜ俺の前に現れたのか。それはきっと、俺にだけ用があったからだ。この事件の発端にいた幽は、俺にだけ何かを伝えようとした。…俺じゃなきゃいけなかった…俺以外の誰かに聞かれてはまずかったんだ。


 俺は死に場所を与えられてしまう。主導権は幽にある。監視されていると考える事もできるだろう。死に場所を与える。つまり殺す。そう宣言した幽は、俺を殺害する手立てが何かしらあるという事だ。


 俺にだけ言った、俺だけではないと言えなかった予言。…それは俺に課した規則だ。それを勝手に破ってしまっては。


「わかりました。話しますよ。その代わり、頼みます」


 背に腹は代えられない。でも黙っておく事はできる。…あれは俺だけの、俺と幽だけの秘密だ。…あ、久上さんも知ってるか。彼女は、大丈夫だろう。ちゃんと理由は知ってもらわないといけなかったし。


 …最初から、幽の情報だけは一切を含めずに説明した。自殺しようとした事、銃を売ってくれると聞いて買った事、死ぬのが怖くなって銃を投げ捨てた事。山本刑事や疋田さんは何も言わず最後まで黙って聞いていてくれていた。中には法律でも許されない事が含まれている。怒鳴られ頬を引っぱたかれるのも覚悟した。…だけど、二人の反応は意外にも、


「…よく、踏みとどまれたな」


「貴方って子は…何で相談してくれないのっ…バカねぇ、いつもそばにいるじゃない…」


 そう言って疋田さんは俺の顔を抱いた。久しぶりだな、こうされるの。


「そうとなればなおさらですなぁ冬見君。さぞ犯人もイレギュラーにてこずってくれるでしょう…まさか自分が獲物から狙われる事になるとは。ぜひ協力してほしい」


「いいですよ。その代わり久上さんをよろしくお願いします」


「じゃあ、これで同盟は結成、いいわね?」


 山本刑事は疋田さんとウインクを交わした。それからの話し合いは俺の想像以上だった。


「奥山刑事の事件だけど…昨日、昼間にちょっと自宅に忍び込んできたの。屋根裏も探したのよ、腰が痛くなってねぇもう…」


 平然と言う。山本刑事も特に気に留める様子はない。なんとなくこの二人のやり方がわかってきた気がする。ようするに、犯人を捕まえるためならば何でもありという事だ。

 疋田さんはバックから、折りたたんであるA4サイズの書類、たくさんの住所が書いてある紙、ゴムでまとめてある写真の束を取り出し、テーブルに広げた。俺と山本刑事は覗き込み、


「この写真は?」俺が質問する。


「被害者予定の人物をあらかた調べといたの。一応久上紗枝さんの関係者だけだけどねぇ」


 久上さん、神崎先生、久上さんのお父さん、制服が久上さんや円ちゃんと同じ所からおそらくそれぞれのクラスメイト。他にも教師らしき人物が数十人、山本刑事、そして俺だ。全部で十枚近くもある。


「さすがですなぁ…疋田さん、警視庁が欲しがったわけです。わずかな期間によくもこれだけ割り出せたもんだ」


 久上さんの関係者だけでもこれだけ。でも、それでもかなり効率がよくなる。この街全員を犯人から守ろうとしていた当初の難易度から比べれば格段にイージーモードな気分だ。


「すぐに、署の方に連絡します。…いや、住所まで調べてくれてるなんて、重ね重ね…」


「まぁ待ちなさいって。写真の方はついでなの。あくまで本命はこの忍び込んで見つけた書類。やっぱり私の読み通り、奥山は拳銃密輸の関係者だったわ」


「…そうですか。貴方が言い出した時から覚悟はしていましたがねぇ…」


 明らかな落胆を見せる山本刑事。…俺の方は驚くばかりだ。


「奥山って…あの奥山刑事がですか!?」


「そうよ。…隆史君は知らないだろうけど、私達が住んでるこの町は昔から拳銃密輸で有名なのよね。私の知る限りでは、十年前からそうだったわ。…この書類を見て頂戴。今までの拳銃密輸の予定表よ…しかも持ち込まれた拳銃の丁数まで書いてある。山本刑事、これを見て何か気づかない?」


「…ちょっと貸してくれませんか?」


 山本刑事は疋田さんから紙を受け取ると、表に目を走らせる。…どんどん、驚愕と憤怒に表情が変わっていった。


「…バカな! これが正しいというのなら、僕は道化だった事になるじゃないですか!」


「そうね…まさか内部から操られていたとは思わないわよね。つまり、貴方が今まで解決してきた事件は全て、奥山刑事によって掴まされてきたスケープゴートだった。…数多い事件に埋もれて、本命の取引は着々と成功していっていた。見てみなさいよこの数字…貴方が解決してきたと思っていた事件はどれも百丁二百丁が関の山だけど、先週のこの取引はこれだけで貴方が今まで押収してきた銃の約二倍の四千丁よ。以前にもいくつかあるわ」


 数えればきりがない。何より桁が違う。ひどいものだと一万丁近い。…そんな数の銃がこの町に積荷として下ろされていたというのか。


「この町から日本全国へ銃は流されていってるわ。…言い換えれば、日本にある違法の銃のほとんどがこの町の港から広がっていると言っても過言じゃないもの」


「…そんな事が可能なんですか? 警察の目を盗んでそんな事…」


「冬見君、奥山なら…確かにできるかもしれん。あいつが作っていた人脈は、そういう意味もあったのかぁ…上が異常にあいつに好感を持っていたというのも、密輸を成功させるためというそういう狙いを念頭に置いた上でのあいつの策略にはまっていたのかも。本当に優秀だったから…そんなに難しくはない。容易でもないが、あいつには出来たはずだ」


「だけど県警は吉永刑事がいるから危険…動きやすさを求めるなら県警以下でないといけなかったはず。そして奥山刑事はあえて貴方のいる署を選んだ…貴方も吉永刑事と並ぶかそれ以上に危険だからねぇ、近くに置いて、完全に貴方をコントロールする必要があった」


 淡々と言う。信じられない…いかにもキレ者の刑事に見えたあの人がそんな悪党だったなんて。でも、書類という証拠を目の前にすると、それも事実として受け止めなければならない。…でもおかげで、考え方の幅が広がる。


「疋田さんの話が本当にその通りだとするなら、奥山刑事が殺されたのは、その密輸組織が絡んでるかもしれないって事ですか?」


「その通り。今までの殺人は久上さんが中心にいると思っていた…でももしかすると、密輸組織に関わってしまったがために殺されてしまった。そういう見方もできるってわけ」


 なるほど…確かにそうなれば事件の色はガラリと変わる。無差別に思えた…久上さん一家に恨みのある人が殺されていく連続殺人だった事件が、拳銃密輸組織による関係者殺害事件になる。


「久上さん宅がどういう風に関係してるって言うんですか? その拳銃密輸組織に」


「まだそこまでは、ね。…でも親類を洗っとくのはいいと思うわ。私が撮ってきた写真だけど、拳銃密輸に関しても一致するのよ? 例えば学校関係から密輸に関して知ったとすればクラスメイト、学校関係者辺りね。娘が親に話した…そう仮定すれば親も殺されて当然。ついでに姉妹だからどちらも」


 そうなると神崎先生や山本刑事、俺は少し遠くなるな。やっぱり事件は久上家が中心になっているのだろうか。…だいぶ多面形になってきたな、この事件は。


「私からはそれくらいだわ。何か、他にあるかしら?」


 俺と奥山刑事は首を横に振った。それを見ると満足そうに、


「頑張りましょうねぇ…せっかく私が出てるんだから、ちゃんと結果は出したいもの」


 俺達の事件の話はそれでおしまいとなった。勘定は山本刑事持ちだから…そのまま昼食もご馳走になった。俺はハンバーグ定食を注文した。…食べ終わって勘定を済ませた山本刑事はレシートを財布に直しながら、


「冬見君、今日の九時から少し付き合ってほしいんだけどね」


「いいですよ。九時ですね。どこで待ち合わせますか?」


「リンドウでいいよ。…あそこに行くのも久しぶりだからなぁ。夕食も一緒に済ませよう」


 疋田さんは、俺を尾行していた刑事達に私や山本刑事と接触していた事を知られないようにするために先に店を出るように言った。


「がんばってねぇ」


 会釈をすると、俺は二人を残してファミレスを後にした。




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