災禍の跡地と貪欲なる獣12
バンダースナッチの頭は地面に落ちる前に霧散し、残された身体は動きを止める。
「これで終わり、ってなわけないよねぇ……」
直後、バンダースナッチの身体は拘束から抜け出し立ち上がるが“二本足”ではなく“六本足”でだ。ボコボコと切断面の首が泡立ち切り落とさ断面から鋭い牙を持つ狼の頭が生える。
『Gruu………!!』
それを皮切りに岩肌の様な外殻が生物的な霧の毛皮に変化し、足は肩の腕が変化した六本の足で立ち、顔は縦に裂けた鋭い瞳孔を持つ赤い目が無数に減ったり増えたりを繰り返しる。
「やっぱり有るよねぇ第二形態ッ!!」
これからは先程よりも攻撃が苛烈になる、そう考えたアリカはバンダースナッチの小さな動き一つでも逃さぬように注意深く観察する。だからだろうか、
「ッ!!」
『・・・ッ!?』
──バギィ!!!!
バンダースナッチがを大顎を開き超高速で繰り出した
その突進をアリカは躱す、が反応が一歩遅れたトリニティは躱す事ができず何とか結界で防御姿勢をとるが、いままで完璧に攻撃を防いでた結界がバンダースナッチの牙に音を立てて貫かれたのだ。
『─Gehyaaa♪』
バンダースナッチは煩わしい結界を貫通した事を満足げに鳴くと舌舐めずりをしてトリニティを見据える。
「まっずいなぁ……!!」
アリカは対策を考えながらバンダースナッチの妨害を続ける。
(下半身の馬力と鬼散の貫通力を合わせた攻撃、なら対処法は──)
「トリニティ!!、バンダースナッチの足場を操作して出来るだけ加速を殺して!!あと回避は横方向にすれば突進は活かせなくなる筈ッ!!」
それを聞いたトリニティは頷くと地形を操作して自身とバンダースナッチの間を凹凸だらけにする、アリカはそこに火炎瓶を撒いて妨害を重ねる。
『Griii!?』
そこに突っ込んだバンダースナッチも堪らず速度を落としながらトリニティに攻撃を仕掛ける。トリニティは結界を使わず横に避け、カウンターの袈裟斬りを放つが尻尾器用に使い防がれてしまう。
『Giiiaa……』
『・・・・』
両者共攻撃を防がれ仕切り直すように離れて睨み合い緊迫した空気が流れる、そこに……
パリンッ!!
『Gru……!?』
『・・・ッ!?』
視野外から火炎瓶をバンダースナッチの顔面に当てる空気の読めない、いやあえて読まない部外者が一人。
トリニティも『マジで!?』と驚愕した様に私をみてくる、だってしょうがないじゃんアイツまるで私が居ないかの様に無視してるから思わず──
「──イラッときちゃった」
花の咲く様な綺麗な笑顔だが暗い怒りと殺意の感情が漏れ出ている。バンダースナッチは邪魔者を無数に有る目で睨みつけるがアリカはそれに怯まず更に煽る。
「さっさとくたばれクソ霧野郎」
アリカは相変わらずの笑顔で親指を下に向ける。バンダースナッチは意味は分かってないがなんとなく侮辱された事は分かったようで咆哮を上げる。
『Gruaaaaaaaaaa!!!!』
咆哮と共に毛が硬質化し赤い結晶となって矢の雨の如く射出し降り注ぐ、トリニティは結界を使い矢の雨を防ぐがアリカは──
「──はっ、こんなもの」
アリカはロングソードを構えて自身に向かってくる結晶を斬り落とす、身体を傾けて躱す、弾いてずらす、魔法で相殺、と降り注ぐ結晶を対処しながらバンダースナッチに向かって歩いていく。
「邪魔」
斬る、弾く、躱す、ただ淡々と作業の様に淡々と、アリカはゆっくりと歩きながら斬ってゆく。
「狙いもクソも無い弾幕が当たるわけないでしょ?」
『Gruuaa……!!』
バンダースナッチはアリカを初めて警戒し始めるが遅かった、その時には矢の雨を防ぎ斬った目アリカが目の前まで接近する。
「その真っ赤な目、狙いやすいなぁ!!」
そしてバンダースナッチの赤い瞳に深々と剣を差し込む、バンダースナッチは苦痛から暴れ出すが、
「おっと、暴れないで!!ジャイアント押さえつけて」
アリカの指示を聞いたジャイアントは腕をバンダースナッチの首に巻き付けて抑え、それを援護するようにトリニティが地面を腕に変化させ体を押さえつけてる。
「よし、その目掻き出してやるッ」
アリカは突き刺さった剣をグリグリと捻り、もう片方の短剣で滅多刺しにする。
『Gaaaaaaa!?!?』
「そろそろ拘束も解けそう、なら……ファイヤーランス!!!!」
拘束が解けそうになったバンダースナッチからアリカは剣を引き抜く、そして傷に最大火力の魔法を放って距離を取る。バンダースナッチの目は閉じられ、閉じた目からは血によく似た赤い液体が流れ落ちる。
『Guugaa……!!』
「どうやら目の一つは潰せたみたい」
バンダースナッチは苦痛に苦悶の鳴き声を漏らしながらその犯人のアリカを睨みつける。
「怒ってるね、まぁ目を潰されたら誰でも怒るか……」
『・・・・』
アリカは自分の剣に視線を向けて苦い顔をする、黄金の刃には小さな、だけど確かに亀裂が走っている。
「これ、壊れる前に決着つけないと……剣が」
はぁ、と一息吐いてバンダースナッチに剣先を向ける、まあ何とかするしか無い。
・
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頬を巨大な足が掠め、小さな傷から血が一滴垂れる。
「ッ!!、猫パンチならぬ犬パンチって感じィ!?」
更にもう片方の足が踏みつけようと振り下ろされるがアリカは華麗に避け、すれ違いざまに切りつける。
『Guuu……!!』
「浅い……っ!」
目に傷付けてから10分ぐらいだろうか?、バンダースナッチは今なお倒れずアリカに憤怒の感情を向け狙い続けている。
「はぁ、はぁ、はぁ………」
『・・・・ッ!!!!』
トリニティがアリカを援護する様に攻撃を仕掛けるがバンダースナッチは回避に専念し、躱しきれない場合はダメージが最小限になるよう立ち回っている。
「ちっ……!!」
(アイツ私の攻撃は無視して自身に明確なダメージを与えるトリニティの攻撃だけ避けてる、私の攻撃で隙を作ってトリニティに攻撃させる戦法が封じられてるなぁ……まぁバンダースナッチも馬鹿じゃないから対策ぐらいはするか)
バンダースナッチは体勢を低くし、それを見たアリカは懐から短剣を幾つか取り出して足元に投げる。短剣が着弾すると泥の怪物が生み出されバンダースナッチの足に絡み付く。
『Gruu……!!』
「はっ、不満そうだね?御自慢の突進を封じられたのそんなに不快なの?」
(よし、上手く行った……厄介な突進を一回でも封じられたのは良い、さてどうしようか……今の狼形態じゃ素早すぎてトリニティの攻撃が当たりそうに無い、トリニティもどちらかと言うと防御寄りの性能で攻撃が得意じゃ無い、攻撃力“だけ”なら私を軽く上回るけど攻撃を当てる“技術”がなって無い)
「力任せに振り回せば当たる訳じゃないだよなぁ……」
(どんなに力が強くても当たらなきゃ意味が無い、トリニティは簡単な剣術擬きの技を使ってるけどホントに剣術とすら呼べない代物だ、使うべきじゃ無いタイミングに用途の違う技を使ってる、だから知能の無い力任せなバンダースナッチにでも簡単に避けられるし防がれる)
『Gauuuaaa!!!!』
『・・・・・ッ!!!』
──ガギリィィィィ!!!!
トリニティの大剣とバンダースナッチの尻尾がぶつかり合い耳障りな音を鳴らす。
「はぁ………」
(トリニティも剣に風を纏わせてバンダースナッチに干渉してるみたいだけど当たるだけ、風自体は生物には効果が薄いのかな?、まぁ何にせよ狼形態は私しか攻撃を当てれないからジリ貧だ、でも……)
『Guu………!?』
バンダースナッチは突如ガクリと力が抜けた様に体制を崩す、身体は所々が雪の様にボロボロと崩れ落ち霧散し、狼の姿を維持出来ていない。
「やっと力尽きた?、あれだけダメージを与えてまだ倒れなかった方が驚きだけど?」
(まぁ、私の攻撃力が低いとはいえ何度も攻撃したしチリも積もれば何とやらってね……)
そんな事を考えながらもアリカは警戒を緩めず剣を構える。バンダースナッチは苦しげに鳴いて残った身体の形を変えてゆく。
「第三形態……!!」
その姿には爪も牙も目も無い、生物的な要素を全て捨て去ったような外見、所々に鋭い赤い水晶が生えた立体的な楕円形と呼ぶべき姿は、まるで何か巨大な生物の卵の様な形態だ。
「っ……少し試してみようファイヤーボール」
アリカが炎の玉を試しに放ってみるが何の意味も炎が無く霧散する。
「魔法が消えた………?」
(って事はこの形態に直接攻撃は意味が無い?何かギミックで戦うのかな?)
試しに剣も使うが弾かれる、トリニティも斬りつけるがやはり弾かれる。
「って事はギミックかな?、さてどんなギミック………うん?」
薄い、違和感に気づいたアリカが辺りを見渡す。
薄いのだ、今まで散々視界を邪魔していた霧が薄い、嫌な予感がしたアリカがバンダースナッチの変化した卵を見ると周囲から霧を吸引している。
「回復行動………って感じじゃない、何?」
卵が裂け、巨大な口が現れる。
『Guu……GAaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!』
「っぐ!?」
『・・・・ッ!?』
巨大な口は耳を劈く様な大音量で咆哮すると再び卵に戻る。アリカは耳を押さえるがトリニティは何かが分かった様に卵に背を向けて剣を構える。
「っ…………何が?」
小石がカタカタと揺れる、次に来たのは小さな揺れだ。アリカはトリニティが何かしたのかと訝しげに見つめるがトリニティは気にした様子も無く何かに警戒している。
「この揺れはトリニティじゃない?じゃあ何が……」
(地震じゃ無いよね?、そもそも国全てがトリニティの身体だから地震なんて起こり得ないし……じゃあ一体何が原因?考えられる要因はさっきの咆哮だけど)
アリカはバンダースナッチの咆哮について考えながら構え思考する。
(咆哮を上げたねは何でだろうか?威嚇じゃ無いよね……あの状況でやる意味が分からない。じゃあ何かの合図?合図だとして何の?)
アリカは音を使った合図について思考する。
信号機や駅なんかで流れる行動を誘導する音、
機会の動作開始や動作終了を知らせる音、
車ねサイレンといった危険を知らせる音、
スポーツや音楽の始まりと終わりを知らせる音、
など様々な音の合図を思い出しながらどれに当てはまるか考える。
(大きな音を使う利点は視界に入らずとも広範囲に合図を知らせられる点………じゃあ誰に合図を?)
アリカは誰に合図を送るかを考えバンダースナッチのとある生態について思い出す。
(バンダースナッチは霧程の小さい生命体が無数に集まって身体を構築する群体型モンスター……あ、)
アリカは気づいた、気づいてしまった。
バンダースナッチは群体型のモンスターだ、言い換えれば群れの様なモノ、群れから孤立した個体が窮地に追い込まれればやる事、ソレは人間もよく使う手だ。
そう、それは………
「救援要請………!!」
アリカは急いで足場の外周に視線を向けて警戒体制を取る、揺れは少しずつ大きくなる。そして、
外周に指がかけられた。
「ッ……!!」
『・・・ッ!!』
それを合図に無数の霧の怪物が這い上がってきた。
『グガァァ!!!』『ギィリリィ!!』『………!!』
『グルゥアァ!!』『ギィリアァ!!』
第二形態:偽巨狼
巨大な六本足の狼の姿のバンダースナッチ。六本有る足を活かした突進力と鋭い牙を活用した攻撃と毛を矢にして放つ技が厄介、第二形態は2つあり狼と鳥が有る狼の第二形態は近接攻撃メインで機動力とHPが高く、鳥の第二形態は遠距離攻撃がメインだがHPが第一形態よりも低い
・突進
六本足を活かした突進、巨体で避けにくく速いが地形が悪いと加速を活かしにくい為、対処法としては狭い場所に逃げ込む、魔法で地面を荒らすなどがある。
・噛みつき
鋭い牙を使った噛みつき攻撃。攻撃力が高く動作が速い、突進との組み合わせ攻撃に使われる。この攻撃で力尽きると捕食され飲み込まれる。
・踏みつけ
動作の速い攻撃、そこそこのダメージで回避は比較的簡単。だが連続2回攻撃なので油断していると痛い目にあう。
・尻尾防御
鋭く固い毛を持った尻尾を使った防御。
・偽アローレイン
毛を矢にして放つ広範囲遠距離技、威力はそこまで無いので建物の屋根や防御スキルを発動する事で対処するのが正攻法。回避や弾くのは出来るが推奨しない(なお主人公)




