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災禍の跡地と貪欲なる獣9

階段を降りた先、様々な実験道具が有ったであろう大部屋は、何か机らしき物や道具らしき物が粉々に粉砕されて部屋の隅に追いやられいる。


そして、部屋の中央にそれは居た。

巨大な霧が球体状に纏まったような見た目した分体、今までの3体の分体は雑魚分体の上位版だった為、最後の分体は見た目の類似点からして【無形型】の上位版だろう。


「──『鑑定』」

霧の怪物(ミストモンスター)『霧型』】

《種族:分体(上級)》

HP:2500

MP:⬛︎⬛︎⬛︎

防御力:0

???

???

《能力》

部分擬態、身体変形、???、

『鑑定結果』

[バンダースナッチの分体。何も模していない分、他の分体よりも本体の性能に近い]


「他の分体よりもHPがかなり多いけど……」


そんな事よりも重要な事が分かった。

今までは隠されていた本体の名前が隠されていない、なるほど『バンダースナッチ』って名前かぁ……。


「ここに来てようやく本体の名前がお披露目ね……」


【バンダースナッチ】

名前としてはルイス・キャロル詩に登場する怪物の名前だ。

バンダースナッチの見た目について言及が少なくよくわかっていない。


「まさか元ネタがルイス・キャロル詩とはねぇ……それもバンダースナッチってゆうマイナーなキャラとは……」


『───』


「ッ!!」


そんな事を考えていると霧型が身体の一部を変形させて鞭のような触手がアリカが居た場所に突き刺さる。


「あっぶなッ!?、咄嗟に避けなかったら串刺しだった所ぉッ!?」


さらに避けたアリカを追うように突き刺さった触手から枝分かれするように一回り小さな触手が伸びる。


「っ『受け流し』!!」


自身に伸びる触手を大狼型戦で覚えた『受け流し』スキルを使って防ぐ。


「くっ!!ただでさえ剣の耐久値が少ないのに!!」


無数に襲いかかってくる触手を弾いたり受け流しながら切り落とす、切られた触手がビチビチと跳ねるがすぐに霧となって再吸収される。


「細かいヤツを斬っても意味なしか……今までで一番嫌な敵かも……っ!!」


更に追い討ちをかける様に太い触手が更に三本ほど追加される。


「ちょっ!?、流石にッ!!、複数本っは、ムリッ!!」


アリカは避けたり弾いたり自分に向かってくる触手だけを切り落としたり触手が同士討ちするように立ち回るが、それでも小さなダメージがアリカを徐々に追い込んでいく。


「──いい加減にぃ、しろッ!!!!」


『───っ!?』


アリカは霧型に向かってファイヤーランスを放つ、それを霧型は太い触手を2本犠牲に防ぐ。


「チッ、ギリギリ防がれちゃったか。けど魔法で消した霧は元に戻らないんだ、へぇ……」


アリカは追加でファイヤーランスを2つ放って残り2本の触手を消し飛ばす。


『──ッ!!!!』


アリカの魔法に危機を感じた霧型は、身体が渦巻くような見た目に変化すると突然アリカの周囲に“顎”だけが複数出現する。


「いっ!?」

(危なかったッ!!咄嗟に飛び退かなかったら噛み砕かれてた。これは……)


「──私の周囲の霧を顎に変化させたって感じ?なら……」


アリカは部屋の隅に散らばっている実験道具や机の残骸めがけて複数個、火炎瓶を投げる。

瓶は残骸に当たると割れて残骸を糧に炎が燃え広がりあたり一面の火の海が完成する。


「これで周りの霧ごとお前を焼き尽くす」


実験道具の中に何か可燃性の薬品でも合ったのだろうか?、部屋は凄まじい熱に包まれるがアリカに一切ダメージは無い、

アリカは更に火炎瓶を適当に投げて武器を構える。


(私には『火炎無効』のスキルが有るから火の海でも問題は無いけど、火に耐性の無いなら……)


そんなアリカとは対象的に部屋中に広がっていた薄い霧は熱で消え、霧型にもジワジワと少なく無いダメージを与えている。


『──ッ!?!?』


(この火力からしてたぶん、炎が消えるまでそう時間はかからない。だから……チャンスは今しか無い!!)

「『ファイヤーランス』ッ!!」


『──ッ!?』


「更に追加の火炎瓶っ!!」


『──!!!!』


霧型は炎でジワジワ身体を削られながら4本触手を生やす、そしてその4本を針の様に鋭くし、ソレを──


──アリカめがけて“射出”した


「うっそでしょ!?、触手ミサイルっ!?」

(確かに鳥獣型も針を射出してたよ!?でも、ふざけんな!!バカでしょ!?)


「チィッ!!考えてる暇なんて無いっ!まずは迎撃から!!『ファイヤーランス』ッ!!」


アリカは飛来する一本目をファイヤーランスで打ち消す。


「二本目は、魔法じゃ間に合わないッ!じゃあコレでっ!!」


アリカは左手に握った短剣を振りかぶり、続く二本目の触手に投擲し、


「『金角黒兎の短剣』は不壊、絶対に壊れない!」


そして二本目の触手を打ち消した。


「最後の2本はコレで、『召喚』!!」


アリカはジャイアントの腕を召喚し、飛来する三本目は腕に突き刺さり動きを止めた。


「よし!!最後の1本も止めてジャ──」


──バギッ!!


そう言い切ろうとした瞬間、ジャイアントの腕に突き刺さった三本目の触手からハリセンボンのように無数の針が伸びジャイアントの腕を真ん中から粉砕した。


「なっ!?」


飛来する四本目の触手を止める手段が目の前で粉砕された、魔法の発動も間に合わない速度で自分に接近する“死”を確信する。


(あ、死んだなコレ

初めての死が触手に突き刺さって死亡とはね……)


走馬灯の様な短くて長い時間、私は死を受け入れて目を瞑ろうとした。

そして今一度、自身に迫る触手に目を向ける。


その瞬間、アリカは見た


──自身に迫る死を砕く“ソレ”を確かに見た。


◆◇◆◇


“ソレ”は見ていた、自身を食い荒らす霧の分け身と戦う彼女の姿を。


『・・・』


彼女に迫る死を見ていた。


『・・・・っ!』


彼女には“自分”が“自分”になる前の彼らを弔ってくれた恩がある。


ならば……その恩を今返そう。


『・・・ッ!!!!』


“ソレ”は自身の腕を()()から出して触手の槍を掴む。


◆◇◆◇


アリカは“ソレ”を見た。


「・・・え?」


地面から飛び出した腕が触手を掴んで握り潰す瞬間を、


「なに、これ……」


よく見るとその腕は肉ではなく“水晶”で出来ていて淡く輝いている、アリカが呆けていると地面が波打つように歪んで腕の持ち主が現れる。

水晶で出来た、人型を模した顔の無い像の様な見た目をしたソレは──


「……ゴーレム?」


まさしくゴーレムだった。


「っ……『鑑定』!」


魔水晶人形マジッククリスタルゴーレム

《種族:ゴーレム種》

HP:800

MP:???

防御力:200

《能力》

火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、???

『鑑定結果』

[元は施設防衛用として全身魔石で作成された試作ゴーレム。今は⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎の依代として使われている]


ゴーレムはアリカの方をチラッと見て直ぐに霧型に向き直して4属性魔法を同時に放つ。


『──ッ!?!?』


「霧型と敵対してる?」

(て事は味方?、いや分からない……まずは霧型の討伐が先!!、あのゴーレムは後回しにして。今だけは敵じゃなければ問題は……うん、あるけど問題なしッ!!)


そう考えて強引に思考を戦闘に戻してゴーレムの魔法と合してファイヤーランスを放つ。


『───っ!』


霧型は身体の八割を失い、浮いているのがやっとの状態の霧型は、逃げようとアリカの背後に有る階段目掛けて飛行するが……


「──ダメ、逃がさない」

『──ッ!?』


そんな状態では逃げ切れるはずも無く、アリカのファイヤーランスによって簡単に撃ち落とされる。


「これで、トドメっ!!」

『・・・ッ!!!!』


『───ッ!?!?』


アリカは両手にファイヤーランスを、ゴーレムは片手に四色の光球を、

両者は攻撃を容赦なく連続して浴びせる。


─ドドドドドォォンッ!!!!


そして、煙が晴れ残っていたのはキラリと光る封石だけだった。

【モンスター解説】

『バンダースナッチ分体』

その正体は寄生or擬態に特化した超小型群体モンスターです。

生物として蟻や蜂に近しい生態です。

生態としては何かしらの他生物(動物系統のみ、植物は不可)に寄生する事で増殖します。

増えた分体は寄生されていない他の生物を襲い、その過程で得た肉体を増殖に、魔力や経験値を本体に送り自身の強化をはかります。

そうして鼠算式に増殖と自己強化を繰り返していく生物です。


──ちなみに本体も寄生型です。

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