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災禍の跡地と貪欲なる獣2

アリカ意を決して城門をくぐる。中の景色は、最初の街と同じくボロボロだが建物が大きく装飾され古くなった今でも何処となく高級感を感じる。


「なんか、こんなのをアンティークって言うんだっけ?ボロいけど美術的というかなんとゆうか……」


変化したのは何も建物だけでは無い、街を漂う霧も粘つくような気配に加えて常に監視されているような視線までも感じるようになった。


「やっぱりこの霧気持ち悪いなぁ………なんか見られている様な感じもするし……」


アリカは更に不快感を増した霧に戸惑いながら一番大きい屋敷を探索し始める、中も古くなっているが豪華な家具や内装が見られる。


「ここって貴族街なのかな?、さっき私がいた街が平民街って考えたら街中に壁が有った事と、建物の豪華差の訳に説明がつくなぁ……」


アリカは街の作りについて考えながら物色する。


「う〜ん………なんか装飾が豪華ってだけで特にアイテムが有る訳じゃないっぽいねぇ……」


中に有ったのは壊れた家具などばかりで使えそうなアイテムがほとんど見つからない、


「まぁ、貴族の家にそんなアイテムとかあるわけ無いよねぇ………」


そう呟きながら探索すると、まだ読めそうな古本を二つ見つける。一つ目は普通の本で、二つ目は厳重なロックがかけられた装飾の豪華な本。


「この本は……題名が無いから日記かな?」


ペラ……

■□■□■□■

【とあるメイドの日記】


X月6日


最近、旦那様が忙しそうに仕事をしている。

なんでも王族関連の仕事らしく慌ただしくしている、

いったい何の仕事だろうか?

今は沢山の馬車を貸し出したり忙しそう……


X月12日


旦那様が屋敷に怪しい人達を招き入れている、それも一回や二回だけではなく何回も……

旦那様に聞いてみると、なんでも王家直属の学者なんだそうな、学者様方は旦那様の従者から何かが入った革袋を受け取ると馬車に詰め込んで去っていきました、いったいあの革袋には何が入ってたんでしょう?


X月18日


最近は学者様方の訪問にも慣れていつもどおり仕事をまっとうしています、学者様方も最近は笑顔を浮かべて何か嬉しそうにしていました、旦那様は『長年研究していた実験が上手くいきそうだから』と話していました。

でも、私は学者様方が持っていく革袋が少し動いた様な気がするのです……


見間違い……でしょうか?


X月22日


学者様方が訪れる事が無くなりました、旦那様が貸し出していた馬車も返却されて元の日常に戻りました。

非日常も楽しいですけどやっぱり平和な日常が一番ですね!!


でも最近は平民街で行方不明者が増えているらしいです、大丈夫なのでしょうか……?

■□■□■□■


メイドの日記はここから先は書かれておらず白紙のままだった為、厳重にロックのかけられた本に手を伸ばす、鍵は無い為、本を破かない様に力ずくでロックを壊して外す。


□■□■□■□

【とある貴族の日記】


X月6日


ようやくアレの実験が進んだ、研究者によるとアレのコアには生物が必要らしい……それも人間、コアに必要な人間は平民街で攫うらしい……アレが完成すれば我々の国は更に領土を拡大できる筈……。


X月12日


まだアレに適合する人間は居ないらしい、何度も人攫いを続けているせいで平民街にも噂が流れ出している……

早く完成を急いで欲しいものだ。


X月14日


アレに一番適合できる個体を発見したようだ。

なんでも子供のほうが適合率が高く、一番起動時間が長かった、これからは子供を攫う事にしよう。

幸い、子供なんてスラムには腐るほど居る、スラムのガキ共が消えたところで噂は流れん筈だ。


X月18日


長きにわたった実験もかなり完成に近づいた、

研究者共も実験の進みに気色悪い笑みを浮かべていた、ウチのメイドは嬉しそうなんて言っていたが何処をどお見ても気色悪い笑みにしか見えなかった、

ウチのメイドは天然なのか………?

いや、そんな事はどうでもいい……やっとだ


X月22日


アレに一番適合する子供が発見された、起動しても未だ死なず稼働しているらしい……

その為、子供の補給が必要無くなり馬車が返却された。

今日はアレの発動実験をするみたいだ、無事正常に起動できれば、戦争に投入するとの事だ。


今日な良い日だ、こんな日には一番良いワインを開けよう。

□■□■□■□


アリカは読み終わった日記を閉じる。


「う〜ん、この国が滅んだのは『アレ』っ物の実験のせいかな?人間の命を使った実験なんて碌なもんじゃ無いなぁ………」


アリカは日記について考察しながら屋敷をでる、


「戦争ってセリフと領土を広げられるってセリフから『アレ』は兵器の類いなのかな?、それが暴走して国はこんな有様と、うわぁ……この国の貴族は頭イカれてるなぁ……」


そうして屋敷から一歩外に出ると、


「ッ!?」


霧が粘りつき見られる感覚もより強くなり背筋が凍る様な感覚を覚える、


「何か、来るッ!!」


霧が濃くなっていき視界が悪くなる、咄嗟に武器を構えるが腹に重い衝撃が走り吹っ飛ばされる。


「ぐっ!?」


バキバキィッ!!!!


屋敷の壁を壊しながら吹き飛び、貫通して道路に出た所で地面を転がりながら止まる、


「かはっ……ぐっ」


肺の中の空気が押し出されて声も出ないままアイテムボックスからポーションを取り出して自身に振りかけ、急いで短剣とロングソードを構えて自分が吹っ飛んできた屋敷の方を向く。


ソレは、アリカが吹き飛んで開いた穴を悠々と歩きながら登場する。

ソレは狼の姿をしていた、真っ白な毛並みをしていて真っ赤な爪、真っ赤な牙を持っていた。

だがソレな狼に似ているが狼では無い、ひし形の赤い水晶の目が左右に一つ(ひたい)に一つ、計三つの目を持っていた。


「鑑定ッ!!」

霧の怪物(ミストモンスター)『大狼型』】

《種族:分体(上級)》

HP:1000

MP:⬛︎⬛︎

防御力:0

???

???

《能力》

???

『鑑定結果』

[⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎の分体。ソレは触れられぬ形無き怪物]


アリカは一気に間合いを詰めてロングソードで大狼型に斬りかかる。


「ふッ!!」


カキンッ!!


が、ロングソードは、まるで霞でも斬るように大狼をすり抜け、地面に当たり甲高い音を奏でる。


「は?、ぐっ!?」


『グルゥ……』


アリカは意味がわからず困惑する。その隙を大狼が見逃す筈も無く、大狼は前足でアリカを横に叩く。

アリカは脇腹に一撃を貰い、地面を跳ねて建物の壁に叩きつけられる。


「かはッ……ぐ、ポーション!!」


すぐにポーションを取り出して回復し、武器を構える。


「ッ、なんで攻撃が……透けた!?」


アリカは何故攻撃がすり抜けたのか考えようとするが、ソレより先に大狼が動く。

アリカはロングソードで攻撃から身を守るように構えると大狼の噛みつきを防ぐが、耐えきれず背後の壁を砕いて吹っ飛ばされる。


『グラァッ!!』


「ぐぅッ!!!!」


ドゴグャアッ!!!!


「ッ!?……なんで透けなかった!?」


アリカは、さっきの防御は武器をすり抜けずロングソードに攻撃が当たった事に疑問を感じながら大狼に備える。


(私の剣は大狼には当たらず、すり抜けてしまう筈、防御する時だけ大丈夫なんて都合の良いギミックなんて有る?いや、それとも………)

「ッ!!」


『グルゥァ!!!』


建物を壊しながら大狼が現れ、前足でアリカを潰そうと叩きつけてくる。アリカはそれをギリギリで避けるが衝撃で砕けた石畳の破片で軽いダメージをくらう。


「少しは考える時間をくれないかなぁっ!?」


大狼はまた前足で叩く様に攻撃してくるが、アリカは大狼の体の下を潜るって避ける。


「くっ……!!」

(マズイなぁ……攻撃が透けるせいで勝ち目が無い、しかも大狼のスピードはこれまで有った敵の中でも一番早いから攻撃も避けにくい、ずっと避け続けるのも無理だし……やっぱりアレしかないかなぁ………)


アリカはロングソードを構えて大狼型に向き直る、


「ふぅ……さてワンちゃん、遊ぼうよ」


アリカはそう言いながら《挑発》スキルを使って大狼を煽る、大狼は三眼を輝かせ大口を開けてアリカに迫る、


『グルガガガァッ!!!!』


大口を開けた大狼のギラつく牙が獲物を噛み砕かんと迫ってくるが、アリカはそれに臆さない。


「まだ、まだ、そこッ!!」


『グガァッガガァ!?』


アリカは大顎をギリギリ、それも風圧で吹き飛ばされそうなほどのギリギリで避けてロングソードで斬りつける。


「よし当たっ、あ、待て!!逃げるな!!」


大狼はアリカが攻撃を当てると猛スピードで距離を取る、


「逃げるなッ!!ファイアーランス!!!!」


アリカは灼熱の槍を作り出して大狼に投げつける、大狼は軽く跳ねる様に避けてアリカに向き直る。


「チッ!!避けられ、ん?避けた??」


アリカは大狼が魔法を避けたのに疑問を感じ、幾つかファイアーボールを大狼に放つと、同じ様に避ける。


「もしかして魔法は普通にダメージが通る?」

(今までは攻撃の瞬間だけ実体化すると思っていたけど……)


アリカはロングソードを構えて大狼に向ける、左手の短剣を仕舞っていつでも魔法が撃てるように準備をしておく、


「ふふっ、やっと突破口が見えた……」


私は笑みを浮かべる、『強い敵ってのは突破口が見えた瞬間が一番楽しい』と友人が語っていたのを思い出したが、まさにその通りだと今なら同意できる。


「さぁ、始めよう……」


アリカと大狼が同時に走り出す、アリカはファイアーボールをばら撒きながら接近し、大狼型はファイアーボールをできるだけ避けながら接近する。


『グルゥッ……』


「いくら初期の魔法といっても蓄積したらかなりのダメージになる筈、それも防御力0の貴方なら尚更………」


『グルガァッ!!!』


「ちょ、ぐふっ!?」


アリカが接近して近距離で戦おうとすると、大狼は体当たりをしてアリカを吹っ飛ばす、


「っかは、HPがマズイッ!!」


アリカは吹っ飛ばされながらHPを確認すると、残り僅かになっていた。


「これじゃっ、ぶつかったら死ぬッ!?」


吹き飛ばされながら後ろを見ると建物が見えてくる、アレにぶつかったら死ぬのは確実……


「ッ!!間に、合えッ!!」


アリカはぶつかりそうな建物に投げナイフを投げる、投げられたナイフからマッドゴーレムが召喚され、アリカの衝撃を和らげる。


「助かった………あ、ポーションっ!!」


ポーションを取り出して急いで自分にかけ、僅かだったHPは一割ほど回復する。


「はぁ……まっずいねぇ……」


アリカはステータスを開いて残り僅かになったMP残留を見る、残ったMPではファイアーランスを一発放てるだけしか残っておらず、この一発を当てなければアリカに勝機は無い。


『グラァ………』


向こうから満身創痍でボロボロになりながらも殺意を衰えさせない大狼が歩いてくる。


「鑑定………」

霧の怪物(ミストモンスター)『大狼型』】

《種族:分体(上級)》

HP:18


「ははっ、お互い満身創痍かぁ……」


アリカと大狼は睨み合う………。静寂、睨み合いによる緊張感と真反対の静寂な空間が広がっていた。


聞こえるのは【(アリカ)】と【(大狼)】の息遣いのみ……


お互い満身創痍、銃を使わない早撃ち対決のようだ。

『先に当てた方が勝ち』

シンプルながらも今この場を支配する絶対のルールだ。自分の武器は右手のロングソードとたった一発の切り札(魔法)のみ、対して大狼の武器は自慢の速さと圧倒的な力……

私が取れる手段は、剣でカウンターを決めるか魔法を当てるかの二択、だから私は……



『グルァアア!!!!』

「はぁああああっ!!!」



私と大狼は、ほぼ同時に走り出す。左手のファイアーランスを放つ、


『グルァッ!!』


大狼は道路の石畳を砕き、その破片でファイアーランスを打ち消す。それを見た俺は、すぐさまロングソードを構えて待つ、大狼は大顎を開けて猛スピードで突っ込んでくる、


「ッ……!!」


私はロングソードを噛みつきにカウンターを喰らわせる様に構えて待ち構える、そして私に迫る大顎が………


少し笑みを浮かべた気がした。


そう思った瞬間、大狼は大顎を閉じて前足でロングソードを弾く、アリカは衝撃に耐えきれずロングソードを手放す、ロングソードはカランカランと音を立てて地面を滑って届かなくなる。

それを見た大狼が勝ちを確信したように口元を歪め、大狼はゆっくりと大顎を開いて近づいてくる。

私は目の前に迫る大顎を………




アッパーカットで殴った、




「……ふッ!!」

『グルァ!?』


私は、魔法でも剣でのカウンターでもない第三の選択。

二択を失敗して打つ手無しと油断させてからの殴りとゆう予想打にしなかった選択(ジョーカー)を取った。

いやぁ……持ってて良かった格闘スキル!!


『グ……グガァ???』


大狼は予想打にしなかった反撃を喰らい混乱して地面に倒れ伏していた、そんな大狼の隙を逃す理由も無く、


「じゃあね、強かったよ」


大狼の顔面を殴りつける。殴りてけた箇所からヒビが走り大狼の全身に広がって、まるでガラスが砕ける様に大狼が砕け散る。


「ふぅ、強かったなぁ……」


《スキル《受け流し1》を獲得しました。》

《称号《意表を突く者》を獲得しました。》

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