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災禍の跡地と貪欲なる獣1

アリカが城門を潜り街の中に入った瞬間、外から見えた街の雰囲気が急に変化した。


「ッ!!」


家はボロボロで所々が経年劣化で崩れており、街の中は嫌な雰囲気で包まれていた、そして何より変化したのは雰囲気だけではない。


「なんで急に霧が……街に入るまで霧なんて一切見えなかったのに……」


街には薄い霧が立ち込めていた、視界が遮られる程では無いが粘り着く様な不快感がする。


「ここは……城下街?、嫌な霧に包まれてなければ良い雰囲気なんだろうけど………」


アリカは近くに有ったまだ崩れていない建物に近寄る、屋根は薄汚れて色が落ちた布で出来ていて建物というより屋台の様な、いや屋台だった建物のようだ。

斜めに立てかけられた木箱にはドス黒い粉状の何かで埋まっており、屋台の看板をみるに正常だった頃は果物を販売していた屋台のようだ。


「鑑定……」

【汚染された果実だった物】

《特性》

崩壊(微)、

《鑑定結果》

[果物が何かの影響を受けて汚染された物体、触れると崩壊(微)の状態異常に罹る]


「崩壊……?」


アリカが恐る恐る指先で触れると、鋭い痛みと共に指先が黒く変色していた。慌ててポーションをかけると痛みも消えて黒くなった指先も元に戻った。


「これは……ヤバいね、状態異常だから効果を受けるのは肉体だけかな……?」


アリカは汚染された果実の粉を慎重に空の瓶に詰めてアイテムボックスに仕舞う。


「他の店も見てみるか……」


他の屋台も見てみるが使えそうな物は無い、アリカは少し落胆しながら別の建物へと向かう。

向かった先は剣のマークが描かれた看板の建物……『武器屋』だ、飾られた剣は錆びついて刃こぼれしている、樽の中に入っていた剣を手に取ると刃部分がサァ……と砂のように崩れて持ち手だけになる。


「ここもダメかぁ……やっぱり城に行かなきゃいけないのかな?、じゃあもう行こ、」


ヒタ……ヒタ……


「ッ!?敵ッ!!」


ため息を吐きながら武器屋を出ると不意に足音が聞こえて急いで武器を取り出す、足音は裸足で歩く様な音だがフラフラとしていて正常な人間の足音には聞こえない。


『ぐがぁ……あぁぁ??』


ソレは古くなった衣服を纏とって現れた、肌は腐り髪は所々抜け落ちて強烈な腐臭を撒き散らしながらソレは声とも呼べない声を発しながら現れた。


「くぅ!?……鑑定っ」

不死者(ゾンビ)

《種族:不死種(アンデット)

HP:200

MP:0

防御力:35

死霊属性耐性:80%

打撃属性耐性:30%

⬛︎属性⬛︎⬛︎:⬛︎%

火属性弱点:-40%

《能力》

悪臭(中)、鈍足、知能低下(大)、???

《鑑定結果》

[人間の死体が長い年月をかけてアンデット化した存在。知能は低く足も遅い為あまり強くは無い。]


鑑定スキルが低い為か所々黒塗りになりながらも識別スキルだった頃よりも詳細な情報が確認できるようになっていた。


「く、くさい……デイバーのゾンビは無臭だったのに野生?のゾンビは腐臭が酷い……」


アリカはゾンビから距離をとって弱点属性の火魔法を放つ、


「『ファイアーランス』」


ブォンッ!!ジュッ!!


『がぁあ!?!?』


アリカは片手に灼熱の槍を生み出してゾンビに投擲する、灼熱の槍は放物線を描きながらゾンビの胸に大穴を開けて燃え上がる、ゾンビは呻き声を発しながら黒焦げになってポリゴンの光に変わった。


「はぁ……臭かった、さてドロップ品は……『腐敗した肉』『脆くなった骨』『腐敗した心臓』うん、どれも使い道が無さそうだなぁ……」


アリカは一応ゾンビからドロップしたアイテムをアイテムボックスに仕舞い城探しを再開する、偶にゾンビを倒しながら城がありそうな中央に向かって進む。



「階段や坂が多いなぁ……なんか中央部に進むにつれて標高が高くなってる?」


この街は中央部に進めば進むほど階段などが多くなり迷路の様に複雑に入り組んでいる。そんな見渡しの悪い場所だからか少しホラー要素が強く曲がり角から急にゾンビが飛び出してきたりするし変な場所からゾンビが飛び出してくる、普通の人なら恐怖で怯えながら進むのだが……


『がぁぁ!!!!』


「邪魔」(ファイアーランス)


『がぁあ!?!?』


アリカには『うざったいなぁ……』程度にしか思われておらず、ただ入り組んでいるだけの街探索にしかならなかった。


「この街のコンセプトってなんだろ?、ただ入り組んでいて偶にゾンビが邪魔しにくるだけって………もっとモンスターだしたら良いのに」


なお、担当した運営はホラー要素をフル無視されてキレ散らかした。


そんな運営からの恨みを買ったのなんてお構いなくアリカは中央部へとガンガン進み、巨大な城壁に辿り着いた。


「街の中に壁?」


城壁の前には堀があり、その堀には濁った水が流れていて落ちたらひとたまりもない程の激流になっている。

そんな城壁の門と堀には跳ね橋で繋がっているが跳ね橋は上がっていて先へ進めない、さらに橋を守る様に巨大なモンスターが立ち塞がっている。


「ッ……鑑定」

腐肉塊(ロットローフ)

《種族:高位不死種(ハイ・アンデット)

HP:⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎

MP:⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎

防御力:300

死霊属性耐性:80%

打撃属性耐性:⬛︎%

⬛︎属性⬛︎⬛︎:⬛︎%

火属性弱点:-40%

《能力》

悪臭(大)、自己再生、知能低下(大)、自動回復(中)、⬛︎存⬛︎能、???

《鑑定結果》

[大量の不死者と死体が一塊になってアンデット化した存在。単体で小さな街一つを滅ぼせる力を持つ]


ソレは巨大な肉塊だった、腐った肉が一塊の球状になった形でソレから突き出るように無数の手足が無雑作に生えていた、大きさ一軒家くらいの大きさで酷い悪臭を放っている。


「ッ!!、能力値が見えない……でも見えるかぎりでもかなり格上ッ……」


アリカは武器を構えて腐肉塊の動きを様子見る、腐肉塊は無数の手足を動かしてアリカに向かって転がって突進してくる。


「うわっ!?」


ドガガガッ!!!!


アリカは腐肉塊の突進をギリギリ避ける、腐肉塊はそのまま転がって民家にぶつかり民家は無惨に倒壊して崩れる。


「当たったらひとたまりも無いなぁ……ファイアーランス!!」


アリカはファイアーランスを腐肉塊に当てると腐肉塊の一部が激しく燃え盛る、が……


グチュ……ベチャ……ボコボコッ……ゴポッ……


「嘘っそぉ……燃えた部分を切除して再生した!?、絶対知能が低いのって嘘だよね!?」


腐肉塊は燃え盛る部位を切り離して削れた部位を再生する、再生が終わったら手足を使って体勢を立て直して再びアリカに向かって転がって突進をする、


「ッ!!……これは、まともに戦ったら勝ち目が無いなぁッ!!、何かギミックが有るのかな?」


アリカは腐肉塊の行動に注意しながら何か使えそうな物を探す、その間に腐肉塊が無数の手足を使って体勢を整えてアリカに突進しようとする、


「まだ、動かないでっ!!ファイアーランス!!」


アリカは腐肉塊の手足をファイアーランスで焼いて時間稼ぎをしつつギミックか腐肉塊を倒す手段を考える。


(まず防御力と回復力が高くて魔法や武器で倒すのは不可能……ジャイアントを呼んだとしても腐肉塊には自己再生スキルと自動回復スキルがあってジリ貧、多分ステータス面でもジャイアントより上だからジャイアントが負ける可能性が高い………じゃあどうやって勝つ?逃げるのは論外で、何か使えそうなギミックやトラップの類いはなかった……なら、考えられるのは……)

()()、かな?」


そんな事を考えているうちに手足を再生させた腐肉塊が転がって突進してくる、


「いま考えてるのにっ!!」


アリカは地面に転がる様に回避する、一撃でも当たったら死ぬとゆう緊張感がアリカの思考を狭めて鈍らせる。


「ハァ……ハァ……くぅ、跳ね橋が降りてたら逃げるってゆう選択肢も合ったのに………うん?」


アリカは自分が漏らしたセリフに何か引っ掛かるものを覚える。この状況を打開できそうな何かを……


「跳ね橋……跳ね橋ねぇ………あ、」


アリカは自分のセリフの引っ掛かった部分を思い出す。


「そうじゃん、有ったじゃん……腐肉塊を倒せそうな場所、激流で即死しそうな堀が!!」


アリカは打開策を思いつく、


「まずは場所を移動しないと……」


アリカは腐肉塊の突進を避けつつ城壁前の堀まで走り抜ける、そんなアリカを腐肉塊は民家を粉砕しながら追いかける。


「っ!!ハァ……ハァ……ふぅ、着いた」


アリカは荒れた息を整えながら堀から落ちそうなギリギリに立つ、そんなアリカに突進をしようと腐肉塊は体制を整える、


「さぁ……鬼さん此方、手の鳴る方へ」


アリカは煽るように手を叩き回避の構えを取る、そんなアリカに向かって腐肉塊は回転して突進をする。


「今っ!!」


ドッグシャァア!!!!


アリカは腐肉塊の突進を避ける。

腐肉塊は勢い余って堀を飛び越えて城壁に激突する、城壁にぶつかった腐肉塊はズルズルと跡を残しながら堀に落ちていき、激流に身を削られて見えなくなっていった。


「……勝った?」


《スキル《挑発1》を獲得しました。》

《称号《地形を活かす者》を獲得しました。》


「スキルが手に入ったてことは倒せたんだ、はぁ………よかったぁ…」


アリカは深く息を吐きながら地面に座る。


「しかし、どうやって先に進むのかなぁ……跳ね橋は上がっていて進めないしどうしよかなぁ……」


アリカがそんな風に口にすると跳ね橋が急に落ちて土煙が舞う、


「えほっ、げほっ!?、なんで急に!?」


アリカが跳ね橋を見ると、跳ね橋をロックしていた錆びついた金具が壊れていた。


「あ、そっかさっきの腐肉塊の突進の振動で壊れたのか、これも含めたギミックだったのかぁ……」


アリカは立ち上がり土埃を払って城門を見る。


「ふぅ……進もう」


アリカは気合いを入れて跳ね橋を進み城門をくぐる、

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