アリカ、闇夜の森
ログインしたアリカは、ツヴァイの街で地図と調味料などの消耗品を幾つか買い、装備品の手入れとイベントで消費した『魔石付き投げナイフ』と『試作型火炎瓶』を補給して【闇夜の森】に行く準備をする。
「よし、これで準備は終わりかな」
街で買った地図を頼りに道なりに進むと地面が急激に凹んみ、その巨大な窪地に木々が生えた森を発見した。
「うわ、深いなぁ……何処か安全に入れる場所あるかな?」
窪地は、ほぼ崖の様になっていて底は木々の葉で埋まり何も見えない。
安全に降りれないか探しながら道なりに歩くと窪地と道の間にビル程の巨大な巨木が生えていた、その巨木には人が通れそうな穴が空いており、穴の隣には古い木材で出来た看板が刺さっていた。
「おぉ……こんな木の生え方は現実じゃあり得ないから地味にファンタジーだなぁ……」
アリカは看板に近づいて翻訳スキルで文字を見ると、『この先《闇夜の森》、入る場合には巨木の中を通って安全に降りれます。』と、書かれていた。
「ここが入り口……」
巨木の中に入ると中は筒状の空洞になっており螺旋を描くようにベニヤ板らしき物を突き刺して階段を作っており、柵の様な物は無く大きめの杭にロープを巻きつけて作られた簡易的な持ち手しかなく、それがとてつもなく恐怖を煽る。
「降りていくにつれて段々暗くなってきてる?そもそも何が光源になってるんだろ?」
アリカが光源を探してみると淡く光る苔が光源の役割をしているようだ、だが降りるにつれて苔が段々と減ってきており、アリカが見える範囲も徐々に狭まってくる。
「階段を降り始めてからけっこう降りたんだけどなぁ、まだ続くんだ……はぁ」
もう苔は殆ど生えておらずアリカが立っている階段しか見えず、その階段すらもほとんど見えない。
そんな暗闇の中ひたすらに階段を降りていると…
《スキル《暗視》を獲得しました。》
「ん?何かスキルを覚えた?……暗視スキルかぁ、ここに相性ピッタリなスキルだなぁ……獲得条件は暗闇の中を一定時間いる事かな?」
暗視スキルを獲得すると、真っ暗だった周りが少し暗いぐらいの明るさになり周りがしっかり見れるようになった。
その後、しばらく階段を降りていると底の地面が見え始め、とても長かった階段が終わりを告げた。
「はぁ……やっと着いたぁ…」
地面に着いたアリカは汚れるのを気にせずに横たわり深いため息を吐く。
ゲームのアバターの為、身体的な疲れは無いが長時間にわたり続いた真っ暗な空間でひたすらに階段を降り続けるとゆう行為はアリカに心理的な疲れを感じさせた。
こんな虚無を通り越して軽い拷問の様な時間を過ごしたアリカは、これを作った運営に怒りよりも呆れを感じていた。
「なんでこんな意味の無い階段を作ったのかな運営?、この先に噂の王国がなければ絶対に来ないよこんな場所………」
アリカはもう一度ため息を吐きながら立ち上がる、周りには降りてきた階段と、出口らしき蔦で覆われた場所。
蔦は巨木の外装を覆うように生えており、それがこの場所を隠しているようでモンスターが入り込むのを防いでいた。
「じゃあ行きますか」
アリカは蔦を退かして出ると、そこには森が広がっていた、上は全て木の葉っぱで覆われて太陽の光が届かなく昼夜とわず真っ暗な状態になっていた。
地面はキノコが木の根元に生えていたりするだけで草が一本も生えておらず荒れた地面を露出させていた。
「この木が太陽の光を邪魔してるから草が生えないのかな?ん、よいしょ(ズボッ)」
アリカは根元に生えたキノコを取って識別スキルを使う。
【盲目茸】
《識別結果》
[光が一切届かない場所でのみ育つキノコ。毒を持っており摂取した場合、盲目状態となり何も見えなくなる事から〈光奪いの茸〉と呼ばれている]
「これは『メイ』へのお土産かな〜、私も調合で使いたいし見つけたら採取しよ」
盲目茸をアイテムボックスに収納して探索を再開する、盲目茸を採取しながら進んでいると道を塞ぐ様にモンスターが現れた。
「ッ識別!!」
【夜戦人狼】
HP:300
MP:200
『真っ暗な環境に適応した人狼種。暗闇で生活しているため、目が退化したが嗅覚が鋭くなった』
『グルルゥ……』
襲ってきたモンスターは、真っ黒な毛並みの狼をそのまま人形にしたようなモンスターだった。
「《ダブルスラッシュ》!」
『キャンッ!?』
アリカは人狼に向かってダブルスラッシュを放つと斬撃は人狼の片腕を斬り飛ばす。
「へぇ……やっぱり目が見えないんだ?」
『グルゥ……グルガァ!!!』
人狼は激昂し、アリカに突撃して残った片腕で引き裂こうとするが、
「うん、目が見えて無いから匂いがしない攻撃を感知することができてない……」
アリカは人狼の攻撃を体を傾ける事で避け、片足で人狼の足を引っ掛けてバランスが崩れた所で首をナイフで掻っ切る。
ザシュッ!!
『グルガァ……』
人狼は弱々しい声を出してポリゴンの光へと変化し、地面にはドロップ品の爪と毛皮だけが残る。
《スキル《識別》のレベルがMAXになりました、これにより《識別》は《鑑定Lv.1》へと進化しました。》
「ん?、スキルが進化?………へぇ、スキルのレベルがMAXまで溜まるとスキルが進化するんだ……」
アリカは進化した《鑑定》スキルを試しに闇夜の森の木にスキルを使ってみた。
「鑑定……」
【吸光樹】
《特性》
光吸収(中)
《鑑定結果》
[闇夜の森だけに生息する樹木。元は普通の樹木が何らかの影響を受けて変化した突然変異種、枝が広範囲に広がり太陽光を自分だけに集めて他の植物の成長を阻害して生活する]
「へぇ………ここの木は何らかの影響でこうなったんだ、その影響が王国が滅んだ原因かな?」
アリカは人狼のドロップアイテムを拾い、軽く考察をしながら歩みを進める、しばらく考えながら歩いていると月明かりがアリカを照らす。
「ん〜もう夜かぁ………あ?え、月明かり!?」
アリカが上を見上げると綺麗な満月がアリカを照らしていた、闇夜の森はアリカの居る場所にだけ生えておらず、かといって地面に草は生えておらず荒れた地面がそのまま露出していた。
「これは、やっと目的地に着いたんだ……」
アリカの前方には所々が崩れた城壁と、まるで歓迎する様に開いた城門が不気味にアリカを迎えた。
「ッ………ふぅ、さて行こう」
アリカは唾を飲み込んで、慎重に城門を潜る。
Q.何故、あんな意味の無く長い階段を作ったのか?
A.深夜テンション+酒+手抜き
【管理者G】『ぷはぁ〜、イェーイ!!これで亡国クエスト完成だぁー!!!!あ、いっけね闇夜の森への行き方を作り忘れてわwwまぁ適当に巨木の中に螺旋階段と苔生やしとこww』




