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さよならアクアマリン

作者: 詩音

『ザクッ、ザクッ』

スコップで土がかけられる。

冷たい雨の降るなか棺が埋められてゆく。

家族や友人、親族に見送られた静かな葬儀のなか時折すすり泣く声がしている。


「まだ若いのにね..」

『子供は3才になったばかりだろ、可哀想に』

母が亡くなったということがよく分かっていない幼子のあどけないアクアマリンの笑顔がいっそう参列者の涙を誘っている。


------

フィオーレ伯爵家のタウンハウスには半年前に妻がなくなったばかりにも関わらずはやくも沢山の釣書が届き始めている。


伯爵は美丈夫、しかも領地は港を有する温暖で国内有数の穀物地帯、かなりの資産家でもあるからだ。

子供がいるというのがネックではあるものの、22才という若さや女児が一人のみのため男子を産めば後継ぎになるというのはなかなか好条件で独身女性の羨望の的であった。


『妻が亡くなったばかりで当分再婚はしない』

そう言って全ての申し出を丁重にお断りしていた。

しかしスタンリー侯爵令嬢のマデリーンだけは何度断りをいれても諦めず伯父である王に無理やり頼みこんで数ヶ月後には王命での結婚となった。



------

マデリーンのドレス姿を見て 

〖ウエディングドレスから胸がこぼれそうじゃない!いくら峰不二子みたいなナイスバディでも、もう少し露出控えようよ!〗


えっ、ちょっと、峰不二子って....ルパン三世?

そんな風にぬるっとアデリーナは前世の記憶がよみがえってきた。


前世の私はアラサーの社会人で仕事は広告代理店の営業。毎日朝から晩まで忙しく働いていた。

仕事は充実していたけれどプライベートは枯れた生活を送っていた。

休みの日はお昼過ぎに起きて掃除や洗濯をして近くのスーパーで買い物。

1週間分のおかずの作り置きをして夜には作ったおかずをあてに梅酒を飲みながらネット小説を読むのが唯一の楽しみ。


その時はまって読んでた小説が❰アクアマリンの涙❱


ストーリーは幼い頃、母親を亡くした伯爵令嬢が父親の無関心、後妻や異母弟妹や使用人に虐められ、婚約者を妹に略奪されたり辛い日々を送るも健気に努力して学園生活で素敵な貴公子達に愛されて幸せをつかむシンデレラストーリー。継母や弟妹にざまぁする系の話だった。


アラサー社会人として生きた経験がある私としたら

別に辛い幼少期いらないよね....

もっと人間関係上手く、楽しく生きようって思う。



3才で母を亡くし、1年経たずに父親が再婚して妹や後継ぎの弟が生まれてどんどん自分の居場所が無くなって不安でたまらない主人公のアデリーナの気持ちも痛いほど分かるけど。


アラサーの経験があると後妻のマデリーンの気持ちも分かるんだよね。


やっぱり自分の子の方が可愛いし、血が繋がって無くても自分になついてくれたら可愛いと思えるけどそうじゃなかったら面白くないよね。

もちろん虐めはダメだけど....

営業職の経験がある今の私ならば笑顔や培った社交性でマデリーンともう少し仲良く出来ると思うんだよね。


小説的にはマデリーンは悪役だけど

考えたら被害者でもあるんだよね

だって結婚をわずか3ヶ月後に控えた18才で婚約者に突然婚約破棄されてしかも理由が自分より年下の浮気相手の子爵令嬢が妊娠したせいで。

長年婚約してた公爵令息に裏切られただけでもキツイのに更に不貞をした二人はさっさと結婚してさ。

自分に非はないのに社交界で傷もの令嬢みたいな扱いになって、気が強いから浮気されても仕方ないってばかにされてさ。

その後新しい婚約者が見つからないまま21才になったんでしょ...

この世界じゃ二十歳過ぎたら行き遅れ

もう年寄りの後妻とか裕福な商人の嫁や高位貴族の第二夫人とかしか嫁に行けないだろうし

侯爵令嬢でプライドの高いマデリーンには許せなかったよね。


そう考えたらアデリーナという先妻の娘はいてもフォーレ伯爵は容姿、年齢、地位、経済的にも好条件。

最後の希望。

何が何でも結婚したいよね。パパは性格も頭も良いし。


これからはマデリーンとも出来るだけ仲良くして、生まれくる妹や弟も可愛がろう。


勝手に拗ねたり、卑屈になったりしない。

可愛くおねだりをして欲しい物を手に入れて行こう。

ありがとうを言いながら。

 

アクアマリンの瞳には涙を浮かべず。

笑顔で過ごそう。



アクアマリンに涙はもういらない。

さよならアクアマリン。

 



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