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祖父の宝

作者: 雉白書屋

 祖父が死に、遺品整理と片付けを頼まれた孫は二つ返事でやると答えた。

 祖父への感謝の気持ちと愛情はそれなりにあったが、それが理由ではない。

 遺産のお零れ目当て。父や叔父に媚を売るためと、祖父の宝。それである。

 家探しするように片付けをするが、金目のものは見つからない。

 やがて夜になり、仕方なく泊まることにした。


 慣れない枕と布団であることに加え、祖父の匂いが体に染みこんでくる感じがして

眠れる気がまったくしなかった孫はむくっと起き上がり、家の中をうろついた。

 古民家である。建物自体は価値がないに等しいが庭、つまり土地が広い。

結局、宝らしい宝は見つからなかったが、かなり働いたんだ。

ここを売り払い、どかっと遺産が入れば、その分け前もこっちまで零れ落ちるだろう。

 悶々としていた孫はそう自分を納得させ、布団に戻ろうとした。

 その時であった。庭。それで思い出した。

時折、祖父が庭の隅の小さな祠に向かってお祈りをする姿を見かけたことを。

 あの観音開きの戸。手を伸ばしたが開けたことがないのは祖父に叱られたからだ。

幼き頃、中身が気になった故の行動であったが、ひどく恐ろしい思いをしたものだ。

 だが、その怖い祖父はもういない。

 孫は庭に出て、その祠を探した。

 存外早く、懐中電灯を持ってくればよかったと後悔しかけた時、見つけた。

 祠のことではない。


 青い光だ。


 孫はそれが祖父の人魂であると思い、震え上がった……がどうも違う。

その光は祠の中から漏れ出ているようであった。


 孫は恐る恐る近づいた。

 間違いない。この祠の中だ。となると神様か?


 開ける開けない、悩む段階は早いうちに過ぎた。

 ふと思い出す、一休さんの話。

 和尚様。中身は水アメかい?

 祖父がああも自分を叱りつけたのはここにお宝を隠したからか?

 これはあの時の意趣返し、というより心的外傷の克服さ、おじい様。怖かったんだぜ?

 

 孫はニヤリと笑い扉を開けた。 

 ……だが、その笑みはすぐに消えた。


 中身は石であった。ご神体と呼ぶべきだろうか。

 笑みが消えたのは落胆したからではない。

単純な宝石などではないから価値を測りかねているのだ。


 青く光る石。孫はこれまで見たことがなかった。何か神秘的な力があるのは明白。

祖父もそれで財を築いたのかもしれぬ。

 そう考えた孫は、いや、すでに手に取っていた。

これは渡さぬ、誰にも見せぬ。自分だけのものだ。かつて祖父がそうしたように。

 沸々と沸き立つような欲望の熱。

それは密かに、手に握るその皮膚からブクブクと身を壊し……。

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