夏への追憶、あるいはあの世への旅立ち
真夏の日差しに手を翳し
暑いと貴方に愚痴を吐く
鞄の横の赤水筒
君にかかる木漏れ日は
息が止まるほど美しく
そんな夏も遠い日へ
上を向けば満天の藍
視線を戻せば新緑が
俯きざまの二足のスニーカー
気づけば空は茜色
振り向いた先には誰もいない
影法師と共に家路を進み
一人の家のドアを開け
満面に熱気を受けながら
着替えもせずに
倒れ込む
目が覚めれば宵の闇
フラフラ腰を引き上げて
壁を手探り付く電球
窓の外では大合唱
水とリンゴと焼きそばと
口に押し込み、逆戻り
布団に潜り込んでは
蒸し暑く
気づけば朝日が登ってた
枕元のカッターに
倒れ伏した写真立て
足の折れたパイプ椅子
上から垂れる麻縄に
手を伸ばしてみるものの
掴んだ先はドアノブで
向かう先は最寄駅
通知塗れの液晶に
気だるく触れてみて
繋がった先から怒鳴り声
心は憎悪に溢れかえ
口から出るはすみません
明日の行方もわからずに
今日も残すは数分間
とっくに押したタイムカード
横目に見ながら終電へ
駅に着いたは良いものの
帰る道は途絶えてて
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逆方向のホームへと
虚脱した足取りで
聞き飽きたアナウンスを
片耳から聞き流し
黄色いブロックを乗り越えて
飛び込んだ先は.......
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見るに堪えない肉塊に
吐き気を催す血の匂い
真っ赤に濡れた鉄の箱
何度も見てきた見飽きた景色
そっとそばのテレビから流れ出した
ニュースには
淡々と述べるテレキャスター