第一部 7 事情とお決まりの文句
村の端にあるネリネの家である小さな小屋に着いた。中は、台所にベッドが二台、テーブルに椅子が2脚あるだけの簡素なものだった。
「ネリネ、こちらがおれの主、アリシア様。ゴツい籠手した執事がジュリウス。」
シバが軽く紹介すると、姫さまとジュリウスがネリネに軽く会釈をした。
そして、状況整理の為に、シバが口を開いた。
「まずは、こちらから状況を話すとすると…。酒場に入って店主と話そうとしたら、ネリネがごろつき1、2、3にネリネのお姉さんについて聞いたところ、都合の悪い話だったのか手がでたから止めたところ、こっちにも手がとんできたから反射的に…ね…」
バツが悪いのかやや姫さまから目線をそらせながら話しているシバに対し、ジュリウスが続けて話した。
「わたしの方は、姫さまと酒場付近を散策していましたら、2人組の男性から金品を請求されました。それを拒否すると、暴力に訴えてきた為、正当防衛を行いました。」
「一応、おれも正当防衛よ」
思わず、シバは言葉を付け加える。姫さま困ったような表情を浮かべながらも、ネリネに聞く。
「ネリネさんでしたか?貴女のお姉様になにかあったのですか?差し支えのなければどうか教えていただけないでしょうか?」
頭を下げる姫さまにジュリウスが微かに反応する。シバが軽く目で合図するとジュリウスが困った表情をした。ジュリウスはお忍びとはいえ、頭を下げる姫さまに反応してしまったのだ。
ネリネは2人の態度に少し訝しんだものの、姫さまの問いに答えた。
「お姉ちゃんが3日前から、家に帰ってこないの。」
悲痛な表情で続ける。
「見ての通り、この村は荒くれ者と警備騎士は仲良くつるんで、幅をきかせてる。村でつくった物をピンハネしたり、野菜とかを納品しに行くときに何か紛れ込ませたりしてるし、キリがないくらい悪事を働いてる」
肩を震わせるネリネに姫さま寄り添った。
「こんな村でお姉ちゃんは荒くれ者相手に商売していた。わたしの為に犠牲になって…。お金が貯まったら、あなたは町へ好きなことをしに行きなさい。あなたがこんなことをする必要はないからって…」
姫さまは徐々に目から涙があふれてきたネリネを慰めるように抱きしめた。
「話してくれてありがとうございます。微力ではありますが、お姉様を探すのを協力させていただけないでしょうか?」
微力とこの少女は言ったものの、荒くれ者を簡単に退けた腕の立つ男2人を連れた少女は何者だろうか、ネリネは疑問に思った。
「あんたたちは一体…」
「わたしは王都で商いをさせていただいてる者の娘アリシアと申します。」