第一部 6 流れ
すぐに姫さまとジュリウスを見つけることができた。村の規模が小さいのも、理由の一つだ。しかし、一番の理由は、ごろつき2人組に絡まれていたことである。過去形なのは、鼻血を出して大の字で気絶している男とちょうどジュリウスがもう一人の男に足ばらいをしている現場を目撃したからである。
「そっちもやってしまったか。ジュリウス」
この村でこういう連中とのトラブルは、ご法度だが、見事にやってしまったことに苦笑いが漏れた。
「姫さま、お怪我は?」
アリーシャは、シバの顔を見ると一瞬明るくなったものの、顔を少し硬らせた。
「大丈夫です…。えっと…その方は?」
「すみません、酒場でやらかしまして…。話は後ほど…」
姫さまに頭を下げると、ジュリウスの方に話しかける。
「ちょうど、2対2にだが、手を貸そうか?」
「1人気絶してるので、2対1になるからやめてください」
足払いで転倒した男は、自分たちが簡単にあしわられたあげく、さらに1人増えたことに血相を変えた。
慌てて、気絶した仲間を抱え、よくある捨て台詞を吐き逃げていった。
「どっかで見た光景なんだが…」
「既視感はわたしにもあります。」
シバとジュリウスは、顔をあわせる。
騒動を見ていた、村人から注目を浴び、ひそひそと話し声が聞こえる。
「ネリネ、とりあえず連れと合流できたので、頼めるかな?」
一旦、場所を変えた方がいいだろうと判断し、ネリネに話しかけた。
「もう1人いる話だったけど?」
「今、使いでね。しばらくしたら拾いに行くから、問題はないよ」
「なら、いいんだけど」
一向は、ネリネの案内の元、村の端にある家に向かった。