第一部 3 辺境の村
話を戻そう、公務があった地方都市ルコットから王都に戻る道中、正規ルートから外れた辺境の村エリエを見たいと姫さまから希望があった。
一応国管理であるものの、国の管理が辺境故に行き届きにくいことを心配してのことだ。
賊や獣対策に警備騎士隊が置かれているものの、生活に不便はないか、お忍びで見に行くことになった。
あまり利用されることがない為、あまり整備がされていない道を歩き、村の近くまで向かう。
獣除けの結界は問題なく機能しており、村の入り口には警備騎士も立っている。
「止まれ!!」
立ち寄る者などほとんどおらず、見慣れない一行に警戒した様子で呼び止める。
「すみません。こういう者です」
ジュリウスは手慣れた様子で、身分を示す書を見せる。
仮の身分が記された本物の公式偽造書である。
「王都の金持ちの令嬢御一行サマがこんな村になんのようだ」
警備騎士の男はぶっきらぼうに聞いた。
国に仕えてる者の身分としては、かけ離れた応対にジュリウスは呆れている。
姫さまが村の滞在理由を答える。
「聖教の活動です。ぜひともこの村でお祈りをさせていただけないでしょうか?」
警備騎士が返答をする前にシバが男の前に進み、コインの入った小袋をわたしながら言った。
「この村で世話になるから、これで酒でも飲んでくれ」
「わかってるな、兄ちゃん。まあ、何もないところだがゆっくりしていけ。通っていいぞ」
上機嫌で、そう答えると道を通した。
「この村に宿は?」
「村の中に酒場があるから、そこで借りな」
「わかった。ありがと」
シバは軽く手を振りながら通りすぎた。
他の3人は軽く会釈をし、歩き始めた。
「酷いとあんなもんだ。礼儀正しいのは大きい所ぐらいだね。ただ、賄賂と仕事中の飲酒」
そしてと、淡々とシバは続ける。
「クスリまでやってるのは珍しい」
「そうね。あれだけプンプンさせてたらね」
その言葉に姫さまとジュリウスは絶句する。
男から、酒の匂いと共に独特の匂いをはなっており、過去の経験からシバとリアトリスは気づいていた。
「アリーシャ様、この村からはやく離れた方がよろしいのではないかと」
姫さまの身の安全から、ジュリウスが提案する。
「私としてもどうもこの村警備騎士に何かあると思います。姫さまの護衛としては、ジュリウスに賛成ですが…。姫さまはどうされたいんですか?」
シバの問いに答える。
「すみません、もう少し村の様子を見させてください。この村がどうなっているか、何をしなければいけないか、考えたいのです。お力を貸していただけるでしょうか?」
「わかりました。では、ジュリウスの側を離れないようにしてください。危険は私がなんとかします。リアトリス、屯所に探りを入れてきてくれ」
「人使いが荒いなー」
「リアトリス、申し訳ありません。お願いします」
「姫様、行ってまいます」
まるで、消えるかのように一瞬でいなくなる。
「一応、頭なんだけどな…おれ」
シバの呟きに、ジュリウスは苦笑した。