血筋と記憶
「ええ。だっておかしいでしょ?5つの国が戦争をしないためにこの国を作ったのよ。でもね、この国に名前が無いのよ。皆して自分の国の名前を付けようと争った結果がこれよ。バカみたい。こんな国さえ出来なければお母様は食事に毒を盛られるずに済んだのよ。死ななかったの。お母様があの方々の血を持っているから。そして私もリリも他の子供たちもあの方々の血を持っているからー。」
パチン
ライアは耐えきれずロリエの頬を叩き強く抱き締めた。
「落ち着いて。」
ライアの苦しそうな声。ロリエは我に返り泣き出した。
「・・・ごめんなさい。私だめみたい。子供達の前でもこうなってしまいそうで。怖いのよ。体が痛くて辛くて。そのせいなのか精神も安定しなくって。」
大方、例の血のせいだろうとライアは考えていた。よほどの術でなければ後遺症や副作用は起きない。ロリエにかけているのは痛みを和らげ、体を軽くする、いわば麻酔のようなものだ。
例の血を調べたいが、ロリエに使う血が減ってしまう。謎に満ちた血をロリエに飲ませるのも嫌だが、余命から7年も寿命を伸ばして生きているから、効果がないどころか助かっている。
でも、これが何の血なのか。誰から貰ったのか。そもそもこれは血なのか。ロリエは一切教えてくれなかった。
「私、生きたいけど死にたいの。いい母親でありたいの。でも辛いの。私の心の奥底にある復讐の心が見え隠れしているのよ。」
ロリエは震えていた。自分がどんどん自分ではない何かに少しづつなっている気がして。
「怖い。怖いよお母様。私は天でお母様に会えるの?」
幼い子供の様に泣き叫んだ。
ライアはその気持ちに答えるように術をかけ、ロリエの良い記憶だけを見せる夢へ連れて行った。