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はじまり
右紗子は色白である。かといって、紙とか雪に匹敵するほどではなく、むしろ白さより青みが勝つのかもしれない、と最近は思っている。鏡の前だと、水色に透けた静脈が身体を走っているのがわかる。
昨今では、自分の肌の色、持って生まれた色素などに応じたアイテム選びの手法が広められ、右紗子も書籍やインターネットで熱心に調べた。"〇〇診断"なんかがあると、とりあえずやってみたくなる性質なのだ。
右紗子の化粧歴は浅い。
スキンケアは別だが、メイクアップに関しては、高校卒業までノーメイク、すっぴん、色なしリップクリーム程度で通した。この時代には珍しいほうかもしれないと思う。
大学に進む前に、量販店の化粧品コーナーで美容部員さんの手ほどきを受けた。基本の手順があるらしく、数々のアイテムが登場した。とりあえず一通り購入したが、いまいち使いこなせない予感はした。
ベーシックなメイクアップ用コスメと、一部の「なんとなく合ってない気がするアイテム」とともに右紗子の化粧歴が始まった。