めっちゃチリチリやん
恋の訪れは突然だ。
あれは3年前の冬、僕が道路に軍手を落としていくバイトをしていた時のことだ。
「ハァッー、疲れた。」
僕は今日のノルマの軍手を落とし終わり、事務所で休憩していた。
「お疲れ様ですっ」
声をかけてきたのは鈴木さん。軍手補充係の鈴木さんだ。僕と同い年くらいの女の子である。
「鈴木さんってさ、下の名前なんてゆうの?」
「私ですか、私は鈴木バーコードシショウっていいます。佐藤さんは下の名前なんて言うんですか?」
「バーコードシショウ、素敵な名前だね。僕は佐藤バリーボンズっていうんだ。」
「バリーボンズ、ジャニーズみたいな名前ですね♪」
その日僕とバーコードシショウは打ち解け、ホテルにいくことになった。
「ああ、バリーボンズ、バリーボンズ、イク、イク、らめ〜!」
「バーコードシショウ、好きだバーコードシショウ!バーコードシショウ!バババ、バーコードシショウ、オウァオオウァオオオィエエ、ウッ、イッター。」
そうして僕らは結婚して子供を産んだ。
子供の名前は「佐藤奇しくもその時」にした。
佐藤奇しくもその時は成長した。
もの凄いスピードで成長した。
3日目の火曜日には身長が大気圏を超えた。
13日目の金曜日には髪の毛が太陽についた。
髪の毛は滅茶滅茶チリチリになった。
もう一度言うが、髪の毛が滅茶滅茶チリチリになった。
それをたまたま家電量販店のテレビで見ていた客が2人いた。2人は他人である。だがしかし2人は同じタイミングで呟いた。
「めっちゃチリチリやん。」
ハッ、2人はお互いを見合わせた。
同い年くらいの男女だった。
恋の訪れは突然だ。