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どびんちゃ

なんか欝である。たぶん私は欝なんである。

とくに何もする気が起きない。

仕事も家で寝てたら解雇された……というかされた気がする。

というのもいつから私がこの部屋のやたら

無駄に高い天井を見続けているのかよく覚えていないからである。

たぶん欝のせいだろう。

皆さまはシミュラクラ現象という言葉をご存知だろうか、

実はわたしも五分前まで存じておらず、

今極度にダルい身体を動かしてググッて知ったところである。

文明の利器検索マシーン。ちなみに手元にパソコンはある。

スマホもたぶん探せばある。

しかし動画見るのも飽きた。

素人の生放送も見る気が起きない。

エロなんてもっての他である。見すぎた。

とにかく欝な私は天井のシミを見ることにした。

ああ、シミュラクラ現象のことについてだが

つまり顔でもなんでもない景色を見たときに顔に見えるというやつである。

無職で、友達も居ない、何もやる気が起きない私は、

天井のシミに様々な可能性をかけてみることにしたのである。

まずはとにかくシミとか汚れを天井のから探さねばならぬ。

うむ。よく清掃されている。

真っ白な天井だ。

シミねぇな。困った。しかし私はいつからこの部屋に居るのか謎である。

名前も忘れたな。たぶん何かそこそこいい歳であった記憶はある。

そんなことを考えながらシミを探しているとあった。

ごく僅かだがあれは間違いなくシミである。

うむ、こんにちはシミ一号。わたしの初めての友達。

まずはあの数センチのシミをどう進化させるか考えねばならぬ。

やはりお姉ちゃんだろう。それも優しくてナイスバディなお姉ちゃんに

ぜひ進化させたいものである。

うーむ。見続けていれば願いは叶うのだろうか……。

それとも、こうもっと能動的に想像し、そして進化させねばいけないものなのか。

とにかく私は三次元の女どもに失望している。

そして三次元の男どもも嫌いである。

つまり私は自分の世界を作らねばならぬのだ。

それが狂っていても、例え間違っていてもである。

アーユーアンダスターン?イエスアイキャン。である

……何がアンダースタンドだ!!

私は何一つ理解も納得もしていないぞ。

とにかく欝なのである。シミとつきあう他はない。

なんせ欝なのだから。しかたないね。

そんなこんなでシミを見つめ続けていると

何かシミが大きくなっている気がした。

いいぞ。もっとだ。もっといけ!!

大きく、そして大きく育っていけ、大きいのはいいことである。

どんどん広がっていっているシミはとうとう十センチ四方になった。

ここからどうお姉ちゃんにもっていくかが勝負である。

シミをお姉ちゃんに進化させる。多分これが人類初ではないな。

気が狂った男たちが歴史上でわりと成功させていると思う。

いいか君たち、キチガイの世界は深いのだ。

俗世の常識など通じないぞ?!分かったなら、そんなものは捨てることだ。

ううむ。シミにパクッと真っ黒な口が開いたぞ。

三日月を横にしたようなふたつの目もできた。

ちがう!!こんなものは女子ではない。

これでは妖怪である。

「こんにちは」

くそっ、恐ろしい形相そのままに話しかけてきおった。畜生っ早すぎたんだ。

「女子になれ」

「え?」

「いいからナイスバディの女子になれ」

「い、いやあの」

「貴様は俺の幻覚なのだろう。わかったら女子になれ」

「といわれても……」

「いいかシミの妖怪よ。俺はイマジナリーフレンドやら見たくもない幻覚などいらんのだ」

「へぇ……」

「おれ以外には嘘でもいい。しかし俺にとってだけはリアルな女子を創造したいのだ」

「旦那ちとムシが良すぎやしませんかね?しかもキモいすよ」

「ええいっ!!シミごときが口答えするな!!私は欝なのだ。しかたないのだ」

「じゃあこういうことでどうですかい。

 あっしはとりあえず残しておいて、二号、三号と創って増やしていくというのは。

 いっぱい創っていれば、いずれ当たりがくるかもしれやせん」

「ううむ、仕方ない。貴様はとりあえずそれ以上は大きくなってはならぬ」

「へぃ」

「そうだ。おぬしに名前をつける」

「へぃ、あっしべつに名前欲しくはないんですが……」

「どびんちゃだ。おまえはどびんちゃだ」

「クソみたいな名前をどうも」

「うむ。創造主からありがたく拝領せよ」

「へぃ」

こうしてどびんちゃが生まれた。

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