5話 金ヶ崎
不定期と言いつつ、毎日更新していたり。
なんとかかんとかやってます>_<
その夜、羽柴秀吉は夜営する為に簡易な陣を敷いていた。
「いやぁ、このまま朝倉攻めるっつうこと、浅井は見逃してくれんのやろな…。
信長様はその事には気付いてんのやろけど、なんか対策しとかんでええんやろか…」
「サル、うぬに命ずる」
「うへぁ⁉︎ の、信長様っ⁉︎」
「浅井が奇襲しようと向かって来ている。余は先に京へ抜ける。殿はうぬに任す」
(なんやて⁉︎ 薄々予想しとったが、こんな早ように攻めてきたってのか⁉︎ やけど、それなら‼︎)
「殿は任せて下さい。必ず食い止めてみせます‼︎」
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私は、夢と共に林の中を抜けていた。
「兵力で織田に劣る浅井が勝つには、奇襲しかない」
「ええ、そして他の皆が出来る限り多くの敵将をここで討ちとるか、釘付けにすることで、信長の護衛を少しでも減らして、私達が彼を討つ。それがこの作戦です。
湖西には朽木元綱殿がいらっしゃいますし、抜け道はないはずです」
篠が、この林を抜けた先に信長の馬印のある陣を見つけてるから、あとは私達で信長を討つだけ…。
暦は今、作戦通りなら金ヶ崎砦の守備隊の救援に着いた頃かな。
彼ら、ずっと織田の動きを見張りながら、織田軍を牽制してくれてたみたいだし、そろそろ身体も限界かも。早く助け出さなきゃね。
「恵様、もうすぐ林を抜けます。私達は一旦ここで待機して、隙を窺い…っ‼︎」
「ようやく来たか。やっぱり浅井は織田を見捨てたんやな…」
突然、誰かが話しかけてきた。
「貴方は?」
「ワシは信長様の家臣、羽柴秀吉。
信長様ならもう京へ向かって出立しましたぜ」
そんな⁉︎ じゃあ、あの馬印は…‼︎
「あぁ、あれならニセモンや。いや、一応本物やけど、本人おらんしなぁ。本人おらんとこに馬印あっても意味あらへんしな、ニセモンと一緒やろ?」
「貴方にまんまと騙されたのね…」
「そういうこっちゃ。でもって、もう敵になってもうたわけやし、悪いけど、ここで討たせてもらうわ‼︎」
そう秀吉が言った瞬間。
大量の矢が飛んできた…‼︎
「恵様っ‼︎ 」
突然背中から突き飛ばされた時、後ろで何かが刺さる音がした。
振り向くと夢が矢を受けていた。
「夢⁉︎ 大丈夫⁉︎」
「私は大丈夫です。次の矢が来る前に、ここから、逃げて下さい…」
「そんなこと出来ないよ、少しだけ待ってて‼︎」
夢に刺さった矢を抜き、木に凭せ掛けると、そのまま矢の飛んできた方向へ飛び込んだ。
そして潜んでいた使い手を片端から斬り捨て、秀吉のいた方を見たが、そこに彼はもう居なかった。
それにしても、湖西には朽木殿がいたはず。何故、京に抜けれたの?
でも今は、夢が先ね。
「夢、周りの敵は片付けたよ。急いで戻って手当てしなきゃ‼︎」
夢を背負い、私は浅井の陣に戻った。
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帰還後、私は先に戻っていた篠に夢を託し、長政様に報告していた。
「そうか、義兄上は逃したか…。
だがそれより、夢の傷は大丈夫そうか?」
「えぇ、幸い急所は外れていましたし、傷もそんなに深くはなさそうです。ですが…」
「あぁ、義兄上を逃したのは痛手ではあるが、まだ負けた訳ではない。気にするな、よくやってくれた」
長政様、本当にごめんなさい‼︎
そういえば…。
「長政様、羽柴秀吉に遭遇しました。夢の傷も、彼の従える弓兵によるものです」
「義兄上の信頼していた家臣、確かサルと呼ばれていた者だな。頭もキレるし、相当の策士だと聞いたが。そうか、その馬印は秀吉殿の作戦だったのか?」
「はい、見事に騙されてしまいました。
ただ彼は、信長が京へ逃げたと言っていました。確か湖西には、朽木元綱殿が居たのでは?」
「彼は、どうやら織田に懐柔されていたようでな。すでに織田の配下になっていた」
朽木殿がすでに寝返ってたのね。
「打つ手なし、ですか…」
「いや、じきに朝倉殿がこちらに来てくれる。その時に、再度兵を整えて、織田と戦おう」
朽木殿の領地を抜ければ、大津まで行ける。
だから、京への抜け道があったのか。
となると、あとは朝倉殿が来るまでは城で待機かな…。
「とりあえず、一旦小谷城に帰還しよう。
夢も療養せねばならないしな」
「はい、では皆に帰還だと伝えてきます」
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それにしても、秀吉殿の作戦は見事だったな。
馬印は、常にその持ち主の近くにあるもの。
長政様のものも供の方が持ってるし、そんな常識を逆手に取って、騙すなんてね。
「あんな戦い方もあるのね…」
「恵様にもきっと出来るはずですよ」
「暦、戻ってたのね。というか、私にはあんな機転はないよ?」
「それは、貴女様にまだそのような考え方が出来ていないだけです。
兵術書を読み、何度も戦場に立てば、やがて知識として身につきますよ」
暦は私を買い被り過ぎてる気がする。
でも。夢に怪我させてしまう原因になったのは、私が秀吉の作戦に嵌ってしまったから。
これ以上、暦達を危険な目に合わせないために、私に出来る事があるなら。
「分かったよ。貴方達のためにも、頑張らなきゃね」
さてと、一旦小谷城に戻って、立て直しかな‼︎
今度会った時は、絶対倒せてみせる。
待ってなさい、信長…‼︎
ようやく信長が登場しましたね…(^_^;)
ですが拙作では敵役なのです…>_<
信長好きな方、ごめんなさいねm(_ _)m