3話 出会い
長政様に許可を貰い、試験を行うと決まった。
城下にも張り紙が出て、応募者は500人近くになった。
いや、多すぎです…しかもその内の過半数が女性だなんて、私聞いてない。
「恵の事は、今じゃ城下でも有名になっていてな。訓練でも大人顔負けな成績を出している11歳の娘だと兵士達が城下で話したせいか、そなたが城下で時折買い物をしているのを、町の者達は皆影から見守ってくれているようだぞ?」
いつも城下町で買い物してると、確かに周りから見られている気はしてたけど、まさかそういう事情があったとは。
何はともあれ応募者が多過ぎた為、採用試験はかなり無茶な内容となった。
内容を長政様に聞いてみると教えてくれた。
えっと、身体が丈夫で、ある程度教養があり、秀でた特技を持ち、その上私と互角に戦えるくらい強く、しかも女性限定…限定⁉︎
「長政様‼︎ 他のはわかりますが、何故女性限定なのですか⁉︎」
「まぁ良いじゃないか。同じ性ならば異性同士よりは過ごしやすかろう?」
「だとしても、それでは男性の方々は…」
「あぁ、別枠で、我が軍の足軽部隊に入れるし大丈夫だろ」
うーん、でもそうなると大半の応募者が脱落するよね…。
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結局、最後まで残ったのは3人だった。
薙刀使いの神薙暦。
弓の名手、朝渚夢。
偵察に長けた夕凪篠。
彼女達は皆強くてとても賢く、私達はすぐに打ち解けた。
「暦〜、一緒に組み手しよ〜?」
「えぇやりましょうか、でも恵様?
今度は負けませんよ‼︎」
「あら、では私は審判を致しましょう」
「あ! あたしもやる! 今度は暦ちゃんにも負けないからね⁉︎」
…少し活動的過ぎるかな?
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ある日、長政様に縁談が舞い込んだ。
お相手は、最近美濃の斎藤家を倒して、尾張から岐阜城に移った織田信長の実妹、お市様。
思わぬ大国からの同盟と、結婚の話に浅井家は騒然となった。
そして、その申し出を受けることになった。
同盟内容は、浅井家の古くからの盟友、朝倉を攻める時には、事前勧告をする事。
そして、互いの領内の自由な通行。
また、互いの国が攻撃された時の相互援助。
その他にも細かい取り決めがあるけど、まだ恵には難しいよ、と言って教えてくれなかった。
ともあれ、これで織田家という後ろ盾を得て、私達は今までよりも平和に過ごせるかな、と考えていた。
でも、それは大きな間違いだった。
私達に、織田からの出撃要請が毎日のように来るようになったのだ。
信長の上洛を援護しろだとか、畿内の反勢力への鎮圧だとか、私達の領じゃないのに…。
私達紅月隊も、何度も出撃し、戦場を駆けた。
私は刀を両手に携え、暦と共に先陣を切り、夢が弓矢でそれを援護し、偵察に出た篠は、そのまま敵陣を内側から撹乱する。
いつしか、それが私達の最も得意な戦法になっていた。
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やがて、いつしか私は20歳になっていた。
暦達とも、一緒に過ごすようになってから7年が経ち、最近はもっぱらお市様の警護が多くなっていた。
「恵ちゃん、今日は私達とご飯食べませんか?
今日は長政様は忙しくて、娘達とだけでは少し寂しいのです…」
「え⁉︎ お市様の手料理⁉︎ あたし食べたいです‼︎」
「お市様、私もお手伝い致しますわ。皆で食べましょ〜」
…これ、警護なのかな。
とはいえ、お市様の手料理ってとても美味しいんです。
篠はすっかり虜にされちゃってるけど。
長政様とお市様の姫君達は、皆可愛くて、私達ともよく遊んでいた。
一緒に過ごすことが多くなった私達とお市様と姫君達。
でもそんな日々は、長くは続かなかった。
時代背景にそぐわない表現や言葉があちこち出てきてますが、あえてそこはスルーしてくれると嬉しいです。
理由、ですか?
まず一つ目は、当時の言い方のままでは、今では伝わらない言い方や、人物名なんかでも愛称が有名になり過ぎて、本名があまり知られて居ない方もいらっしゃいます。
そのような事が今後も多く出ると思うので、あえて今でも通用する言い回しを使っております。
もう一つの理由は、読みやすさや、親しみが湧きやすいように、という意味もあります。
ですので、その部分はそういうもんだと思って頂けたら嬉しいです。