2話 部下
アクションシーンって難しいですね…>_<
訓練を始めて一カ月が経った。
訓練と言っても、刀の素振りや手入れ、腹筋背筋に腕立てなどだ。
とはいえ、まだ私のことをあまり知らない兵士なんかは、どうせ長くは続かないと思っていたようだ。
ある日、訓練の後に道場を出ようとした時、突然声を掛けられた。
「なぁ、そこのあんた。女が刀なんて振り回すなよ。女の子は、家の中で家事してれば良いだろ。ましてあんたみたいな美人さんが、血生臭い戦場なんか出られる訳ないだろ」
「確かにな、そんな細い身体で戦場出ても周りが迷惑するだけだし、早い内に諦めとけ」
そう言いながら、彼ら4人は私に向かって模擬戦用に刃引きした刀や槍を構えた。
「これからもまだ続けるってのなら、俺らに勝ってみなよ?」
そう言うと、いきなり斬りかかってきた。
…でも、遅過ぎる。
苦もなく軌道を読み、少しだけ身体をずらして去なすと。
2人目が槍を突き出してきた。それも遅い。
軽く正面から左へ回り込み、最初の者の腹に一発食らわせて、身体がくの字に曲がった瞬間に脳天に峰打ちを当て気絶させる。
そして、突き出してきた槍を逆に掴んで引き寄せ、重心のズレた所で脛を蹴飛ばした。
そのまま3人目が4人目と同時に攻撃して来るのを、片方の刀を受け流して、バランスを崩した瞬間に、もう一方にぶつかるように逆に張り倒すと、2人まとめて吹き飛び、動かなくなった。
…一応、全員が息をしてるのを確認すると、そのまま放置して、道場を出た。
すると、直径さんが真っ青な顔でこっちに駆け付けて来た。
「恵殿、お怪我は⁉︎」
「…してないですよ?」
「無傷で大の大人4人を無力化したのですか⁉︎」
…何かまずかったのかなぁ…?
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その後、話を聞いた後に、彼ら4人組は全員が直径さんにこってり絞られたそうな。
そして、1人道場から戻る時、直径はふと呟いていた。
「まさか全員返り討ちにしてしまうとは。しかも全員が気絶しただけで、特に重傷でもない。
話を聞いた限り、とても11歳の娘には思えない程の動き、そしてあの聡明なところ…果たして彼女は本当に人間なのか…?」
「いや、恵は人間ではないよ」
そう言いながら現れたのは、長政だった。
「長政様、彼女が人間じゃないというのは本当ですか⁉︎」
そう驚く直径に、長政は軽く頷き、周囲に人がいないのを確認してから、彼にそっと耳打ちした。
そしてふと頬を緩ませて告げた。
「まぁ、我が浅井家は彼女のご両親には世話になった恩があるのでな。あの者をこうして迎えることが、少しでもその恩に報いることになれば嬉しい事だ」
「そうだったのですか……」
「とはいえ、おそらく本人は自分の出生は自覚してないようだ。だから、僕らが彼女を見守ろう。いつか彼女と同じ存在か、真の理解者が現れるまではね……」
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模擬戦のあった時から、少し直径さんが優しくなったような気がする。
相変わらず、訓練では鬼みたいだけど、それ以外では、よく私の部屋に来たりするようにもなった。
そんなある日の夜、直径さんが私の部屋に来た。
「明日長政様に、貴女が部下を持つ許可を貰いに行こうかと思っているのですが、恵殿は部下などは欲しいとお思いですか?」
…って急に言われても。
「確かに欲しいと思ってますが、ずいぶん急ですね?」
「いえ、すでに平の兵士が束になっても勝てない程強くなられた貴女ならば、そろそろ自分の部隊を持ってもいいかと思いまして」
それから少し話をしていたが、結局その申し出を受けることにした。
翌日、長政様にその事を相談しに行った。
「長政様、昨晩直径さんから、部下を持たないか、と言われたのですが…」「あぁ、いいぞ?」
…え、即答⁉︎
「…もう少し悩むとか無いんですか?」
「いや、ダメな理由がないだろう。
ただ、もし部下を持つなら、採用試験をした方が良い。試験自体はこちらでさせてもらいたいが良いかな?」
「え、えぇ。ではお願いします」
こうして、私は部下を持つことになる。
そして、その部下達との出会いが、私のその後を変えるきっかけとなるとは、まだこの時私は知る由もなかった…。