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Gratia-紅き月の物語-  作者: 紅月涼
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1話 暁

初投稿ですが、これからよろしくです



近江の国、小谷城下の町に1人の10歳くらいの少女がやって来ていた。

白く透き通るような肌に紅い瞳を宿して、青みがかった闇色の髪を高い位置で紐で結わえたその姿は、少し異質ではあったがそれすら彼女の将来が楽しみになる程の少女特有の美貌の前では霞んでいた。

道行く人々の大半が思わず振り向くような彼女は、ひたすら城へと歩いて行った…。


ーーーーーーーーーー


「君、こんな場所にどうしたんだい?」

「これを…。長政(ながまさ)殿に会いに参りました」

私のことを見つけた門番に父からもらった手紙を見せると、彼はその場で態度を改めた。

紅月(こうつき)(けい)様。ご無事のようでなによりです。主の元へご案内します!」

そう言うと、彼は私を山の上の城ではなく、ある屋敷へと案内した。


「あの城には向かわないの?」

「普段はあんな山の上にある城では不便ですからね。城下町にある屋敷で執務を(おこな)っているんですよ」


なるほど、確かに山の上だと色々と不便だよね。

そうして話している内に、私は屋敷の一室に通されて、しばし待つように言われた。

床には畳が敷かれ、私の前にはわずかに段があって、おそらくそこが長政殿の座る場所なのだろう。


しばらく待つと、彼はやって来た。

…何故か、供の者に、大量の書類をもたせながら。

「だから、その件は僕に持ち込まずに自分達で対処してくれと、何度も言ってるじゃないか…。とにかく、残りは後でやるから待っててくれよ…」

「そう言って、この前は結局二刻も帰ってこなかったじゃないですか⁉︎せめてあとこれとそれとあれと…」

「分かった分かった。もうやめてくれーー‼︎」


……何故そんなに溜まってるんだ。


「見苦しい所を見せてしまったな。僕が長政だ。

で、こっちのうるさい奴が……」

遠藤(えんどう)直径(なおつね)でございます。ですがうるさくはないですからね⁉︎」

「北河内の寒村より参りました。紅月恵と申します。

父からの手紙を頼り、長政様の元にやって来た所存にござい…「そんな堅苦しくせんでもいいからね?」」


そんなに堅いかな……。


「とにかく、災難だったろう。……住んでいた村が戦火を浴びるとはな。そなたの父上には、かつて様々な恩を受けた訳だし、僕に出来ることならば、そなたのやりたいようにさせようと思う」

「ありがとうございます、では1つお願いがあります」


私の村を焼き、私から父上を奪った者が許せない……‼︎

だから……「私を貴方の軍に入れて下さい‼︎」


ーーーーーーーーーー


それからは、しばらく訓練の日々が続いた。

泳ぎだけは絶対するな、と父上に言われていた為、私は主にそれ以外の訓練を、直径さんとしていた。


「貴殿は女であるのに、何故軍に入りたかったのです?」


彼が最初の訓練の時、こう聞いてきた。


「私は、母上の事は覚えていないのです。私を生んですぐに亡くなってしまいましたから。

だから、父上は1人で私を育ててくれていました。

私にとって、たった1人の肉親だったのです。

だからこそ、私から父上を奪い、生まれ育った村を地獄にした奴を許せない…!

そいつを倒す為、そして私を受け入れて下さった長政様を護る為に、軍に入りたかったのです。

長政様が、我が父上に恩義があるというならば、私も長政様に新しい居場所を頂きましたから……」


そう答えると、彼は私に言った。


「その思い、戦場でも忘れずにいて下さい。誰かを護りたいというのは、戦う勇気になりますから」


こうして、私は長政様に、お仕えすることになった。



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