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攻撃魔法の使い手  作者: 餅は餅屋
第1章 パーティー結成篇
8/18

1-8 さあ、ダンジョンへと向かおう

 先週は体調不良で寝込んでいたけれど、なんとか隔週更新ができました。一安心です。

「へえ、案外似合ってるじゃない」

 店を出てからのエレーナさんの第一声である。

 お店にサービスで貰った革製のベルトを腰に巻き、左腰に剥ぎ取り用のナイフと護身用のダガーを帯び、魔力回復ポーションを右腰に装備した。その上からローブを羽織り、片手でロッドを持っているというのが現在のぼくの出で立ちだ。

「そ、そうかな?」

 意外なことにもエレーナさんに褒められて驚きつつ、また冒険者の装いをしていることに対してぼくの胸は自然と高鳴る。

「ええ、悪くないと思うわ。……さて準備も調ととのったことだし、そろそろダンジョンに向かいましょうか」



   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆


 ぼくが転移してきた街・フィリヴァンの東門から馬車に乗って1時間ほどで、今回ぼくたちが目的地とするダンジョンへと辿り着くらしい。今は馬車で移動中というわけだ。運賃は前払いで、それぞれが自分の分を払った。

 白い帆のついた荷台にぼくらは乗っていて、道が舗装されてないからか、馬車はガタガタとよく揺れる。そのため、乗り心地は良くない。

「そういえばあんたはダンジョンに行ったこと……ないわよね? ……いいわ、ダンジョンに着くまでに注意事項を手短かに説明するから、よく聴いておいて」

 ぼくがダンジョンに関しての知識を持っていないことを今までのやり取りやぼくの仕草からエレーナさんは推測したのだろう。

「そうね、まず心に留めておいてほしいのは、絶対に死んじゃ駄目ってこと。死ぬかもしれないと思ったら逃げなさい。これは私と組んでるときだけじゃなくて、他の人と組んでるときも1人のときも同じよ。生きてさえいれば、挽回するチャンスはいくらでもあるわ。……死んでしまったら、もうどうすることもできないんだから…………」

 そう言ったエレーナさんの表情は儚く、切なげで、どこか遠くを見ているようだった。

 その寂しげな顔は、ひどくぼくの印象に残った。



「……わかったよ。他に気をつけることは?」

 エレーナさんはそこで1度深呼吸をし、ぼくの目をじっと見つめた。

「……後はそうね、さっき言ったことが一番大事で、他はないと言ってもいいくらいなんだけど、それだとあんたが困るわよね。う~んと、さっきと似てるけど、無理をしないということかしら。例えば、今回行くダンジョンは地下へと降りていくダンジョンで、下に行けば行くほど魔物が強くなるの。だから自分の実力を見極めて、分不相応なところまで行かないように注意しなさい。今向かっているのは初心者用のところじゃないから、あんまり下に行くと危険よ」

「えっ!? 初心者用のダンジョンに向かってるんじゃないの!?」

 エレーナさんの言葉に、ぼくは動揺を隠せない。

 てっきり初心者用のダンジョンに行くものとぼくは思い込んでいたのだけれど、

「ええ、違うわよ。ビギナーズダンジョンは遠いから、行って帰ってくるだけでもかなりの時間がかかるの。それだったら近場のダンジョンで経験を積んだ方が良いと思ったんだけど」

 たしかにエレーナさんの言うことは理にかなっているかもしれない。だけど初めてのダンジョンが初心者用じゃないとは、予想外のことだ。

 ぼくは、本当に魔物と戦えるのだろうか? そう考えると恐ろしくなって、ぼくの身はぶるっと震えた。



 そんなぼくを見たエレーナさんは破顔し、

「そんなに怖がらなくても大丈夫よ。こう見えても、私は頼りになるわよ?」

 そこで1度話を止め、エレーナさんは腰に佩用してある二刀を軽く叩く。

 それから再度話し始めた。

「それに、あんまり深いところまで行くつもりはないわ。探索をしにいくわけじゃなくて、あくまでもダンジョンの案内がメインなんだから。でもだからといって、油断したら駄目よ。何せ、今から私たちが行くところは最近発見されたばかりのダンジョンだからね。もしかしたら何か想定外のことが起こるかもしれないし、注意を怠るのはよくないわ」

「それって、見つかったのはいつ頃のこと?」

 なぜか妙な引っかかりを覚え、ぼくは尋ねる。

「さあ? 詳しくいつってのは知らないわ。でもダンジョンの入り口付近の探索は終わってるみたいだし、私も1度行ったことがあるから、あんたがヘマでもしない限り、大丈夫なはずよ」

 その後もエレーナさんから諸々の注意を受けていると、時間はあっという間に過ぎていき――。

「着きましたよ」

 馬車が止まり、御者の方が話しかけてきた。

 ぼくとエレーナさんはお礼を言ってから馬車を降り、目の前にある木造の建物へと足を向けた。


 建物の中には、8人ほどで利用できそうなテーブルがいくつかとそれよりは少し控えめなテーブルが4、5個あった。空いているテーブルもあるけれど、グループで話し合っているテーブルの方が多い。中には食事を摂りながら歓談している所もある。

 奥の方には受付があり、その横にはどうやらダンジョンへと続く通路があるようだ。

「それじゃあ受付を済ませて、ダンジョンに潜りましょうか」

 ぼくは首肯し、エレーナさんと共に受付へと向かう。

「ようこそお越しくださいました。ダンジョン探索でしょうか?」

 ミーシャーさんと同じ制服を着ている受付嬢が慇懃に対応してくれる。

「ええそうよ。こいつと2人で行くわ」

「かしこまりました。それでは、冒険者証の提示をお願い致します」

「これよ。……こらッ、なにボケッとしてんのよ。早く出しなさいッ!」

「おっと、ごめん、ごめん。……お願いします!」

 エレーナさんに小突かれ、ぼくは慌てて受付嬢にカードを渡す。そのやり取りを見て、受付嬢は苦笑を浮かべる。

「はい、確かに預かりました。……エレーナさんとレンさんですね。レンさんはここのダンジョンどころか冒険自体が初めてのようですね。ダンジョンについての説明を致しましょうか?」

 冒険者証からぼくのデータを読み取ったのだろう。

「いえ、大丈夫です、エレーナさんに教えてもらったので。あっ、ひとつ質問してもいいですか?」

「はい、構いませんよ」

「えっと、ここのダンジョンはいつ頃発見されたものなんですか?」

 先ほど引っかかりを覚えた疑問についてぼくは聞いた。

「4週間ほど前のことですね。ですので、まだ充分にはダンジョンが攻略されていないんです。ここの施設は仮設という扱いになっていて、道具商などは簡易的なお店しか出していません。もう少し探索が進んで、ここが有益なダンジョンであるとギルド本部が認めた場合は、もっと賑やかなところになると思います」

「そうなんですか、ありがとうございます」

 そう言ってからぼくは思索に沈む。

 4週間前に見つかったばかりで、いまだ探索の終わっていないダンジョン。先ほどエレーナさんは入り口付近の探索は終わっていると言っていたけれど、果たして本当に安全なのだろうか。いざ自分が行くとなると、どうしても気になってしまう。やはり充分に探索が済んでいる初心者用ダンジョンに行きたいと思うのが現代日本人の性であろう。

 だから、初心者用のダンジョンへ行こうとぼくは言いかけたのだけれど、

「はい、たしかにお2人分の入場料金をいただきました。気をつけて行ってきてください。ダンジョンから戻ったら、受付へ寄ってくださいね」

 ぼくが考え事をしているうちに、エレーナさんがダンジョンへ入るためのお金を払ってしまったようだ。

「? 別にこれぐらいなら気にしなくていいわよ? 探索がそんなに進んでないダンジョンだと入場料は安いの。それに後でミーシャーからたくさん報酬が貰えるはずだし……。さ、早く行きましょう」

 随分と気前がいいエレーナさんだ。

 報酬のことを考えてか、途中でについてしまっているのが残念だけれど。

「……わかった。行こうか」

 こうなっては致し方ない。

 もうどうにでもなれという心境でぼくはダンジョンに行くことを決める。

 こうしてぼくらは、受付嬢に見送られながら、ダンジョンへと向かった。


 ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

 次回更新日は未定ですが、恐らくまた隔週更新になると思います。

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