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攻撃魔法の使い手  作者: 餅は餅屋
第1章 パーティー結成篇
18/18

1-18 パーティ結成

 全話改稿しました。良かったら読んでみてください。

 木造の扉を開け、ぼくたちは冒険者ギルドへと入った。するとギルド特有のむわっとした酒の臭いが漂っていて、それを初めて嗅いだソフィーちゃんは顔を歪める。

 ギルド内にいた冒険者たちが、ぼくとソフィーちゃんに好奇の視線を向けてくる。エレーナさんが誰かといるのが珍しいからだろうか。

 数多の視線と酒の臭いは、ソフィーちゃんをうろたえさせるのには充分だった。

「た、たくさんの人に見られてます……」

「もっとしっかりしなさいよ」

 おどおどしているソフィーちゃんに対して、エレーナさんは手厳しい。

「まあまあ、まだソフィーちゃんは小さいんだし、仕方ないよ」

「あんたは黙ってなさい」

 ぼくがフォローを入れるも、エレーナさんの態度は軟化しない。

 エレーナさんがやや間を空けてから、

「……いつもよりギルド職員が忙しそうね。あんたはどう思う?」

「ギルドに来たのはこれが三度目だから、いつもがどうかってのはわからないけど、慌ただしい感じはするね」

 それからぼくは辺りを見渡して、見知った顔を発見する。

「あそこにミーシャーさんがいるから、聞いてみようよ」

「そうね。ソフィーもついてきなさい」

 ぼくたちは、ミーシャーさんの方に向かって進みはじめた。



「あら、エレーナさんにレンさんじゃないですか! もうダンジョンに行ってこられたのですか?」

 ぼくたちがミーシャーさんの方に近づくと、ミーシャーさんが気さくに話しかけてくれた。

「ええ そうよ」

 エレーナさんが答えた。

「まあ、そうだったんですね! お疲れさまです。それで、そこの可愛らしいお嬢さんはどちら様ですか?」

「さっき拾ったのよ。ほら、自己紹介しなさい」

 エレーナさんに促され、おっかなびっくりとしつつソフィーちゃんが口を開く。

「え、ええっと……わ、わたしは、そ、ソフィーと言います」

「ソフィーさんですね。私はここで受付係をしているミーシャーと申します。よろしくお願いします」

 ミーシャーさんがお辞儀をしたので、「こ、こちらこそよろしくおねがいしますっ!」と慌ててソフィーちゃんも頭を下げた。

 見ていて微笑ましい光景だ。

「ところでソフィーさんは、本日どのような御用件で冒険者ギルドにお越しなさったのですか?」

 これはぼくも気になっていたことだ。

 ソフィーちゃんに目を向けたので、恐らくエレーナさんも興味があるんだろう。

「えっと、ぼうけんしゃ、になりたくて……」

「なるほど、そういうことですか! かしこまりました。それでは私についてきてください」



 ……あっさりとしすぎじゃないだろうか。

 二人が受付の方に歩いていくのを見ながらぼくは呆然とする。

 あんなにも小さな女の子が冒険者になりたいと言ったことも驚いたけれど、あまりにも落ち着き払ったミーシャーさんの対応にぼくは呆れ果てる。

「まさかあの子が冒険者志望だったとは思わなかったわね」

 エレーナさんが呟いた。

「やっぱりエレーナさんもそう思うよね。あんなに小さな子が冒険者になるなんて、信じられないよ」

 ぼくの発言を受けて、エレーナさんが言う。

「そうかしら? 年に問題はないと思うけど……。むしろ大人しすぎるというか常に怯えてるところが心配ね。あれで冒険者としてやっていけるのかしら」

「えっ!? 年齢に問題がない!?」

「ええそうよ。何かおかしなことを言ったかしら? あれくらいの子が冒険者になるのは、別に普通のことだと思うわよ」

 年端の行かぬ女の子が冒険者になるという事実にぼくは衝撃を受けた。ソフィーちゃんが何歳なのかは聞いていないけれど、エレーナさんよりも年下なのは間違いないだろう。そのエレーナさんですら14歳で、日本だと義務教育期間であるわけで。母国がどれほど恵まれていたのか、ぼくは今更ながらに思い知る。

「そういえば、あんたはこれからどうするつもりなの?」

 沈思していたぼくにエレーナさんが問いかける。

「えーっと、そうだね……まだ何にも決めてないかな。エレーナさんは?」

「私も特には決めてないんだけど……とりあえずあそこに座ってミーシャーの手が空くまで待ちましょうか」

「そうだね」

 都合良く空いていた二人掛けの机にぼくらは腰を下ろす。


 しばらく待っていると、ミーシャーさんとソフィーちゃんがやってきた。

 どうやらソフィーちゃんの冒険者になる手続きが完了したようだ。

「お二人ともお待たせしました」

 ミーシャーさんがぼくらに開口した。

「いえ、そんなに待ってないですよ」とぼくが言う。

「そもそも待っててなんて言われてないしね」

 エレーナさんが陳述した。

 やや間が空いてからミーシャーさんが口を開く。

「あのですね、お二人に……いいえ、皆さんにひとつ提案があるのですけれど、いかがでしょうか?」

「提案……?」

 ぼくが聞いた。

「はい、そうです」

「とりあえず内容を話してくれるかしら?」

「かしこまりました。エレーナさんは今までおひとりで活動なさってこられましたよね? それが悪いわけではないのですが、やはり誰かと一緒に行動した方が良いと思うんです。エレーナさんの実力ですと、誰とも組まなくても問題ないのは存じています。けれど一度くらい固定のパーティーを組んでみるのも良い経験になるのではないかと私は考えています。現在おひとりで活動中の方々もパーティーを組んだことのある人が多いですし、一度パーティーを結成してみてはいかがでしょうか? 幸いなことに、ここにはまだパーティーに入ってないソフィーさんとレンさんがいます。一度この三人でパーティーを組んでみませんか? 一人で活動するよりもパーティーの方が何かとできることが増えると思いますよ。パーティーはいつでも簡単に解散できるので、お試しにどうでしょうか?」

「そうね……あんたはどう思う?」

 エレーナさんがぼくに聞いてくる。

 固定パーティーということは、ずっと一緒に活動するということだろう。

 ぼくとエレーナさんとソフィーちゃんとの3人でパーティーか。悪くないとぼくは思う。

「良いんじゃないかな? ぼくはまだまだ駆け出しだから実力のあるエレーナさんと一緒に行動できたら助かるよ。それにソフィーちゃんに至ってはついさっき冒険者になったばかりだから、エレーナさんと共に冒険できたら心強いんじゃないかな。もちろんエレーナさんの負担は増えるわけだから、嫌なら断ってくれても構わないよ」

「そう、あんたの意見はわかったわ。ソフィーはどう?」

 一度深呼吸をしてから、ソフィーちゃんは発言する。

「わ、わたしもレンさんと同じ考えで、3人でパーティーを組めたらうれしいです」

 エレーナさんは、暫し悩んでから、

「……いいわ、この3人でパーティーを組みましょう。ミーシャー、手続きをお願いしても良いかしら?」

「はい、もちろんです! 今後の皆さんの御活躍が今から楽しみです!」

 ミーシャーさんに連れられて、ぼくたち3人は受付へと向かう。渡された書類をそれぞれが書き終えると、ミーシャーさんがぼくたちに尋ねた。

「パーティーリーダーはどうされますか?」

「エレーナさんで良いんじゃないかな?」

「わたしもそう思います」

 ぼくの意見にソフィーちゃんも賛同してくれた。

「なら、私でいいわ」

 満更でもないという顔つきでエレーナさんが言った。

「了解しました。パーティー名はどうしましょうか?」

 パーティー名……正直そういうのを決めるのがぼくは苦手だ。ゲームなんかで名前をつけるときはいつも悩むし、苦労して考えた名前はネーミングセンスが悪いと言われることがよくある。

「そうね、あんた達は何か思いつく?」

 エレーナさんの問いにソフィーちゃんが、

「わたしはお二人におまかせします」

 とぼくらに丸投げした。

 こういうのにぼくはセンスがないし、ここはエレーナさんに決めてもらいたい。

「ぼくもこれといっては何も思い浮かばないかな。エレーナさんは?」

「そうね……。確かパーティー名は必ずしも決めないといけないわけじゃないのよね?」

「はい、その通りです。パーティー名を決めずに何年も活動しているところがいくつかありますよ。もちろん後から決めることも可能です」

「だったら今はパーティー名は決めないでおくわ。あんた達もそれで良いわよね?」

「ぼくはそれでいいけど」

「わたしもかまいません」

「では、パーティー名は保留ということで宜しいでしょうか?」

「ええ、それで良いわ」

「かしこまりました。残りの手続きをさせていただきます」

 ミーシャーさんの手早い作業のおかげでパーティー結成は滞りなく終わった。



 こうしてぼくらはパーティーを組むこととなった。

 ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

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