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攻撃魔法の使い手  作者: 餅は餅屋
第1章 パーティー結成篇
17/18

1-17 少女との邂逅

 予告通り、新ヒロインの登場です!

 行きと同じように馬車に揺られること1時間ほどで、フィリヴァンの東門へとぼくらは到着した。

 いつの間にか空は蜜柑色に染まっている。

「お腹が空いたわね。冒険者ギルドに寄る前に何か食べる?」

 エレーナさんに聞かれて、ぼくは大層驚いた。

 昨日ぼくが夕食に誘ったときは一蹴されたのに、1日経つと向こうから誘ってくるとは一体どういう心境の変化なのだろう。

 ぼくが返答に窮していると、

「別にギルドで食べても良いのよ? もちろん宿でも良いんだけど。あんたがこの街に来たばっかりだって言うから、お店の案内でもしてあげようかと思ったの」

 心なしか早口でエレーナさんがいった。

「そういうことなら、ぜひお願いするよ」

「そ、そう? じゃあ行きましょうか」

 そっぽを向きながら言ったエレーナさんは、そのまますたすたと歩き出す。

 ぼくもそれに続いた。



 エレーナさんに連れられ、ぼくらは中央市場までやってきた。道の至る所に露店があり、商魂逞しく呼び込みをしている人が多数みられる。

「さて、どうしましょうか? 何か食べたいものとかあるの?」

「う~ん、そうだな……この街だけの変わった食べ物とかが良いかな」

 旅行の際に御当地限定グルメに目がないぼくにとっては当然の選択だ。

「フィリヴァンの特産品ねえ。何が良いかしら」

 エレーナさんが考えごとをしているうちに、

「あッ!」

 とぼくは大声を出した。

「ん、何か良い店があったの?」

「いや、ほら、あそこを見てよ! ちょっとぼく行ってくる!」

「ちょっと、待ちなさいよっ!」

 ぼくが駆けだしたので、慌ててエレーナさんも追いかけてくる。



 道の真ん中できょろきょろと周囲を窺いながら、所在なさそうに立ち尽くしている少女の背後で、ぼくは立ち止まった。いきなり話しかけたらビックリするかなと思っていると、ややどもって言葉を発することになった。

「だ、大丈夫?」

「~~~~~っ!」

 ぼくの方を向いた少女は、今にもその大きな紅赤の瞳から涙がこぼれそうなほど目が潤んでいた。ストレートロングに伸びた月白の髪は、儚さと可憐さが同居している。肌は真っ白というほどではないけれど、それでも白いことに変わりはない。

 頭には黒いとんがり帽子をかぶっていて、服は真っ黒のローブを着ている。

 所持しているロッドを少女が両手でぎゅっと握りしめる。

「あ、あの、わ、わた、し……」

 少女が話し始めたときに、別の少女――エレーナさんがぼくのところにやってきた。すると少女は口を閉ざしてしまう。

「ちょっとあんた、突然走り出したと思ったら今度は女の子を泣かせてるわけ? 一体どういうことよ」

 エレーナさんがジト目でぼくを見る。

「い、いや、ぼくが泣かせたわけじゃない、……よね?」

 「ぐすん」と鼻を啜りながら、少女はこくこくと首を縦に振る。

 それを見たエレーナさんはため息を吐いた。

「はあ……それで、その子はどうしたの?」

「いや、何か困ってそうだったから、声をかけてみたんだけど……」

「ったく、あんたはお人好しね。で、あんた、名前は何て言うの?」

 もちろん前者のあんたはぼくのことで、後者のあんたは少女のことだ。

 恐るおそるといったふうに、少女が口を開く。

「そ、そふぃ、……ソフィー、です」

 たどたどしく、けれど可愛らしい声で少女もといソフィーちゃんが言った。

「へえ、ソフィーって言うのね」

 エレーナさんの発言に、ソフィーちゃんは2度も頷くことで肯定の意を示す。

 エレーナさんは、ソフィーちゃんの全身を隈無く見てから、

「で、あんた――ソフィーはここで何をしているわけ?」

 怖々としながらソフィーちゃんが口を開く。

「え、えっと……わた、わたしは、その、ぼうけんしゃぎるど、に行きたくて…………」

「冒険者ギルド? クエストの依頼かな?」

 ぼくが聞いた。

「い、いえ、えっと、その、ちがうくて……わわっ、あ、あの、ぼうけんしゃぎるどに行きたいのは、依頼をするためじゃなくて……」

「はあ、埒が明かないわね。どうしようかしら?」

 しびれを切らしたのか、エレーナさんがぼくに問うた。

「そうだね、この子を放っておくわけにもいかないし、ギルドまで連れて行ってあげようよ」

「ったく、仕方ないわね。ソフィー、ついてきなさい。私たちが冒険者ギルドまで連れて行ってあげるわ」

 すると一転して、花のような可憐な笑顔をソフィーちゃんは浮かべて、

「ほ、ほんとうですか? あ、ありがとうございますっ!」

 華奢な腰が折れてしまうのではないかと心配になるくらいソフィーちゃんは丁寧に頭を下げた。

「それじゃあ、行こうか」

 ぼくの呼びかけを受け、エレーナさんがギルドへ向かって歩き始めた。

「は、はいっ!」

 元気よく返事をしたソフィーちゃんは、ぼくと共にエレーナさんの後を追った。


 ここまで読んでくださって、ありがとうございます!


 パソコンが壊れたり、2種類の病気に罹ったり(内ひとつは現在も治療中です)と色々ありまして、更新が遅くなりました。

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