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攻撃魔法の使い手  作者: 餅は餅屋
第1章 パーティー結成篇
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1-1 異世界転移

 これからちまちま連載を始めようと思います。

 皆さんが少しでも楽しんで下さると幸いです。

 更新は遅いですが、よろしくお願いします。

 道行く人は忙しなく歩いていたり、カップルが仲睦まじく手を繋いで歩いていたりと様々だ。街は活気づいていて、売り子が客引きをする声がそこかしこから聞こえてくる。



「ま、クリスマスイブだから当然、か」

 ぼくの呟きは街の喧騒に吸い込まれていき、誰も気に留めることはなかった。




 街の木々には証明が取り付けられ、赤や青・緑と様々な色が激しく自己主張を織り成し、街を盛り上げている。

 街中を歩いていると、ケーキ屋の前で売り子が赤い服を着て、「クリスマスケーキはいかがでしょうか?」と声を張っている。

 あの赤い服はサンタクロースをイメージしているのだろうか。いかにも聖夜という雰囲気だ。

 せっかくなのでチキンでも買って帰ろうと思いもしたけれど、バイトで疲れていたから止めることにした。ぼくのバイトはこの時期になるとイベントやらなんやらで忙しくて、いつも帰るのが遅くなる。



 街を抜け、独りで暮らしているマンションへと向かう。

 不意に、マンションの近くにある公園に寄ってみようとぼくは思った。

 公園といっても、ジャングルジムとブランコと砂場とがあるだけの小さなところだ。





 クリスマス直前とはいえ、街から外れているここにはさすがに誰もいないようだ。

 公園に来てみたはいいけれど、特に何もすることがなくて、ぼくはブランコに腰掛けることにした。




 ぼんやりと空を眺めてみる。今日は雲が少ないためか、星がよく見える。辺りに灯りが少ないことも起因しているだろう。冬の大三角を見つけたり、オリオン座を観ることができた。さすがに肉眼でクリスマスツリー星団を見ることは叶わなかったけれど、充分に星空を楽しむことができた。





 星の輝きを見つめていたら、漠然としてはいるけれど、今後のことについて考えてしまう。

 ぼくはいま大学の3年生だ。身長と体重は同年代の平均くらい。周囲からはやや浮いているけれど、さほど気にしていない。

 少し変わっているのは、両親がいないことだろうか。とはいえ、両親が遺してくれた遺産のおかげで大学に通えているので、まだ恵まれている方だと思う。

 そんなぼくは、将来について不安を感じている。まだやりたい仕事が決まっておらず、自分が何をしたいのかもわかってないからだ。

 学友たちはやりたいことを見つけ、必死に取り組んでいる。そんな姿を見ていると、ただ漫然と無為な日々を過ごしている自分が情けなくなってくる。そしてそんなふうに考える時間をなるべく作らないようにとバイト三昧の日々を送ってはいるけれど、やはりふとした瞬間に将来への漠とした不安を感じることがある。それが良いことなのか、悪いことなのか、はたまた普通のことなのか、ぼくにはよく分からない。




 どのくらいの時間が経ったのだろうか。

 ぼくがそろそろ帰ろうかと思ったときに、視界の端に人影が映った。

 こんな時間にこんな所を出歩いているだなんて、一体どんな人なんだろう。

 どうやらその人物は、こっちに向かって歩いてきているようだ。

 つと、脳裏に最近流行りの通り魔事件のことが過ぎり、ぼくは少し警戒する。

 依然、その人は近づいてきている。



 いつでも遁走とんそうできるようにとぼくは足に力を込める。もしも本当に危険な人物だったらどうしよう――。

 そうして身構えていると、ぼくはようやく相手の姿を捉えた。

 異様に長い白髪。髭も髪と同じ色で、とても長い。年はかなり高齢に見える。所謂、仙人のような姿と称するのがよいだろうか。腕も細くて非力そうだ。

 だけど、気を抜いてはいけないと何故かぼくは感じている。




 ぼくの腕が届くか届かないかくらいの微妙な距離を空けて老人は立ち止まった。

「ふむ、お主は類い稀な才能を持っておるのう」

 老人が唐突に話しかけてきた。

「さ、才能?」

 突然話しかけられたことに度肝を抜かれつつ、ぼくは思わず聞き返した。

「左様じゃ。じゃがそれはこの世界の話ではない」

 この人、大丈夫かな……とぼくは内心で独りごちた。



「貴様、いま儂のことを莫迦ばかにしたじゃろ。ああ、儂は人の心を読むことができるのじゃよ。所謂、読心術ってやつじゃな。ふむ、まあ出し抜けに話しかけられたらそう思うのも道理じゃな」

 ぼくは呆然とする。

「儂はちと特殊な力を持っていてな。どうじゃ若造、異世界に興味はないか?」

「異世界……?」

「ああそうじゃ、異世界じゃ。そこではお主の才能が花開くじゃろうて」

「異世界、か」とぼくは呟いた。

 異世界――聞いたことはある。というよりも、ぼくは異世界についてよく知っている。普段からゲームやアニメ・ラノベを嗜んでいるからだ。だから当然、このような状況についてもなじみ深い。けどそれはあくまで創作物での話であって、これが現実――それも自分のこととなると話は別だ。



「まあいきなりじゃと信じられぬのも当然じゃ。ふむ、どうやら今はこの辺りに人はおらんようじゃのう。どれ若造、儂の手をよく見ておれ。ちと力を使うぞ」

 そう言うやいなや老人はてのひらをぼくによく見えるように突き出した。

 そして老人が「ハッ!」と言うと、老人の掌からガスバーナーのような火が噴出し始めた。



「熱ッ! 痛ッ! な……嘘、だろ? どんな手品なんだ?」

 ビックリしたぼくは、思わず後ろに飛び退こうとしたけれど、ブランコの椅子が邪魔でそのまま頭から地面に衝突する。落下の衝撃がぼくの頭を襲う。けれどそんな痛みよりも、ぼくの頭は現在目の前で起きていることについての処理で手一杯だ。

「これは手品ではないのじゃよ。儂は人間ではないからの。この世界でも力が使えるのじゃ」

 老人は一息ついてから、

「して若造よ。お主には秘められた大きな力がある。どれ、お主の力が発揮できる世界へと儂が飛ばしてやろうぞ?」

 その言葉を聞いてぼくは少し考える。

 この世界に未練というほどのものはないと思う。それにこの先自分がどうなるかわからないし、そもそもやりたいことだって決まっていない。このままずるずると惰性で生きていくよりかは異世界で過ごすというのも一興かもしれない。



 だったら――、

「異世界、本当にそんな所があるなら――」

 ぼくはそこで一呼吸置いた後、人生を変える言葉を紡いだ。

「――連れて行ってくれ」

 ぼくがそう言った途端、老人は怪しげな笑みを浮かべて――。



 次の瞬間――ぼくは白い光に包まれていた。



 ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆



 気が付くとぼくは真っ白な部屋にいた。いや、ここを部屋と言っていいのだろうか。ただただ白い空間が広がっている。そして目の前には先ほどの仙人のような老人がいる。

「ここは、いったい……?」

「ふむ、いきなり異世界に飛ばしても良かったんじゃが、ちょいとおまけをしてやろうと思うての」

「おまけ……?」

「うむ、おまけじゃ。ちょいとなんじゃ、ゲームでいうチュートリアルのようなことをここでしてやろうと思ってな。……では、さっそく始めるぞ」

 どうしたら良いのか分からなかったけど、ぼくはとりあえず頷いた。



 そして一通りの手ほどきを受けた後、再び白い光に包まれて、ぼくは異世界へと転移した。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

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