人工銃器戦闘兵器
よ、4000文字…
こんな長い小説書いたの初めてです^^;
時々文章がおかしいところがあるやも知れませんが、楽しく読んで頂けたら幸いです(っ´ω`c)
「…」
「…」
黙っているとなんだかお見合いみたいな空気になりはじめて、恥ずかしくなってきた。
誠は桜木 美咲の監察官として、初めての面会をした。
知らない人と話す…ましてや相手は少女といえど女性、″コミュ障″という現代に多く存在する人間的心理障害が邪魔をして、全く話せないのだ。
頭をフル回転させて、何か話題を出そうと考えていると、彼女の方から話しかけてきた。
「…あの…さ、そろそろなんか喋りなさいよ、何の面会なの?これ」
…攻撃的な口調だった。
このタイプの少女は、″コミュ障″にはかなりきつい物がある。
思い切って、なんとか話題を出そうと質問をした。
「た、誕生日とか、いつ、なん…で…?」
最後の方はか弱い小さな声になってほぼ言葉になっていない。
彼女は目を丸くしたが、唇の端がゆっくりと上がった。
あ…こいつ、ドSだ。
と誠は思った。
ニヤニヤしながら美希が答える。
「10月24日よ、他に質問は?」
「あ、え、はい、うあ、えーと…」
美希は口を両手で抑え、誠に見えるようにクスクスと笑った。
さすがに腹が立ったので、誠はタメで聞いた。
「…お前、性格悪いだろ」
「あら、そうよ♪」
ウフフと笑みをこぼしながら答える美希を見ながら、俺はまた深いため息をついた。
……………………………………………
監察官生活1日目。
誠が監察官になってしまった不幸な《兵器》達は3人いる。
桜木 美咲、木下 くるみ、相川 アキ。
それぞれ皆並の人間とかけ離れた能力を持っている。
しかしそれと同時に欠点も存在する。
彼女らの動き、クセ、思考回路、その他諸々を全て把握して記録、その後、その記録を踏まえて、さらに的確な指示を与える。
以上が監察官の仕事だと、教官に説明を受けたが、まるで自信が沸かない。
なぜ自分が選ばれたのだろうか、総務と呼ばれた人は確か親父について…。
ダァン!!
俺の思考は耳が張り裂けるほどの銃声にかき切れた。
どうやら銃声の主はアキのスナイパーライフル〔L96A1〕だったようだ。
過去に敵国のアメリカで使われていた優秀な狙撃銃の1つである。
しかし、銃のレール部分に狙撃には必要不可欠とも言われるスコープがついていない。
それでも、アキの放った銃弾は500m先の偽物《デコイ》の頭のど真ん中に命中、貫通していた。
恐ろしい狙撃センスだ。
そして、一方を見やるとそこはサブマシンガン〔P90〕を装備したくるみの姿があった。
彼女の恐ろしいところはその人間離れした運動神経にある。
銃弾をまるで弾道が見えているかのように躱し、弾切れしたところで一気に近づき敵を穴だらけにする。
最後に俺が最初に出会った被験者、美咲は、くるみには劣るものの、充分な運動神経を持ち、かなりの戦闘経験を積んでいる。
彼女の特技は、どんな武器も多様に扱うこと。
愛銃〔桑原製軽便拳銃〕という大昔に日本で使われた古い珍しい回転式拳銃である。
彼女の早撃ちは速すぎて全く動きが見えないので、〔不可視〕とも呼ばれている。
そんな才能だらけの3人の監察官を務めるのは、自分には荷が重すぎるのでは無いかと頭を抱えていた。
…………………………………………
それから、誠は研究施設に寝泊まりし、そこから電車で訓練学校に通っていた。
誠は母親を早くに亡くし、父親は仕事で年中いないので、一人暮らしだったので、寝泊まりすることには何の支障もなかった。
ただ、研究施設内の宿泊部屋は薄暗く、ジメジメしているため、かなり生活しにくい環境であった。
ある日、誠が訓練学校から帰るとすぐに教官から呼び出された。
内容は彼女達と親しくなるために、全員で面会を行えというものだった。
彼女らは全員孤児で他人に心を開かない。いきなりいい関係とはありえないので少しずつ友好度を高めていかなければならなかった。
……………………………………………
教官に連れられ、辿りついたのは第二小会議室だった。
たくさんあるうちの3つ椅子には、美咲達が座っていた。
「あっ、えっと、その、数日前から君たちの監察官を務めてます、柊 誠と言います!よ、よろしく!」
俺のカミカミの挨拶に場がシーンとなった。
その沈黙を破ったのはアキだった。
「相川アキだ」
「…桜木美咲よ」
「き、木下くるみです…」
誠はつい感動してしまった。
ちゃんと話せた…。
それだけで涙が出そうになるほど嬉しかった。
「柊 誠」
口が開いたのはアキだった。
「私達は柊 晃のことが聞きたい」
くるみが続ける。
「…私達は3ヶ月間だけですけど、柊教官に育てて貰ったんです。だから、教えて貰いたいんです…」
くるみがうつむきながら言った。
俺は静かに答えた。
「…私達、親がいませんでしたから、ずっと1人で生きてきて…」
「…柊 誠、私達は、君に会えて、嬉しい。これから、よろしく頼む」
「そうよ、監察官としてよろしくね」
「よろしくですっ」
「…あぁ、よろしく」
誠達は手を握りあった。
その手には暖かい温もりを感じた。
……………………………………………
その後、誠は父親の夢を見た。
「誠、お前は父さんみたいにならなくていい」
「俺にはわかる、誠には別の才能がある」
「俺は信頼出来る兵士だが、お前も信頼出来る何かになれ」
「わかったか?父さんとの約束だ」
………
……
…
……………………………………………
「緊急警報、緊急警報」
けたたましいアラームに目を覚ます。
「研究施設内に何者かが侵入、至急発見、捕縛もしくは射殺せよ」
廊下を防弾アーマーを来た分隊が通り抜けていく。
「なお侵入者の数は6人。中国から来たと思われる」
俺は慌ててジャージに着替え、外に出る。
周りは既に静かで誰もいなかった。
俺は真っ先にB-2研究棟に向かった。
彼らの目的はきっと〔彼女達〕だろう。
俺は緊急用の武器庫からハンドガン〔Glock17〕を持ち出し、美咲達のいる研究棟へと向かった。
……………………………………………
既に消灯しており、辺りは真っ暗である。
分隊はおらず、別の場所を捜索しているようだ。
ここで敵に遭遇したら戦うことになるだろう。
だが、誠は戦闘経験0、さらに実技試験も最低ランクだ。
だが、美咲達を守るためにいても立ってもいられなかった。
その時、事務室から紙を漁るような音がした。
俺はハンドガンを構えて、事務室のドアの前に立った。
身を隠し、覚悟を決めてドアを開けた。
デスクが並ぶ風景が目に入る。
そこに敵の姿はない。
俺は油断せずに手前のデスクに身を隠した。
まだガサガサと音がしている。
資料を探しているのだろうか。
俺はデスクの隙間から覗いた。
そこに黒いマスクをした男がしゃがみこみ、必死に引き出しを漁っていた。
俺はハンドガンを向けて叫んだ。
「手を上げろ!」
敵はハンドガンを持った俺に気付き、ゆっくりと手を上げた。
「伏せろ!」
と言った直後、背後から首を締められた。
しまった、二人いたのか!!
初歩的な判断ミスに後悔しながらもがく。
徐々に意識が遠のいていく。
もうダメだ…と思ったとその時、首を締める力が緩んだ。
「ぐぁっ!」
敵が背後から何者かにケリを入れられて、伏せた仲間に重なるように倒れた。
誠はその何者かにハンドガンを取り上げられた。
そして彼女は敵にその銃を向けたまま誠に言った
「アンタ、バカだったのね」
……………………………………………
何者かの正体は美咲だった。
「バカじゃないの?何が手を上げろ!よ!一昔前のテロリストじゃないのよ」
「…す、スマン…」
「まぁいいわ、ハンドガンを持ってきてくれたことは感謝するわ。CQCだけじゃ銃を持った相手に簡単には勝てないしね」
〔Glock17〕をくるくると回しながら笑う。
「他のみんなは大丈夫だわ。敵の殲滅は、私がやる」
「いや、君だけで行かせない。俺もいく」
「はぁ?足手まといよ」
「いくら美咲でも危険だ、監察官として一緒に行く」
「…足引っ張らないでよ」
誠と美咲は敵の殲滅に向かった。
「これで5人目ね」
「あと1人はどこだ?」
「シラミ潰しに探すしか無いみたいね」
美咲がハンドガンのリロードを終える。
「まああとは分隊がやってくれるはず、脱出しましょ」
「あぁ」
その時、誠たちの足元に銃弾が飛んできた。
「隠れて!!」
誠達は左右の壁に隠れる。
「k10ね…厄介だわ」
美咲はハンドガンのトリガーに指をかける。
その瞬間煌めく金属が誠達の間に飛んできた。
「!!フラッシュグレネードよ!」
光が漏れだした時にはもう遅く、美咲の視界が白く染まった。
美咲はバランス感覚を失い、壁の影から出てしまう。
このままでは敵の〔k10〕で撃ち殺されてしまう。
フラッシュグレネードにいち早く気付き、目を閉じて、影響を受けなかった誠は美咲の体を倒れる前にスライでインキャッチ。
反対側の物陰に飛び込んだ。
さっきまで誠がいた空間を〔k10〕の銃弾が穴だらけにした。
「うっ、ありがとう」
まだ意識が朦朧としているらしいが、やっと感覚を取り戻した美咲は再度ハンドガンのトリガーに指をかけた。
その直後、敵の短い悲鳴が聞こえ、ドタっという倒れる音がした。
「美咲ちゃん!柊さん!大丈夫ですか!?」
「…よかった」
敵を倒したのはアキとくるみの2人だった。
「あぁ、ありがとう」
「今度こそ脱出しましょう」
「おう」
……………………………………………
「誠、君は見事だった」
「いえ、総務、俺は何もしてませんよ」
俺は照れ笑いをした。
「いいや、分隊が全くいなかったにも関わらずたった4人で敵を全員捕縛するとは、全員の功績だよ」
「いえいえ…」
「そういえば気になっていることがあるのだがね」
「?」
「君は落ちこぼれだと聞いたのだが、本当に何も能力を持っていないのか」
誠は黙りこんでしまった。
誠には特技も能力も才能もない。
「ふむ、ならば」
総務はふと全身の力を抜いたかのように思えた。
その直後、誠に白く煌めくナイフが襲った。
死んだかと思った。
だが、ナイフは俺の眼前で止まっていた。
そしてナイフを持つ手首を無意識に掴んでいた。
「それが君の能力だ。ずば抜けた反射神経。急な出来事に突発的に備える能力だ」
「…!」
「そしてもう一つ、君にはものを見る目がある」
総務が誠の目を指しながら言った。
「だから彼女達の監察官を頼んだ」
誠はそっと右手を握りしめた。
「君には決して才能が無いという訳ではない。自信を持て」
総務は誠の肩をポンポンと叩くと、ドアの向こうに消えていった。
「俺の能力…」
俺は握りしめた右手を見て、少し笑った。
「誠!」
ふと後ろから誰かに呼ばれた。
「柊さん!」
「柊 誠」
彼女達がそれぞれ俺の名前を呼ぶ。
「「「今日もよろしく」」お願いします!」
誠は笑顔を見せると握りしめた右手を緩めて、彼女達の元へ向かった。
……………………………………………
「総務、うちの息子に彼女達をあずけたって本当ですか?」
「あぁ、彼は、本当にお前の息子だ」
彼は笑って言った。
「大丈夫ですか?うちの息子も俺と同じでかなり無理をしますよ」
「ハッハッハ、手を焼くだろうがな、善処するよ」
「すいません、そろそろ着くので切らせていただきますね」
「分かった、くれぐれも死ぬなよ」
「もちろんですよ」
ヘリに乗った彼は総務との連絡を切ると声を上げて笑った。
「ふふ、息子よ、がんばれよ!」
ヘリは青い海の上を悠々と飛び去った。