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無限ワールド  作者: 水原まき
第8章 スノーシェリカ城の解決
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スノーシェリカ城の解決9

スノーシェリカ城の解決9







「マズハァァ、オ前タチカラ殺シテヤル!」

 遠矢たちに目を向け、裂けた口角をさらに持ち上げ笑うゴードンは、落としていた剣を拾い上げる。

 そして、

「ウオオオオオオオオオオッ!」

 雄叫びと共に剣を振り上げると、遠矢の方へと的を定めた。

「うげ、何でこっち来んだよ!」

 真っ直ぐにこちらへと突進して来るゴードンに、遠矢はあわてて構えるが、それに対応するよるも早く、視界の中で銀色が広がった。

 イッサーだ。

 彼が、目の前に飛び込んできた。


「い、イッサー!」

 突如、間に入って来た彼に驚いて、遠矢が声を上げる。

 ガキン!

 遠矢へと振り下ろされようとしていた剣を、イッサーの青白く煌めく刃が易々と受け止めた。

「コンノオオオオオオ!」

 一撃を止められてもなお、力任せに押し潰そうとするゴードンだが、イッサーは無表情を崩さず交戦する。

 ガキンガキン、と鋭い音を響かせるたび、二人の闘志が激突する。

 遠矢は邪魔になる、とすぐさまイッサーから距離と取る。

 懐に入ろうと踏み込むイッサーに、ゴードンは、そうはさせまいと攻撃を『押し』から『突き』へと変更する。

 接近を封じ込むゴードンは二度、三度と突きを繰り返し、腹部を狙い放たれる攻撃を、イッサーは回避しながら様子を窺う。


 そして、さらなる突きが繰り出された瞬間、わずかに生まれた動きの乱れを、見逃さなかった。

 受け止めた剣を右へと流し、絡み付いているゴードンの体勢を崩す。

「グッ!」

 イッサーは、バランスを失いガラ空きとなったゴードンの左側から、自身の身体を半円を描くように素早く流れるように動かして、脇をすり抜け、背後へと回り込んだ。

 彼が動くたび、銀糸の髪が揺れ動く。

 それはまるで踊りでも舞っているかのごとく軽やかで、同性から見ても目を奪われる美しい身のこなしだった。


 青白い刃と銀髪が妖しく煌めいて、

 ザシュ!

 ゴードンが振り返るよりも早くイッサーの剣が、その右肩を切断した。

「ガアアアアアアアア!」

 血が吹き出し、ゴードンの絶叫とともに離れた片腕が、ゴトリと地面に落ちた。

 足元に転げ落ちたその腕を、イッサーは躊躇なく蹴り飛ばす。

 衝撃を受け、地面の上をバウンドしながら飛ばされた片腕は、雪乃の傍でピタリ、と止まった。


「グアアアァッ。オノレェェェェ!」

 ゴードンは襲い来る激痛に耐えるかのように唸り声を上げ、傷口を押さえる。

 遠矢は、気付かれないようにそっと詠唱をはじめる。

「ご、ゴードン。大丈夫か!」

 カイキが、戸惑いながらも窺うように名前を呼ぶ。

 思わずゴードンの元へと走り出し、守るような行動こそ起こさなかったが、この期に及んでも、彼を気遣う気持ちはあるらしい。


「アグッ。チ、チカラ、ガッ。ナ、何ダコレハッ……!」

 がくり、と膝から崩れ落ちる。

 ボタボタと流れる血は止めどく、土を赤く染める。

 へなへなと力を失い平伏すように倒れたゴードンに、遠矢が詠唱を終えた術を解き放つ!

「ファイヤーアロー!」

 遠矢の手許から無数の矢が出現し、いっせいに飛ぶ。


「グッ!」

 遠矢の宣言と炎の熱を感じ取り、ゴードンは身を起こそうとするが、走る激痛に再び地に伏す。

 そこへ。

「アアアッ」

 鋭い矢がゴードンの背中へと雨のように降り注ぎ、突き刺さる。

 矢に宿った炎が、流れるように背中へと伝わり肌を焼きはじめるが、ドス黒く変化した際、防御力をも増したのか、うずくまってはいるものの、ギラギラと冴えたる瞳で遠矢を直視して、たいしたダメージを受けているようには見えなかった。

「マジで?ほぼノーダメージ?」

 遠矢は、驚く。

 人間と違い、魔族が相手となると、多少の殺傷能力も落ちてしまう術ではあるけれど、それでも多少のダメージを与えることは出来ると思っていたのだが、どうやらゴードンのバケモノ化を甘く見ていたようだ。

「グヌヌヌッ!ゴンナコトデ、私ヲ、倒セルト思ウナ!」

 メラメラ、と背中に炎を背負った状態で、ゆるゆる、と身を起こしたゴードンは憎々しげに言い放つと、巨大な翼を広げ、一気に空へと舞上がる。


 バサァァァァ。

 

 巨大な翼が羽ばたいて、強烈な風が生まれる。

 その強風で、蠢く炎は一気に吹き飛ばされて、無骨なハリネズミのように刺さっていた矢も消え失せる。

「何か、原型とどめてなさすぎて、訳わかんねぇな……」

 日光を背に、全身を黒に染めバケモノの姿で羽を広げているゴードンは、変貌シーンを見せられているにも関わらず、もはやゴードンだということを忘れてしまいそうだった。


「やっぱり魔族だと、遺伝子の書き換えも早いわねぇ……」

 ゴードンの変貌ぶりと一連の動きを観察していた雪乃が、ぼそりとそんな感想を漏らした。

「…………?」

 耳聡く雪乃の言葉をとらえた遠矢だが、何を言っているのかわからず不思議そうに首を傾げる。


「ゴードン、ダメだ!落ち着けっ」

 たまらず叫ぶ、カイキの声が聞こえた。

 見ると、カイキが必死に話しかけていた。

「今なら、まだ間に合う!降りて来い。その姿や傷も、きっとユキならなんとかしてくれるはずだ!」

 だから、もうやめろ。

 カイキの悲鳴にも似た説得に、腕を組みそれを聞いていた雪乃が顔をしかめた。

「ちょっと。勝手に決めないでよ……」

 了承もないまま自分の名前を上げられて、雪乃はとても不満そうな意を示す。


「ソウダ……女。アノ女、アノ女ガスベテ悪イノダ!」

 羽ばたきを繰り返し上空に留まっていたゴードンが、ハッと思い出したように雪乃の存在を口にする。

 瞳孔の開いたギョロリとした眼玉を下げ、雪乃をとらえる。

 バチッと、両者の視線が交錯した瞬間に、雪乃はゆっくりと幹から背中を離し木陰から出ると、唇を持ち上げる。

「あ~あ。すっかりバケモノみたいな姿になっちゃって~。欲に溺れた心だけならず、身体までも醜いバケモノに成り下がるだなんて。これが気高き魔族の末路だと思うと、ホント惨めで目も当てられないわね~」

 嘲笑の交えた声色で、言った。

「ゆ、ユキっ。ちょっと!」

 終始、挑発しまくる雪乃に、この場を収めようとしているカイキはあわてる。

 ふんぞり返り、見下す雪乃の態度は、ただひたすらに相手の怒りに油を注ぎ、憎しみを増加させるだけだ。

「コ、殺シテヤル……。殺シテヤルゾッ、小娘エェッ!」

 案の定、雪乃の不遜な言葉にゴードンが絶叫し、乱暴に羽を揺らすと、一気に突っ込んで来る。

 左腕を振り上げ、その先にある鋭いカギ爪が、迫る。


「危ねぇっ!」

「姫!」

「ママっ」

 遠矢とカイキ、水守の声が重なった。

 けれど、イッサーは動かない。

 雪乃は素早く足元の右腕を拾い上げ、ゴードン目がけ投げ付けた。



 カッ!



 丁度、雪乃とゴードンの中間地点へと到達したところで、まばゆい赤が右腕から放出された。

 弾けるように飛び出した赤は、容赦なくゴードンの目を焼いた。


「グウアァァァ!目、目ガァァ!」

 視界を奪われたゴードンは、すぐに空中で急停止すると、左手で目元を押さえ苦悶に呻く。

 その隙を狙い、イッサーが動いた。

 助走も付けず、タンッと跳躍し、構える剣を振り払う。


 ザシュッ!


「ギヤアアアアアッ!」

 イッサーの手から放たれた一閃が、ゴードンの身体を薙いだ。

 絶叫し、上空での体勢維持を不可能にしたゴードンは、そのまま落下する。

 ズドン、と巨体が地面に激突し、空気が揺れた。

「ゴードンっ!」

 カイキの叫び声が、中庭に響いた。







ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

ゴードン、ついに完全体へ!

個人的には、嫌いではないキャラクターなんですよね、彼。

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