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無限ワールド  作者: 水原まき
第8章 スノーシェリカ城の解決
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スノーシェリカ城の解決4

スノーシェリカ城の解決4







「あのね、みもり、お城の中でず~っと魔族のおじさんたちと遊んでたの。

でもとちゅうで飽きちゃったから、ママのところに帰ろうとしたの。そーしたら、変なおじさんたちがみもりを捕まえて、ケッカイの中に閉じ込めたんだよ。だけどね、みもりは強いから、変なおじさんをひとりでやっつけて、逃げ出したのっ。

でもね、さっきべつの魔族のおじさんたちに見つかっちゃって……だからみもりね、ここまで逃げてきたんだよ」

 舌ったらずな口調で、美しいエメラルドグリーンの髪を持つ少女――――水守は言った。


 遠矢に事の経緯がちゃんと伝わるように、大きな瞳に力を込めてじっと見つめながら必死に口を動かす水守は、言葉自体はとても幼稚たっだが、信じるに値する信憑性と説得力に溢れていた。

 かなりわかりづらいところもあったが、彼女が語ったことをまとめると、つまり何者かによって結界の中に閉じ込められ、何とか結界を破り魔の手から逃げ出したはいいが、結局は他の魔族に見つかり、追われていた、ということだった。

 城内での爆発は、彼女が魔族から逃れるために放った術のようだ。


「お前、大丈夫なのか?どこも怪我してないか?」

 遠矢はしゃがみ込み、その小さな両肩を優しく包み、怪我の有無を問う。

 結界を突破し襲い来る魔族たちに追われていたとなると、どこかに怪我をしていてもおかしくない。

 現に、可愛すぎるフリフリの洋服には、残念なほど目立った汚れがいくつもある。

「あ、うん。だいじょーぶ!」

 遠矢の心配をよそに、水守は首をコクコク、と上下に振りエメラルドグリーンの髪を揺らすと、にっこり、と元気に笑顔を浮かべる。

 我慢をしている、という感じではない。

 嘘のないその反応に、遠矢はホッと安堵する。

「そっか、よかったよかった」

 遠矢は水守の頭を軽く撫でた後立ち上がり、ゆっくりと視線を魔族たちに戻す。

「あのさ、何かこいつが閉じ込められたって言ってんだけど……。それって結構、ひどくないか?」 

 遠矢は、責めるような目で魔族たちを見回す。

 いくら気に入らない相手とはいえ、幼女を捕らえ結界の中に閉じ込めるなど、あまりにも乱暴過ぎではないだろうか。

 水守が普通の人間ならば、命だって失いかけない危険な行動だ。


「はぁ?何を言ってるんだ」

「バカバカしい。そんな戯言、誰が信じるものか」

「どうせ自分の行動を正当化させるため、デタラメを言っているだけだろうっ」

 やはりと言うべきか、予想通りと言うべきか、魔族は水守の言葉などまともに取り合おうとはしない。


「む~。みもり、ウソついてないもんっ。ホントだもん!」

 『デタラメ』発言に反発し、遠矢の服をがっしりと掴んだ水守が叫び声を上げた。

「ちょっ、ここは俺がなんとかするから、頼む静かにしてくれっ」

 遠矢という味方を手に入れ、さらに気を大きく持ったのか、ムッとした表情で言い返す水守に、やめてくれ、と懇願する。

 これ以上、水守の迂闊な発言で相手を挑発させたくない。

「でもみもり、ぜんぜん悪くないもんっ」

 仲裁しようとする遠矢に不満ををぶつけ、拗ねたように、ふくぅっと頬を膨らませる。


「はいはい。話しは、後でちゃんと聞くから……」

 やや面倒くさそうに、遠矢は答える。

 沸き立つ感情の赴くままに、ただ言葉を放っている今の水守には、一刻も早く口を閉じて欲しかった。

「む~。悪いのは、ホントーにぜんぶあの人なんだからねっ」

「あ~わかったわかった、悪いのはあの人な……。つか、誰だよあの人って……」

 あの人、に引っかかり、遠矢はツッコミを入れるように、思わず聞き返した。

「うん?みもりを捕まえた人だよ。ええっと、名前はわすれちゃったけど、前にママがとど……きゃん!」

 言葉を紡いでいた水守の身体に、突如、鞭のようなヒモが巻き付いて、言い終えないままにその小さな身体は地面から離された。


「水守!」

 瞬時に反応し、手を掴もうと腕を伸ばす遠矢だが、水守の身体はボールのように空中を横切り、驚くほど簡単に攫われる。

 クマのぬいぐるみが水守の手から離れ、遠矢の足元へと転げ落ちた。

 連れ去られた先に視線を向ければ、

「これは、どーいうことだ!」

 ゴードンが、水守を小脇に抱え立っていた。

 屋根を駆け抜け撒いたゴードンは、どうやら自力で遠矢の居場所を突き止めたようだ。

 また面倒臭い奴が増えた、と遠矢は心の中で呟き嫌な感覚が胸を騒がせ、遠矢と部下たちを交互に眺め、見る見るうちに頬を高揚させていくゴードンに、嫌な予感が的中するのを自覚する。


「ゴードンさん!そのガキが、城を破壊している犯人です!」

 兵士の一人が、叫んだ。

「何だとっ!」

「う~。やだやだ~!」

 水守が、細い四肢をめいっぱいバタバタと動かして必死に逃げ出そうともがき続けるが、ゴードンの脂肪の回った丸太のような太い腕はビクともしない。

「ほほぅ……。確かこのガキは、お前たちの連れだったな?よくも関係ない、などと言いおったなっ!」

 ゴードンが、カッと目を見開き、遠矢を睨んだ。

 今、彼の怒りの矛先は、遠矢へと向けられている。


(あ。やっべ!)


 遠矢は、たらりと冷や汗を流す。

 自分は、確かに無関係だと断言した。

 だが水守が関わっているとなると、彼女と自分の繋がりを知るゴードンがこの惨状を見て、あの言葉が有効になるとは思えない。

 思えないが。

「待て待て落ち着け。パッと見、無関係には見えないかもしれないが、ホントに俺は何も知らないんだって!」

「この期に及んで、まだとぼけるか!」

「いやいや、ホントだってばっ!」

「狼藉に対する責任は、取ってもらうぞ!」

 あわてて否定する遠矢だが、聞く耳を持たないゴードンは物騒な台詞を吐きながら腰にある剣の柄に手をかける。


「わ~!マジで待て待てっ。早まるなっ~」

 遠矢は腕を振って、こちらに敵意がないことをアピールする。

 目の前には水守を人質に取る、ゴードン。

 背後には、兵士。

 勝算がないわけではないが、決して楽観できる展開ではない。

 出来るのであれば、ここは何とか話し合いで解決したい。

「水守にも、何か事情があるみてーだからさ、まずは落ち着いて話しを聞いてくれねぇか?な?」

 獰猛な獣を落ち着かせるように、遠矢は宥めに入る。

「う~~~」

 その間も、水守は小さな唸り声を発しながら、じたばたともがいている。

「黙れ!これ以上、話すことなどないわ!邪魔をするなら、ガキ諸共お前も叩き切ってやるぞ!」

 言ってゴードンは、全身から殺気を放ち魔力を高める。

 その瞬間、ぞくり、と悪寒が走った。







ここまで読んで頂き、ありがとうございます。

最初の方に、チラリ、とだけ名が出た水守ちゃんを本格的に動かす事が出来たので、満足です。

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