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無限ワールド  作者: 水原まき
第7章 崩落世界 再起動世界
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崩落世界 再起動世界9

崩落世界 再起動世界9







「雪美ちゃんの思考回路は、銀河よりも無限で複雑だからなぁ」

「そんな言葉で片付けるなよ。どれだけの命が失われたと思ってんだっ。いくらあの人でも、命を蔑ろにするなんて、そんなこと許されるはずがないだろっ」

 遠矢は、雪美を庇う立場を崩さない雪乃に対し、怒りを生みはじめた。

 女神と雪美の身勝手な考えと行動で奪われてしまった、数多くの命と、その世界。



 自分の世界が消滅したのだから、彼の憤りもわかる。

 だが雪美は『コア』を砕くという選択をしてまで、女神に触れさせたくなかったのだ。

 『コア』とは、その世界の基礎であると同時に、己へと繋がる『糸』でもある。

 


「くそっ。何でよりによって俺の世界がこんな目に合うんだよ!」

 遠矢は歯を食いしばり、バンっとテーブルを激しく叩く。

 その衝撃で、彼のカップから飛沫が宙を舞う。

「少し落ち着きなさい。みっともない」

 心を乱し感情に流されるままの遠矢をたしなめながら、雪乃はテーブルクロスにできた黒いシミを撫でる。

 すると黒いシミは跡形もなく消え、クロスは純白へと戻される。


「これが落ち着いていられるか。それに、お前にだって責任はあるんじゃないのかっ。何で消えるまで放置するんだよっ。お前なら、助けられただろうっ」

 傷付いた目が、雪乃を映す。

 罪悪感も悲しみも、そして怒りも匂わせず冷静な雪乃の態度と言動に、遠矢は影を落とす。

 何とも思っていいないのか――――?

 と。



「遠矢。雪が何もしていないと、本当に思うのか?」

 次々に感情をぶつける遠矢へ、雪乃の後ろに立ったまま成り行きを静観していたイッサーが、ゆっくりと口を挟んだ。 

「…………。どーいうことだ?」

 イッサーの言葉に、少しだけ冷静さを取り戻した遠矢が雪乃を探るように見つめる。

 にやり、と雪乃は笑った。

「ふふん。このあたしを誰だと思ってるのよ。別の世界に飛び散った『カケラ』は、ちゃんと見つけて来てあげたわよ」

 雪乃はテーブルに肘を立て、甲に顎を預けながら、得意げな口調で言った。

「え……?」

 遠矢の目が、点になる。

「も、もしかして、最近お前が頻繁に出かけてたのって」

「うん。イッちゃんと回収してたの♪」

「……………………」

 絶句する遠矢に、雪乃は驚かせることに成功し、喜ぶ子どものように、にこにこ、といい笑顔を浮かべた。




 雪乃は、世界の崩壊をだた傍観するだけにとどまるほど冷徹でもないし、無関心でもない。

 居心地のいい場所を奪われるのは不愉快だったし、女神がアーシェミリアを使い『カケラ』を集めていると知った時は、所有物を横から掠め取られていくようで、やっぱり不愉快だった。

 そのモヤっとした感情は、自らが動き出すには十分に足りるだけの力を発し、雪乃の重い腰を上げたのだ。


「よく、異世界にまで飛んだ『カケラ』を見つけられたよな……」

「気配を追って行けば問題ないわよ。それに、ある程度の場所は予測出来てたしね」

「何で?」

「いくら『コア』だとはいえ、異世界に行けばその存在は不安定となってしまうわ。そして生まれた不安定さや揺らぎを補うべく『カケラ』はあたしを探そうとするの。だから、あたしが行きつけの場所だったり、特に親しい友達のところを重点的に訪ねて行けば、高確率で『カケラ』を見つけられるってわけ」

 雪乃にとって『カケラ』を探し出すことは、とりわけ困難な作業ではない。

 少し神経を集中させ『管理者』としての力を行使すれば、『カケラ』は応えてくれる。

 何故ならば『コア』に宿る畏怖たる力――――もとを辿れば雪乃と雪美によって創造されたものであり、常に見えない糸で繋がっている。


「……なるほど。『コア』はお前の一部だもんな」

 遠矢は、背もたれに体重を預ける。

 そっと頭上へと視線を向けて真っ白な世界をその目に映し、ここではない場所へと想いを寄せる。

 ここまで雪乃の話しを聞き終えた遠矢は、突き付けられる現実に、精神の憔悴が見て取れた。


 雪乃は、ポテチに手を伸ばす。

 パリパリ、と重々しい空気が漂う静かな空間には似つかわしくない、軽い音が響く。



「……ゆきが動いてくれてたことはわかったけど……。結局、世界は消えちまったんだよな」

 ポテチを食べる音が響く中、遠矢が呟いた。

 『カケラ』収集の努力は、報われなかった。

 どんなに動いても、結果が実らなければ、意味はないのだ――――――――



 沈む遠矢に、雪乃はカップを口元へと運びカフェ・オ・レをじっくり味わいソーサーへと戻し、その流れで、トントン、とテーブルを叩いた。

 すると、空間の中から、中心に赤い色を封じた美しい宝珠――――『コア』が現れた。


「これって……」

「あんたたちが必死に探してた『コア』だよん」

 つんつん、と『コア』を突く。

 指の先で転がる球体は中心の赤を揺らめかせ、きらきらと輝いている。

 これが世界のすべてを支えるエネルギー体など、誰が思うだろうか。


「でも、何で『カケラ』だったものが球体に戻ってるんだ?しかも、完成してる?」

 雪乃の転がす『コア』を、遠矢は食い入るように目で追う。

 まるで、チラつかせた猫じゃらしを獲物として狙う猫のように、視線が動いている。

 その反応がおもしろくて、雪乃は意味なく転がし続ける。



「あんたたちが必死に集めてた『カケラ』も入ってるからね」

「……でもおれたちが集めた『カケラ』は、変な仮面男に全部奪われたんだぞ?」

 ようやく視線を『コア』から外した遠矢が、不思議そうに開く。

「ああ、それは簡単よ。仮面男はハヤテくんだったから、彼に直接会って返してもらったの」

 快活に、答える。

「は、ハヤテ……くん?」

 はじめて彼の名前を聞く遠矢が、怪訝そうに首を傾げる。

「ハヤテくんは、雪美ちゃんの手足よ」

「……………え…………?」

 つまり、あんたと同族。

 雪乃が付け加えると、遠矢はここ一番、と言っていいほど口をあんぐり、と開けマヌケな顔を作る。

 けれど、すぐに苦虫を噛み潰したような表情へと変わる。



「お前、マジで色々知ってて、黙ってたな……。何でおれに言わなかったんだ」

 ギロり、とそんな効果音が聞こえてきそうなほど鋭さを増して動いた黒曜石の双眸が、雪乃を映す。

「言えば、遠矢くんはアーシェに問い詰めるでしょ?」

「当たり前だろ」

 遠矢の即答に、

「それじゃあ、困るのよ。事実を知ったアーシェは、絶対に母親の元へと問い質しに帰るでしょ?そうすると、女神は情報の出処をきっと探るわ。探って、もしあたしの正体に気付いたら、どうするの?」

 雪乃は冷静に問い返す。

「そ、それは……」

 至極もっともな言葉を受けて、遠矢はぐっと喉を詰まらせ唇を固く結んだ。









主人公、最強設定万歳\(^^@)/

イっちゃんがようやく喋った!


誤字、脱字があったらごめんなさい。

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