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無限ワールド  作者: 水原まき
第5章 それぞれの微雨
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それぞれの微雨6

それぞれの微雨6





 タクシーが、道路から流れ込んでくる衝撃により、かすかに揺れている。

 遠矢の住むマンションを出て、10分くらいか。

 大通りを走行する車内は、沈黙に溢れていた。

「……………………」

 喋る話題もなく、喋る気もおきない遠矢は、ぼんやりと外の流れる景色を眺めていた。

 月曜日の午後とあって、歩道を歩く人も車の流れも、穏やかだ。

 颯爽と歩くマダムたちの横で、小さな子どもを連れた若い母親たちが、談笑しながらゆっくりと歩いている。

 自転車やベビーカーで歩を進める者もあり、穏やかだが人の生み出す活気が流れている。

 タクシーがどこに向かうのかは知らないが、これならば渋滞に巻き込まれ到着が大幅に遅れる、ということはないだろう。

 適当に手伝ってさっさと帰り、雪乃に気の済むまで文句をぶつける。

 それが遠矢の、今日一日のスケジュールだ。

 強引に押し付けられた『カケラ』探しなのだ。

 それくらい、許されるだろう。

「あの……カズキさん……」

 外の風景を眺めながら、そんなことを考えていると、隣に座るアーシェミリアに声をかけられた。

 声は出さず、首を動かし振り向いて応えると、やはり曖昧な笑みを浮かべるアーシェミリアと目が合った。

「今回は、わたくしの無理なお願いを聞いてくださって、ありがとうございます」

 ぺこり、と頭を下げて、言った。

 自分が無理な願いをしていることは、自覚していたようだ。

「雪乃さんもご一緒の方が、よろしかったですか?」

「はぁ?何でだよ」

 頭を上げながら続いたその言葉に、遠矢は嫌そうな顔を作る。

 それではまるで、自分は雪乃が常に一緒ではないとイヤみたいに聞こえるではないか。

 確かに雪乃が一緒ではないことにはじめは違和感を覚えたが、別にずっと一緒にいたいとは思わない。

「タクシーにお乗りになる前、そのようなことをお話しになられていたみたいでしたので……」

 オズオズ、とアーシェミリアは言う。

 遠矢と雪乃との会話を、聞いていたようである。

「あれは……アーシェミリアの手伝いをしろって、あいつがそもそも言い出したんだよ。一緒に来ると思うのは、当然だろ」

 遠矢がぶっきらぼうにそう返す。

 雪が『カケラ』の影響を受けたとする男に襲われ怪我を負い、受けるようになってしまった『カケラ』探し。

 あの一件がなかったら、今日こうやってアーシェミリアに付き合うことなどなかったのだ。

「雪乃さんに言われたから、わたくしに付き合ってくれるのですね……」

「あ、いやそれは……」

 さすがに、この言い方は悪かったか。

 遠矢は、しまった、と内心で焦る。

「……いえ。理由はどうあれ、お手伝いして頂けるだけで、嬉しいです。カズキさんのお力があれば、きっと百人力ですもの」

「……頼ってくれてる時に何だけど、俺よくわかんねぇから、あんま期待するなよ……」

 アーシェミリアとしては、今まで一人で行なってきた『カケラ』探しに新たな人手が加わり頼る気持ちが生まれるのは当然だろうが、こちらは素人だ。

 あくまでアシスタント的な位置でお願いしたい。

「これからどこに向かうんだ?」

「ここからもう少し南に向かったところにある、アパートです。あと15分ほどで到着するかと思いますわ」

 アーシェミリアは周囲の景色と時計を見て、言った。

 あと、15分。

 その長い間、この微妙な空気の流れる車内に閉じ込められていなくてはならないのか……。

 遠矢は、心の中でため息をつく。

 それは短いようで、とても長い時間だ。

 同車している相手が雪乃であれば、あっという間に到着するのだろうが、アーシェミリアとなれば、話しは別だ。

 一秒一秒が、はっきりと感じされる。

 タクシーの運転手も、遠矢とアーシェミリアの間に流れる微妙な空気を察してか、静かにハンドルを握っている。

 この、何とも言い難い空間を作ってしまっていることに対し、多少の罪悪感も生まれているのだが、仕方のないことだ、と開き直るしかない。

 

 遠矢は再び視線を外に移動させ、眺めはじめる。

 車内とは裏腹に、平和で暖かな時間が流れている。

 あと15分。

 眠るには短い時間だが、話しかけられるのも面倒なので、遠矢は腕を組みゆっくりと瞼を下ろした。





 15分後。

 スゥ、とタクシーが停車した。

 と同時に、

「カズキさん、到着しました」

 アーシェミリアの声が、鼓膜を叩く。

 うっすらと目を開けた遠矢は、着いたのか、と思いながら、外を見る。

 アーシェミリアの言うとおり、タクシーはアパートの入口に横付けされていた。 

 寝ないだろう、と思っていたのだが、どうやらまどろみの中にいたようだ。

 少しだけ残るぼんやり感を振り払うため目にぐっと力を込めて、遠矢はタクシーから降りる。

 一拍遅れ、アーシェミリアが続く。

 タクシーが、走り去る。

「普通の、アパートだな…………」

 伸びをしながら、遠矢は言った。

 薄ピンク色した三階建てのアパート。

 通りから1本入った場所にある長方形のアパートは、それぞれの階ごとに6室設けられている。

 どこのベランダにも洗濯物が干され、植物なども飾られている。

 遠矢が零したように、普通のアパートだ。

「行きましょう、カズキさん」

 いつの間にか、アパートの階段付近まで進んでいたアーシェミリアが、アパートを見上げ佇んでいた遠矢を、促す。

 仕方なく、歩き出す。

「どこにあるのか、わかっているのか?」

「はい。305号室。このお部屋から、異様な『カケラ』の気配が生まれていますわ」

 階段をのぼりながら、神妙な表情で答えた。

 そう言えば『カケラ』に宿る邪悪な気配を察知できる、と言っていたことを、思い出す。

 だが、そうすると、祭の時『カケラ』の気配を探知出来なかったのは、何故なのだろうか…………?

 あの時彼女は、雪乃が持っていた『カケラ』に、心底驚いていた。

 間違いなく、祭会場にある『カケラ』の存在を、感じ取れていなかったのだ。

 けれど今は、探知している。

 これは、一体どういうことなのだろうか………………。

 あの時と今とでは違う『何か』があるのだろうか………………。

 エントランスを横切りながら、遠矢は首を傾げる。

 どちらにしても『カケラ』については謎が多すぎて、遠矢にはわからない。


 エントランスの脇にある階段を、登っていく。

 目的地は、3階。

 エレベーターなどないアパートでは、階段を使うしかない。

 住人とすれ違い、怪しまれると面倒だ。

 どうか、誰とも会いませんように、と祈りながら、アーシェミリアの後を付いて行く。

 ほどなくあがると、3階へ到着した。

 遠矢が危惧していた住人との鉢合わせもなく、これならば静かに事を進めそうだ。

 そう、ホッとした瞬間だった。


 ぞわり、と身体の何かが走り抜けた。

 それはまるで生き物のように、遠矢の内部からも蠢き、全身を這い回る。


(何だ!)

 ごくり、と唾を飲み込む。

 ざわざわ、と心がざわめき、空気の中に重苦しさを感じた。

 ヤバイ。

 そう、直感が警告する。

 この先には、とんでもない物がある。

 3階に続く階段を上っていた時には何も感じなかっというのに、3階に足を踏み入れた途端、異様な空気が遠矢を襲う。

 まさか、これが『カケラ』の気配とでもいうのだろうか。

 だとしたら、305号室にある『カケラ』は、とんでもないシロモノだ。

 人が住まう場所に、存在してはいけない。

「カズキさん?どうかなさいました?」

 アーシェミリアが、立ち止まってしまった遠矢を不思議そうに見つめる。

「な、何って……めちゃくちゃ嫌な感じがするだけど……」

 口元を覆い、顔をしかめる。

 こんなに気持ちの悪い状況で、平然としているアーシェミリアが、不思議でたまらない。

「まぁ!カズキさんも、『カケラ』の気配を感じているのですか」

 ぽん、と手を叩き、嬉しそうに言った。

(何だ?)

 その反応に、遠矢は違和感を覚えた。

 自分は、Uターンして帰りたいほど気持ち悪いというのに。

 アーシェミリアは、ニコニコと笑っている。

 まるで、遠矢の感じている嫌悪感など感じていないような……。


「『カケラ』の気配なのかは知らねぇけど、ちょっとヤな感じはする。早く行くぞ」

 遠矢は首を振り、先を進める。

 『カケラ』の気配について聞いてみるのもいいのだが、305号室へ行くのが先だ。

 301から2、3、4と続き、305の前で立ち止まる。

 表札を見れば、手書きで『櫻井 洋二』と書かれている。

 名前がひとつしかないことから、一人暮らしだということが知れる。

 近づいていくにともない、異様な空気はその濃度を増し、今や遠矢の全身をねっとりと包み込んでいる。

 長居は、するべきではない。

 早く『カケラ』を聖水のビンに入れ回収し、この場を離れた方がいい。

 遠矢は、チャイムを押す。



 ピンポーン、と部屋の中から音が鳴った。

 だが、応答はない。

 もう一度、鳴らしてみるがやはり同じ。



(面倒くせぇなぁ……居留守か?)

 居留守を日常的に使用している遠矢は、瞬時に居留守を疑う。

 だとすると、このドアは簡単には開かないだろう。

 宅配便です、とでも言えば、開けてくれるのだろうか……。

 遠矢がそんなことを考えていると、横から、アーシェミリアの腕が伸び、ドアノブを回した。


 ガチャ。


 難なく開く、ドア。


「開きましたわ!」

「開いたな」

「入ってみましょう!」

 言うが早い。

 アーシェミリアは大胆にも、部屋の中に滑り込む。

「おい、危ないだろ。一人で勝手に行くなっ」

 中に、何が待っているのか、わからない。

 遠矢も、急いでドアをくぐる。

「お邪魔しま~す」

 玄関は、靴で溢れていた。

 泥だらけのスニーカーやサンダルが、無造作に転がっている。

 下駄箱の上には読まれていない新聞が高く積み上げられ、お菓子の空袋が捨ててある。

 廊下には空の缶やビール瓶が転がり、たっぷりとゴミの入った袋がふたつも放置されている。

「きったねぇなぁ……」

 靴を脱ぐのをためらわれるほどの汚さだが、土足で上がるわけにもいかない。

 遠矢はしぶしぶ、と靴を脱ぐ。

「カズキさん、早くこちらに来て下さい!」

 一足先に部屋へ入っていたアーシェミリアが、廊下の奥から切羽詰った声で読んできた。

 その焦り具合に、遠矢は靴を脱ぎ捨てアーシェミリアのもとへ向かう。

 短い廊下の先にある部屋へと、遠矢は入る。

「どうした!……って、うわ、汚ねっ。そして気持ち悪!」

 リビングの入口で立ち尽くしているアーシェミリアに駆け寄った遠矢は、部屋の惨状と澱んだ空気の流れを受けて、声を荒げた。

 まず、目に入ったのは、薄暗い部屋の汚さだった。

 テーブルの上には食べ残しのある弁当やビニール袋、ペットボトルが散乱し、あちこちに食べ零しが見られる。

 床の上には雑誌や本、脱がれた衣服が足の踏み場もないほどばらまかれ、外の光を遮断している薄いカーテンには、刃物で切り裂いたようなあとがあり、のれんのようになっていた。

 そして、漂う重い空気。

 玄関で感じたよりも、濃厚で息苦しい。


 胸が、ドキドキする。

 

 相変わらず気持ち悪さは拭えないが、先程とはまた違う何かを、遠矢は感じ取った。

 近寄りたくない、と思う反面で、もっと近くで見てみたい。

 触れてみたい。

 そんな衝動が、遠矢の頭に生まれていた。

 ザワザワと、ドキドキ。

 ふたつの感情が、入り混じっている。

「カズキさん、あそこに人が……」

 アーシェミリアはそう言って、ソファを指差した。

 視線をそちらに向けると、服で埋め尽くされたソファに、人間らしき影が横たわっていた。

 30代くらいの、男性だった。

 衣類の一部と化している男は、死んでいるのでは、と思ってしまうほどぴくりとも動かないが、じっくり観察すると、微かに胸の動きがあり、生命を確認できた。

 よく、こんなところで眠っていられるものだ。

 遠矢は忍び足でソファへと近寄り、男を観察する。

 ずっと自堕落な生活をおくっているのだろう。

 髪はボサボサで、髭はボウボウ。

 着ているTシャツはヨレヨレで、顔色も悪い。

 まるで病人か廃人のようだ。 

 チャイムを鳴らし、不法侵入までしているというのに、男はまったく気付くことなく深く眠っている。

 こちらとしてはありがたい状況だが、これも『カケラ』の影響なのだろうか。

「アーシェミリア、早く『カケラ』を回収するぞ」

「はい。わかりました」

 大きく頷くと、アーシェミリアは男の傍らに膝を落とした。

 その様子を、遠矢は一歩、引いた場所から眺める。

「ちょっと、すみません」 

 アーシェミリアは小さく謝ると、男の身体を調べはじめた。

 ボサボサの髪を触り、顔をつつく。

 ペタペタと身体検査を受けているというのに、男が意識を取り戻す気配はない。

「おかしいですわ……。だいたい、身体の表面かお洋服に付いていることが多いのですが……?」

 『カケラ』が見つからないのか、アーシェミリアは困ったように瞳を曇らせ、ペタペタと探し続ける。

 どうやら意外にも、『カケラ』はすぐ見つかる場所にあるらしい。

 そういえば、雪乃も同じようなことをしていたような気もする。

 遠矢は、悪戦苦闘しているアーシェミリアから目を離し、男を見つめる。

 不快感の原因である男からは、目に見えないけれど異質な気配が流れ出している。

 このままでは、いずれアパート全体を呑み込んでしまうだろう。

 『カケラ』を持たない他の住民も、この男のようになってしまうかもしれない。

 遠矢は、神経を集中させる。

 目に力を込め睨みつけると、さらに嫌悪感が増す。

 そして。

 一際、存在感を主張する場所があった。 

「アーシェミリア、左手だ」

「え?」

「左手に、たぶんある」

 そこから、ピリピリとした振動が伝わってくる。

 アーシェミリアは言われた通り、左腕を持ち上げる。

 左手は、拳が作られていた。

 遠矢は素早く拳に触れ、指を解く。

 ほどよく力のはいる指を1本1本外し、掌をあらわにすると一円玉ほどの『カケラ』がひとつ。


「ありましたわ!」

 よかった、とアーシェミリアは安堵の声を上げる。

「早く聖水に……」

「はい。今すぐに」

 そう言って遠矢は男から手を離し、アーシェミリアがバッグから小瓶を取り出そうと身を引いた、まさにその時。

 バンッ!

 勢いよくベランダに続く窓が開き、強風が部屋中を襲った。

「きゃあ!」

「伏せろ!」

 遠矢は咄嗟に叫び、床に伏す。

 カーテンがバサバサと音をたて、散らばっていたゴミと紙が宙に舞い上がる。

 ゴミの中には、ぶつかれば怪我を負うような物がかなり含まれている。

 腕で顔を庇い伏せるふたりの耳元に、風とゴミのぶつかる音が響く。

 その様は、竜巻の直撃を受けているようだった。


(くそっ!いきなり何だっ!)

 ぎゅっと目をつぶり、耐える遠矢は奥歯を噛み締める。

 室内で竜巻のような風に襲われるなど、普通ではない。

 どうすればいい!

 いや、まずは落ち着け。

 遠矢は混乱する頭を動かそうと、己に冷静さを呼び戻す。



 ふいに風が止む。



 宙を飛んでいたゴミが、支えを失い、バサバサと床に戻っていう。

 伏せていた遠矢たちの上にも、ポカポカとゴミが当たる。

「おい、大丈……」

「どなたです?」

 大丈夫か? そう問いかけようとした遠矢は、アーシェミリアの固い声に遮られた。

 意味がわからず彼女を見ると、彼女の目はベランダの方へと注がれていた。

 ハッとしてベランダへ首を回す。

 そこには、全身を白のコートで隠し、深々とフードを被った奇妙な仮面男が立っていた。

 部屋に入ることはせずベランダに仁王立つ仮面男からは敵意や殺意など一切、感じられなしないものの、こちらの動きを封じるスゴみがあった。

 ふと、遠矢の視線が仮面男の右手に注がれる。

 禍々しい気配が、拳から流れ出している。


「まさか、狙いは『カケラ』か!」

 目を見開き遠矢がそう叫ぶと、仮面男が、小さく笑った……ような気がした。

「いけませんわ!それは、貴方がお持ちになるような物ではありませんっ」

 『カケラ』を奪われたと知り、アーシェミリアが立ち上がる。

『貴様らが所有するべきものでもはない』

 仮面男が、言った。

「ちゃんとした持ち主が、他にいるっていうのか?」

 遠矢は、ゆっくりと起き上がる。

 悠然と構える仮面男は、一目でヤバイ相手であると知れる。

 アーシェミリアを守りながら『カケラ』を奪還することは、かなり難しいだろう。

『ひとつ聞く。お前はコレを見て、どう思う?』

 遠矢の問には答えず、仮面男が右手を上げ『カケラ』を示しながら、別の言葉を発した。

『魅入ったのではないか?』

「!」

「えっ!」

 遠矢は息をのみ、アーシェミリアが驚きの声を上げた。


 何故それを。


 遠矢の中に、著しい焦りと戸惑いが生まれる。

 魅入られた。

 その言葉が、すとん、と遠矢の中に入っていく。

 そうだ。

 面倒くささと嫌悪感しか抱けなかった『カケラ』が、興味の対象へと変わりつつあったのだ。

「カズキさんも、『カケラ』の影響を……?」

 声を震わせ動揺するアーシェミリアの気配が、イヤでも伝わってくる。

「うるせーなっ。おれが『カケラ』のことをどう思おうが、お前には関係ないだろっ。早くそれを返しやがれ、仮面野郎!」

 図星を付かれ、遠矢は八つ当たりのように叫んだ。

『『お前には関係ない』か。その言葉、そっくりお前に返そう。もう、コレには関わるな』

 言うや否や、仮面男は背を向け、ベランダからひらり、と身を外へと投げた。

 捕らえる、暇もなかった。

「おい、待て!逃げるなっ!」

 あわてて、遠矢は後を追う。

 だが。

 ベランダから下を覗くと、そこに仮面男の姿はなく、平和な日常だけが流れていた。

「……………………」

 『カケラ』の気配を探ってみるが、どういう理由かまったく何も感じない。

 仮面男を追うのは、無理だろう。

「あの方は、一体どなただったのでしょう?」

「こっちが聞きてぇよ……。ひとつわかったことは、お前以外に『カケラ』を探している奴がいるってことだ」

 遠矢は、苛立ちながら吐き捨てた。

 あの仮面男。

 無性に、腹が立つ。

 『カケラ』に対しての思いを指摘されたからではない。

 生理的に、腹が立った。







遠矢視点は、これにて終了です。読んで下さってありがとうございました。

さて次回は!

ユウキ視点です。

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