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無限ワールド  作者: 水原まき
第2章 くすぶる陰謀
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くすぶる陰謀8

くすぶる陰謀8





「ふふ。新しい秩序……」

闘志を漲らせ語るツバキの熱が伝染したのか、サクラも頬を緩ませて、小さく呟く。

「…………………………」

一人同調出来ないユウキは静かに眉を潜めた。

彼は、この国と王を毛嫌いしている。

己に課せられた酷なる宿命。

残酷なまでに突き付けられる現実が、ツバキの心に怒りと憎しみを宿らせた。

それでも、爆発してしまいそうな憤りを繋ぎ止めているのは、『理想』を抱いているからだ。

新しい秩序を作る、という……。


たとえ類稀な戦闘力に恵まれていても、彼らは人と魔族の子。

魔族の膨大な力と、人間の弱さ、ふたつを持ち合わせている、とても不安定なDNA。

人でも魔族でもない心と身体が、彼らを一番苦しめている。

「でも。今の王様は人との共存を望んでいるって聞いたよ?一部の人からも支持されてるって噂もあるし……」

奮い立つ二人に対し、水を指すようなユウキの台詞にツバキは冷めた眼差しを送る。

「ふっ。共存、か。お前だって知っているだろう。歴代の王たちが下した命令で、迫害され殺されていった数多くの人間たちを。どうせ今の王も同じだ」

「わたしの家族も、彼らに殺されたのよ」

嘲笑い吐き捨てるツバキに、サクラの瞳が哀しみに揺れる。

ツバキから放出される黒い感情は、感染病のような広がりを見せサクラの暗い記憶を呼び起こし、哀しみを蘇らせる。

確かに、歴代の魔王たちが行なってきたことを、ユウキは知っている。

彼らに対する虐殺まがいな行動の数々や、偏見のこもった侮蔑の眼を幾度となく目にしてきた。

けれど、種族の間にある隔たりを鎮静化させ、混迷する地をひとつに纏めようとしているのも、その王なのだ。


「俺は王に絆された一部の人間とは違う。お前もそうだろう?」

ツバキが、同意を求める。

魔族からの謂れのない誹謗中傷の標的となるのは、人であるという理由だけで十分なのだ。

「ヤなことはいっぱいあるけど……」

街を歩いているだけで注がれる白い視線は、今も昔も変わらない。

謂れのない因縁を付け、憂さ晴らしの対象とされ、数人に絡まれることもしょっちゅうだ。

「お前は、この世界が異常だとは思わないのか?」

「そ、そんなの、よく分からないよ……」

ユウキは力なく言った。

世界がどうのこうのという話しなど、難しすぎて分からない。

どれだけ偏見の目で見られ罵られようと、ユウキに憎しみは生まれない。

怪我をすれば当然痛いし頭にもくる。

が、魔族たちの行為が『善』なのか『悪』なのか、ユウキにとってどちらでもよかったし、これがこの世界の今の形だと理解している。


「腑抜けだな」

冷たい双眸がユウキを突き刺す。完全に、軽蔑しきった目だった。

「あっ」

ユウキは己の発言の失態にようやく気が付いて、唇に手を当てた。

分からない、と言うことは自分の頭では処理出来ないと同じである。

意思をはっきりさせず逃げてしまったユウキに、ツバキは失望したのだ。

(どうしよう)

ユウキの中で焦りが生まれるが、一度口にしてしまったことは今更取り消せない。

「どうやら、お前に頼んだ俺がバカだった。もう用はない。さっさと消えろ」

席を立ち、浴びせられた言葉にユウキの呼吸が停止する。

『帰れ』ではなく『消えろ』。

つまり二度と姿を見せるな、という意味だ。

「ま、待って!」

言いたいことだけを言い、椅子から立ち上がったツバキを、ユウキは悲鳴に近い声で袖を掴んで引き止めた。

「あ、あたしやるっ。ツバキくんの役に立つなら、囮役でも何でもやるっ!」

だから捨てないで。

ツバキに、失望されたくない。

そのためになら、自分を危険に晒すことなど厭わない。

懇願にも似たユウキの叫び声は、しかしツバキの乾いた感情を潤す雫にはなりはしない。

「…………」

ツバキは無言でユウキを見た後で、袖にかかる指を振り払い、椅子に座り直した。












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