干支達の夢 その四a 【街のうさぎ】母親編
干支に関するショートショートです。今回はうさぎ編 その1 母親モードです。長さはほぼ葉書一枚分。一分間だけ時間を下さいませ。
いらっしゃ~い! 兄さん達初めて見る顔だな? ほらほら、突っ
立ってないで座んなよ。で、最初はビール? ちょっとケンちゃん、
ここビール2本な? え~っと、あたいもおつまみ頼んでいいかな
ぁ? 何だよ、そんなんじゃモテないからな。
ちぇっ、シケてんなー。おっ、悪かったな、確かにあたいはピチピ
チって訳じゃないさぁ。でもそれなりの良さはあんだから。ほらほ
ら、二人で顔を見合わせてたって仕方が無いよ!
ほれ! コップコップ! え?違うバニーちゃんを呼べ? 何よ、
いきなりチェンジの要求かよ! ちょっとアンタら、ナメんじゃない
よ! そりゃ、あたいはバツいちの子持ちさ。年だって大台に乗っ
たさ! え? バカヤロ! 五十じゃねーよ、三十だよ! え、ウソ
ウソ、本当は四十! ハハ、三十も四十も大差ねーって!
ほら、お客さん、もう覚悟決めてさ、グーッと行こうよ! そうそ
う、やりゃ出来るじゃん!
やんだ、じゃんだって。何かコギャルみてえだな。ハハ、笑っち
まうな。なんだ、兄ちゃん達、その顔見合わせてつまんなそうにす
んのやめろ!
そうだよ、それでいいんだ。ところで兄ちゃん達、何屋さんだ?
ふ~ん、学生っぽか。何? 二十歳か!
田舎の甥っ子と同じだ。違う違う、家のはそんな上等なもんじゃ
ねえって。ただな、真面目に働いてんだ。え? あたい?
アンタ、よくあるつまんない話さ、馬鹿な男に騙されてさ、流
れ流れて今じゃ場末のバニーちゃん。子供は深夜保育でカカアの
帰りを待ってるってとこだ。
ハハ、やめよう、もうこんな話はさ。違うよ、泣き上戸じゃねえ
よ。
違うって! 目が赤いのはあたいがバニーちゃんだからさ。
今年も来年もあたいはバニーちゃん。場末の天使バニーちゃん。
次の大台に乗っても子供が高校出るまではバニーちゃんやんだ!
負けるもんか! マネージャーや店長がクビつったってあたいは
続ける!
次のうさぎ年迄はいるからさ、今度は指名してね♪
その2は 12年後の 娘編に続くのだ!