~第四話~
幼い頃から、ずっとシェルタイト様を見ていた。
だからこそ知っていた! 分かっていた!
セレスタイト様、貴方がシェルタイト様にとってどれだけ大切な存在なのかを!!
貴方は血の繋がった双子の兄であり、シェルタイト様の“希望”そのもの。
過酷な運命を背負ったシェルタイト様の御心を癒す事が出来るであろう唯一の存在。
私は貴方には絶対に勝てない!
そんな事は充分すぎるほど知っている!
けれど唯一つ……。
貴方を遠くから見守り続けるシェルタイト様の、一番近くに居られるのは私。
シェルタイト様をお護りする為に命を懸ける事が出来るのは、貴方ではなくこの私なのだと、そう自負していた。
それが私の誇りだった。
しかし貴方は、それすらも許しては下さらなかった。
ご自分の身を挺してシェルタイト様を救われ……
そして尚、貴方は……私から永遠にシェルタイト様を奪い去ろうとしている!
ムーカイトを沈めるか否か?
それを見極め、決断する為に、生涯名乗り出るつもりのなかった貴方に会われてからこの数ヶ月。
貴方の好意を悉く撥ね付けながら……
“自分は恨まれる為に此処に居るんだ!”と口ではそう仰りながら……
“愛している! 誰よりもお前の幸せを願っている!”と心の中で叫び続けたシェルタイト様の、痛々しいまでのお姿を見ているのが辛かった。
多分、シェルタイト様は貴方の為にクンツァイトとアンバーを手にかけようとした時から。
王自ら掟を破るんだ! と決意された瞬間から、死を覚悟されていた。
譬え、貴方を失わなくても……
世界を救う為にムーカイトを沈める……
その為に犠牲になるのがクンツァイトだけだったとしても、シェルタイト様は生きてはいられない。
この方はそういう方なのだ。
だからこそ愛した!!
けれど……
泣いて縋って引き止められるものならば、そうしている。
此処に居る者を皆殺しにして、力ずくで傷の手当をしたとしても、シェルタイト様をお救いする事は出来ない。
「御……意……」
セラフィナイトは絞り出すような声でそう答えた。
それが精一杯だった。
ムーカイトの碧い髪の持つ儚さは知っていた。
喪失の痛みを味わう覚悟も出来ている筈だった。
しかし、こんなに突然……
即位され、王となられたお姿を見る事もなく、こんな形で失う事になろうとは……!
誰よりも、己が命よりも大切な存在。
貴方をお救い出来るなら世界を引き換えにしたって構わない!
なのに……
彼らは遠ざかる最愛の王の後姿を、ただ見送るしかなかった――




