~第五話~
御前試合の決勝――ジェムシリカVSクリソコラ戦――
クリソコラはセラフィナイトとの勝負の時とは別人のように、積極的に剣を繰り出していた。
激しい剣の応酬。
一見、試合は決勝に相応しい白熱した勝負のように見えた。
だが……
(この中で一体何人の方が、その事に気づいているのだろう?)
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
(そろそろ潮時ですね。やはり貴方が一族最強の剣士、それに間違いないようです。残念ながら、私の剣では貴方を本気にさせる事は出来ない!)
クリソコラは剣の腕も一級だったが、彼は元々剣士ではない。
誰よりも優れた体術を持つ彼は、長剣よりもむしろ小型の武器を得意としていた。
(私は飽くまで陰の存在。決勝まで残ること自体、不本意だったのですが……こういう機会でもなければ、貴方と闘う事などあり得なかったでしょうから。それが女王陛下の思惑に乗せられている――という事は分かっていたのですが)
(クリソコラ・シエク殿。一体何を考えておられる? これが貴方の実力の全て……ではないのでしょう?)
他の追随を許さない、隔絶した剣技を誇るジェムシリカは、それ故に最初から全力で闘うという事は一度もなかった。
相手の実力を見極め、それに合わせた闘い方をする。
そうしなければ、彼の“神速の剣圧”は対戦相手を傷つける。
しかし、クリソコラと相対した瞬間、ジェムシリカは(彼となら本気で闘えるかもしれない)――そう思った。
セラフィナイトを手玉にとった、あの準決勝戦も見ていた。
だが……
(これ以上、貴方と闘えば……私の素性が露見する可能性がありますのでね。これだけ派手に打ち合えば決勝戦としての面目は立つでしょうし。もっとも、我々が本気ではないという事に気づかれている方々には、納得の行かぬ勝負かもしれませんが……)
その直後、ジェムシリカの剣に弾かれたようにクリソコラは剣を落とした。
「そこまで! 勝者、ジェムシリカ・ソグ・ド・シュミッテライト殿!!」
場内から大歓声が巻き起こった。
「……何故だ? 何故、こんな試合をっ!?」
『次に私と対峙した時は、私を殺すお積もりで』
これが、そう自分に忠告したクリソコラの試合だとは到底思えない。
しかし、その勝負に誰より納得がいかなかったのはセラフィナイトではなかった。
このエピソードは一応クリソコラがメインなので、クリソコラ戦以外は割愛してます。
実はこの決勝戦の前に三位決定戦もありました。
クロサイトVSセラフィナイト戦です。(勝者はセラフィナイト)
……なので、この御前試合は優勝ジェムシリカ、準優勝クリソコラ。
三位セラフィナイト、四位クロサイトという事になります。
でも、この順位がそのまま四天王の強さとイコールという事ではありません。
クリソコラとクロサイトは元々、剣士ではありませんので。




